特別話:別の世界の錬金術
祝! 連載一周年!
どういう話にしようか迷いましたが、私が錬金術に興味を持った原点をモデルにしました。
本当は投稿開始した5:40にしたかったのですが、予約投稿が1時間ごとなので6時に投稿しました。
何はともあれ、今までのご愛読、本当にありがとうございます!
「また失敗か」
失敗した調合物を手に取り溜息をつく。ここ最近【錬金術】が全く成功しない。新しい物に挑戦してるから必ず成功するわけではないが、連続で三十回も失敗すればさすがにへこむ。
普段なら失敗したレシピをノートに記して改善策を考えるのだが、今失敗続きのノートを見るのは辛い。
「少し、休むか」
錬金窯の火を止めダイブアウトせずに備え付けのソファで横になる。
思ったより疲れていたのか、すぐ眠気に襲われた俺は夢の世界へと旅立った。
「……ぶ? だい……ですか?」
「……ん?」
聞こえてきた声に意識を取り戻す。セリムさんが帰ってきたので起こしてくれたのだろう。
「ごめんね、セリムさん」
「えっと? 誰ですかそれ人は?」
あれ? セリムさんの声じゃない?
驚いて上半身を勢いよく起こす。しかし目を開けていなかったのでお約束のひとつであるおでこガツンを味わった。
「~~ッ!?」
「いった~い!」
お互い出した悲鳴が響いたようで、隣の部屋からそのまま壊すような勢いでだれかが扉を開けた。
「どうしたの!? 爆発!? 火事!? それとも倒壊の危機!?」
いやちょっと待て。なぜ倒壊にまで発展する?
「だ、大丈夫です先生。さっき助けた人が急に起き上がってきたのでびっくりしただけですから」
「そう? ケガしてない?」
自分のことを忘れて二人で話し合う。何とかおでこの痛みも消えてきたので話している二人を見てみる。
声から想像していたがやはり女性だ。いや、片方は少女のようだ。
俺から見て背中側しか見えないが、女性は肩むき出しの服を着ている。青色の袖に上半身薄いピンクとミニスカート……あれ透けてないか? 気のせいだよな?
そんな女性を気遣っている少女は羽根つきのピンクの帽子をかぶり、帽子と同じ色の服とその下に茶色の服を着ているように見える。たぶん一体になってる構造でマントのようなものだろう。実際その下にさらに服を着ているみたいだし。
観察していると自分の考えに違和感を覚える。今俺は「女性を気遣っている少女」と考えた。そして先ほどどちらかの口から「先生」と聞こえた気がする。
つまり、ここから導き出される結論は……
「ちっこいほうが年上!?」
「ちょっと、そこの君!? それはひどいよ!?」
いきなり修羅場になりそうだったが女性のほうがなんとかなだめてくれたので一命をとりとめた。いや、実際少女の手には爆弾みたいなものが握られていたのだ。「どこから出した?」と尋ねたいが今は答えてくれるかどうかわからないので後で訊けたら訊くことにしよう。
「えっと、改めて。体大丈夫ですか?」
「ああ。それと、すいませんでした」
「いえいえ。こっちこそ、急にごめんね~」
ちょうど昼食時間だったらしく、温かいスープを頂きながら今がどういう状況なのか教えてもらった情報から整理する。
まず、ここはCWOではなくアーランド共和国と呼ばれている場所らしい。
一瞬CWOに追加されたエリアかと思ったが、アップデート告知はなかったし、そもそもここに来る前はアトリエの中で寝たのだから別の場所に行くはずがないのだが。一体どうなっているのか?
「……それで、どうしますか?」
「あ、ごめん。聞いてなかった」
「もう、だめだよ~。人の話はちゃんと聞かないと~」
少女にまで怒られる。いや、見た目幼いだけで先生、つまり年上なんだよな。
「えっとね、君がここに来たのはある実験のせいだと思うんだよ」
「ある実験とは?」
「旅先ですぐにここに戻ってこられるアイテムがあるの。それを応用して遠くの距離でも使えるようにしようと思ったんだけど、失敗しちゃったの。それで煙が晴れたところに君が倒れていたんだ」
俺が倒れていたのも気になるが、それ以上になんとも便利なアイテムだ。
そんな風に考えているとなんとそのアイテムを見せてくれることになった。
「これが?」
「そうですよ」
見た目は大きな光る輪だ。どこでも自由に行き来できるのは昔流行った青いロボットの道具ぐらいだと思っていたが、こんなものが存在するのかこの世界は。
「これどうやって手に入れたのですか?」
「私が作りましたけど?」
「え!? これ自作なのか!?」
信じられない。俺よりも少し年上の女性なのにとんでもない技能の持ち主なのか?
