第八十五話:稲妻の右手
今回の話、もしかしたら規制かかるもしれません。しかし、後悔はしない。
「すごい! すごいよ二人とも!」
「きゃぁ!」
「エ、エルジュちゃ、くるしい」
ステージから帰ってきた二人に抱き付くエルジュ。気持ちはわかるのでそのままにしておこう。
さて、これで残るは白・ピンク・赤・黄色、そしてダメージを与えた紫の計五体。遠距離攻撃可能な緑と黒を倒したのが大きいな。これなら俺が〔ハウル〕と〔シェル〕を活用すれば後衛の集中砲火が可能だ。
まあ、その前に俺がお陀仏だろうが。
次の花札を選択すると現れたのはなんと紫。もう一回かと思ったら花札はまだ存在している。どうやら次の戦いはお互い複数での戦いのようだ。
もしかして倒したからかな?
そして引いた二枚目の花札に描かれていたのは赤。……組み合わせから見ればこれって明らかに仕組まれていたよな。
気を取り直して次は二対二であることを告げる。戦ったばかりの後輩二人は休んでもらうとして、誰を出撃させようかな。
「赤は私が戦ってみたいかな」
迷っているとアリサさんが立候補した。この中では唯一戦っていないとはいえ、自分から立候補するなんて珍しいな。
するとアリサさんがほほ笑みながら「新しい魔法を試すいい機会ですから」と言ってボクシングのストレートを出すように腕を振る。
「新しい魔法?」
「自分で言っておいてなんだけど、どちらかというと新しい技かな? 客人の方から教わったの」
「へぇ~。なら、私がサポートします!」
ノリでエルジュが参加表明を示したことでアリサさんとエルジュがステージに転移される。
「新しい技、しかも客人伝授ですか。ちょっと楽しみですね」
楽しそうに見つめるティニアさんとは別で俺は少し心配していた。一体何を教わったのやら。
*アリサ視点*
「さてと、とりあえず私は紫を相手にしていればいいのかな?」
「はい、よろしくお願いします……と言いたいところなのですが、いいの?」
「なにが?」
急に転移されたおかげで始まるまで少し時間があるみたい。そういえば先ほどの二人もこんな感じだったな。
「いえ。エルジュちゃんは弓使いだよね? 相性が悪いんじゃないの?」
空が飛べても相手の武器は刃物を取り付けた槍のようなもの。中距離武器は接近専門の敵よりも遠距離にとっては厳しい相手ってティニアから聞いたことあるから少し心配だな。
「ああ、ご心配なく。この弓特注品なので」
するとエルジュちゃんは弓を一回強く振り下ろす。地面にこそ当たっていないけど結構な勢いで降ろされた弓を戻すと、なんと弓の上下から刃が突き出てきた。なにそれいいな!
「アリアさんが作った〝鋭羽弓″ほどではないですが、近接戦闘もできるんですよこの弓」
アリア姉さんが作った〝鋭羽弓″は上部の羽で攻撃を受け止め中央の突起で攻撃することができるようになってる。それに比べれば仕込み刃は劣るけど、確かにこれなら心配することはないみたい。
「では、そろそろ時間です」
「はい。すてきなショーの開幕です!」
ショーか。悪くない響きだね。
そして戦いを告げる鐘が鳴り響いた。
どういう攻撃なのかわからないから最初は様子を見ようと思ってたけど、いきなり急展開を迎えた。
「邪魔はさせないよ!」
エルジュちゃんは一気に跳躍し、さらに翼の力も借りて紫武者に突撃。そのままステージの端まで飛んでいきました。
これで状況は一対一だけど、ちょっとはりきりすぎじゃない?