「もしかして、この道具を作るのは簡単なのか?」
「さすがに簡単ではないですね。素材集めるもの一苦労ですし」
まあ、そうだよな。あと、またしても気になる単語が聞こえたので訊いてみることにする。
「参考までに素材はどういうものを使ってるんですか?」
「これを作るのには宝石と木材、そして特殊な羽が必要なんです」
宝石は何となくわかるが特殊な羽か。その特殊な羽が自由に行き来できるのを可能にしているのか?
「むう~。なんかいつの間にか仲良くなってる~」
「先生……」
なあ、本当にこの子、年上なのか?
その後、先生と呼ばれた人は約束があるらしくどこかへ行ってしまった。
「先生はこの後馬車使って遠くのほうに素材を採りに行くんですよ」
「わざわざ遠くまで行くのですか?」
「そこでしか生えてないので」
一方女性のほうは棚から何かを取り出している。茶色の瓶にあれはミルク? それと手のひらサイズの大きさで今も動いている何か。気持ち悪くないのだろうか。
「何を作ろうとしているのですか?」
「これは蘇生効果がある飲み物です」
……とりあえず、ここにいる間俺は常識を捨てよう。でないともう付いていけない。
「それも、作るのは難しいのですか?」
「昔はそうでしたけど、今となっては簡単ですね」
OK。常識だけではだめだ。もはやこの世界では俺が今まで知ってきたこと、培ってきたことは何一つ意味をなさない可能性もあるらしい。
苦悩する俺をよそに次々と素材を選別していく女性。どうやらすべての素材がそろったようで、奥の部屋へと移動していく。
このままここにいても暇なだけなので後を付いていいか尋ね、了承を得たので奥の部屋に入ると、そこには俺が常に見ているものが置いてあった。
「これ……まさか…………錬金窯?」
「あ、そういえば言ってませんでしたね」
持ってきた素材を机に置いた女性は俺と視線を合わせた。
「私、錬金術師なんです」
自らを錬金術師と名乗った女性は先ほど持ち込んだ素材を次々と錬金窯に入れていく。当然あの動く変な物体も入れたのだが、尋ねたところあれはよく使われる素材で元はモンスターの核だということが判明した。
女性は手帳を開きながら手順を確認している。いくら簡単とはいってもきちんとした手順を守らないと失敗するからな。
そして俺はその様子を近くで見ながらその光景を頭に焼き付ける。女性には俺も錬金術師であることを話し、特別に調合するところを見せてもらうことにしたのだ。
俺はようやく卵から孵ったばかりの雛に対し、女性は間違いなく一流、いやあの自由に行き来道具を作れることから超一流と推定される。それは錬金窯を混ぜる仕草や素材を入れるタイミングだけですぐに分かった。
(行動に一切の無駄がなく、かつ不安や緊張もない。つまりこれはこの女性にとっていつも行っている当たり前の作業ということだ)
女性は杖を使って錬金窯の中身を混ぜていく。やがて錬金窯が反応し、女性は中に溜まった液体を掬い上げると別の容器に入れる。すると緑色だった液体は鮮やかなピンクへと変わる。
「よし。後は特性だけ」
女性は完成した調合品を紙に垂らし、何かをしている。特性と聞こえたから、おそらくどういう効果あるのか確認しているということだろう。
さらに窓から差し込んでくる太陽の光に当て、品質を確認しているようだ。
「よし。これなら依頼の基準を満たしているから問題ない」
完成した蘇生効果のある調合品は紅茶に使うようなガラスのカップに入れられている。カップ自体に特殊な加工がされており、中身がこぼれず、品質も保てるらしい。
「こんな感じだけど、どうかな?」
「すごく、勉強になりました」
俺が再現するのは難しいが、貴重なレシピを見させてもらった。後はこれを【錬金術】に応用できるように試行錯誤して……
「!?」