「―!」
「!?」
そんなことを考えていたらいつの間にか近づいてきた赤武者が鉤爪を突き出しながら迫ってきた。慌てて左に避けるんだけど追撃がしつこいからとっさに〔ライトニングスピア〕を放って距離をとる。
運よく直撃しましたけど体力を表すゲージはほとんど減ってない。たぶん魔法、いや全体的に固いみたい。見た感じ近接攻撃力と防御力、そして多少動きを重視している反面、攻撃の種類は鉤爪だけかな。
となれば普通は遠距離から魔法を放ってじわじわ攻撃するのが一番有効だと思う。普段の自分ならそうすると思う。
チラッとエルジュちゃんのほうを伺う。エルジュさんも本来の強さである弓での攻撃ではなく仕込み刃での戦闘をしてる。お互い武器のリーチは同じくらいなので互角の勝負となってるみたい。最も敵のほうが長い刃物を使っているのでそれで対等に戦えているということは、実力としてはエルジュさんのほうが上になるのかな。
少し見ただけでも心が熱くなるような戦い。なら、私もそれにふさわしい戦い方をするべきだよね!
もう一度〔ライトニングスピア〕を放つ。でもこれは攻撃ではなく時間稼ぎで当たった時に発生した稲妻に別の魔法を当てる。
その魔法とは〔パズルレクショ〕。これは乱反射させる鏡のようなものを複数設置してそこに魔法を当てることで複数の敵に攻撃を当てる補助魔法なんだけど、今回は放つことで赤武者の周りの稲妻を利用して少しの間時間を稼ぐ。
その間に準備を済ませる。自らの魔力を高め、集中させる。
今から放つこの魔法はさっき言った通り客人の方から教わったけど、実は前から憧れていた魔法だった。
その魔法とはティニアが得意とする〔ボルカニックフィスト〕。私が使う魔法は広範囲が多いから、ああいう一点集中型はかなり憧れていた。だからこそ、客人が話していたその技を耳に入れたとき、とっさに聞き入ってしまった。
回想から戻り、さらに魔法を集中させる。この魔法、失敗すると私へのダメージが半端ないから扱いが非常に難しい。
もうすこしで準備が終わるという時に〔パズルレクショ〕の効果時間が終わり、赤武者が突進してくる。しかもただ拘束されていたわけでもないようで、両手の鉤爪は炎に包まれている。これまでの戦闘から考えるにあれが赤武者の必殺技だろう。
(しかし、この展開は好都合!)
迫りくる赤武者に意識を持ちつつも自らの魔力に集中する。
だんだん感じる熱量に若干おびえながらも集中力を維持させる。
そして、とうとう臨んだ瞬間が訪れる!
「『私のこの手が金色に輝く』」
一応魔法なので必要ないけど考えた詠唱を発し、利き手である右手に集めた魔力を集中させる。それにより、私の右手が稲妻化したように金色に輝き、スパークをまき散らす。
このスパークが自分にダメージを与えないように一緒に体全体に魔力で覆われたバリアを展開されるのも、本当に苦労した。
「『目の前の敵を殲滅せよと狂い轟く』」
溢れ出るスパークすらもまとめ、一つの力と化していく。赤武者はあと数歩まで迫り、すでに右腕を引いている。この後、勢いそのままに右腕を出してきて鉤爪をくいこませ、さらに左手の鉤爪で決めるつもりだろう。
なら、あえてそれを受け、そして超えてみせましょう!
「『滅殺!』」
私も右手を引き、腰を落とす。足に力を入れ、腰を回して遠心力を加える。
「―!」
赤武者がその腕を突き出す。強靭かつ鋭利な鉤爪が炎に覆われながら私を貫こうと迫る。それにカウンターではなく打ち合う、いや打ち砕く気持ちで私も右手を突き出す!
「『プラズマティック・フィンガー!』」
開かれた私の右手と赤武者の鉤爪がぶつかり、炎と稲妻が辺りを照らす。
しかしそれは一瞬。全魔力ではないといえかなりの魔力をつぎ込んだ私の右手が鉤爪を、さらに赤武者の右腕そのものを喰い尽くす。
さらに右手から放たれた膨大な魔力によって辺り一面でプラズマが発生し、赤武者だけでなくステージそのものを壊す勢いで暴れまわる。
それによって四肢だけでなく、体全てがバラバラに分解された赤武者はポリゴン片になるよりも先に粉々になる。
「上手くいった」
私はその様子を見つめながら新しい技の成功に酔いしれた。
「一度は使ってみたいネタ」でおそらくだれもが上位に置くと思われるこの技。実際は神のほうでしょうけど、やっぱり気持ちいいですね。
次回はエルジュの戦闘です。ではまた水曜日に。