「あ! 体が!?」
足元から徐々に光が俺を包んでいく。どうやらこの世界にいられる限界が来たようだ。しかし、なぜか不安や恐怖を感じない。むしろ、光自体に温かみを感じる。
「どうやら、大丈夫みたいだね」
「はい。お世話になりました」
「ううん。こちらこそ、楽しかったよ。ここ最近上手くいかないことが多かったからいい気分転換になったよ」
そうか。もしかしたら同じ悩みを持つ錬金術師同士だからこんな奇跡が起きたのかもしれないな。
「でも、もう大丈夫ですよね?」
俺の一言に女性は一瞬驚いたが、すぐに笑顔になった。
「うん。あなたも、がんばってね。そうだ、これお守り」
すると女性は髪に付けていた二匹の魚の髪飾りを外して分解し、その一匹を俺に差し出してきた。
それを受け取ると同時に腕も光に包まれ身動きが完全に封じられた。
お守りまでもらってこの世界に思い残すことは……
「そういえば、忘れてました」
「何を」
「アルケです」
最後の瞬間に自己紹介もおかしいし、もう会えないと思うが名乗る。
女性も名乗ろうと口を動かした。
「私はトト……」
それが、俺が最後に聞き取れた言葉だった。
「……さん。アル……ん」
「ん?」
揺らされている感覚に気づき目を開ける。そこには俺の顔を覗き込むアリアさんがいた。
「あれ? どうしたんですか?」
「ちょっと用事があったので来てみればうなされているので。起きる前になったら治まったのですが、お体大丈夫ですか?」
「ええ。ちょっと不思議な夢を見てました」
「夢?」と首をかしげるアリアさんに笑顔を見せる。ソファから起き上がり、錬金窯に向かう。
(きっと成功する)
そんな予感を信じて調合を始める。
いつの日か、また出会ったときに自信を持って俺の調合品を見てもらえるような錬金術師になるために。
そんな俺をアリアさん、そしてアリアさんに俺の疲れを取り除いてほしいと頼み陰から俺たちを見守っていたセリムさんが優しそうな瞳で見つめていたことを知るのはずいぶん先のことだった。
~おまけ~
「ただいま~」
「あ、先生。お帰りなさい。どうでしたか?」
「バッチリ! これで依頼分は問題ないよ!」
「依頼分? どうせならもっとたくさん採ってきたほうが追加報酬もらえたのに」
「そうだ! そうだった!!」
「まあ、今回は依頼分だけで我慢しましょう。もう時間無いですし」
「そうだね~。あれ、彼はどうしたの~?」
「目が覚めた日にご自宅に帰りましたよ」
「そうなの!? お話ししたかったのに。また会えるかな?」
「たぶん、いえきっと」
そう言って髪を撫でる。その指先には一匹の魚の髪飾りがあった。
いかかでしたでしょうか。
すでに理解している方もいると思いますが、私が錬金術に興味を持ったのは今回用いた人気シリーズの第二弾です。初めは単純に「今までと違うジャンルのゲームをプレイしてみよう」という軽い気持ちで買ったのですが、いつの間にかはまり込んでいました。この作品を生んでくれた某有名ファミレス店と同じ名前の会社さん、本当にありがとうございます!
次回はいつも通り水曜日になります。それと少しストックが溜まってきたのでもうしばらくしたらそれを解放して第二章を終わらせてたいと思っています。
理由としては【錬金術】を書きたいからです。”戦闘“が第二章の主なテーマなのですが、そろそろこの作品の原点に戻りたいのでがんばります。
アルケ「例の感想のせいじゃないのか?」
作者「それがきっかけの一つであることは間違いない」
アルケ「まあ、俺も早くやりたいからがんばってくれ」
作者「おう! お前もこの先の戦闘がんばってくれ」
それでは、今後も「CWOの錬金術師」をよろしくお願いします!
???「モウスグデバン?」
???「ですね。準備運でもしておきますか」




