第五十二話:集落
22時には間に合いませんでした。本当に申し訳ございません。
(ガチで時間的にギリギリとなってしまい、重ね重ね申し訳ありません)
どこかにある別の遺跡から剣・盾・槍が必要だとわかった後これからどの方角に進むか話し合うことにした。
その結果、取りあえず場所が判明している最初の遺跡に一旦戻ろうとティニアさんが提案し、今現在向かっている最中だ。
「それで? 最初の遺跡に戻ってどうするの?」
「一度拠点を築こうと考えています」
「拠点? 今更じゃない?」
「確かに今更と思いますが、ここで長期活動するにあたってやはり拠点は必要だと思うのです」
確かに安心できる場所があったほうが心境的にも楽になる。それにCWOのコンセプトは『もう一つの現実』だ。イベント期間が長いことを考えると後半は自由にダイブアウトできなくなる可能性がある。
あくまで可能性の話だが。
「ならさっきの場所でもよかったんじゃない?」
「あんな毒物の楽園がある場所で安心できますか?」
「……それもそうですね」
俺個人としての意見を言わせてもらえば素材が豊富な向こうのほうがありがたいのだがこればかりはしょうがないか。
その後何回か戦闘を行い、ようやく最初の遺跡が見えるところまで戻ったところで夜時間を迎えたので今日はここまでにすることに。
「それじゃ、おやすみなさい」
「「「おやすみ(~)(なさい)」」」
さて、ダイブアウトしたら試験範囲の復習でもしますかね。
試験二日目。今日も昨日と変わりなく(当然努は休み)、家に帰ってCWOへ。試験期間中に勉強以外のことをするなんて俺もずいぶんと堕ちてしまったものだ。
「「こんにちは!」」
「こんにちは。今日は大丈夫なの?」
「はい。明日の科目は得意なので」
「私は少し不安ですけど、なんとか」
取りあえず大丈夫そうなので良しとする。すぐ後に三人も到着したのでさっそくクエストフィールドに転移。三人が到着する前に昨日起こったことは伝えておいたので最初の遺跡を見ても二人が驚くことはない。
「それで、どうしますか? 一応攻略掲示板見てきましたけど遺跡については外見くらいしかわかりませんでしたよ?」
リボン同様俺も見てきたが、遺跡の場所を詳しく明記するのはやはり無理らしい。
「まあそれはなんとかなるだろう。それよりも先に拠点を確保しないと」
と言っても【木工】やその上位である【建築】といったスキルは誰も習得してない。となると単純に木と葉で出来た原始的な家みたいなものを作るしかないか。当然俺用にもう一つ。
「それなんですけど、どうやらプレイヤーが作った集落みたいなものがあるみたいですよ」
「「集落?」」
スワンによると長時間滞在しているプレイヤーたちがこのイベントエリアで生活できるようにと力を合わせて作った集落がいくつか存在するらしい。
いつも思うがゲーマー、いや廃人の方々のリアルは大丈夫なのだろうか?
その内の一つがどうやらこの遺跡の近くにあるらしいのでならばと捜索してみることにする。
「情報だとこの遺跡の近くの集落は遺跡の頭がぎりぎり見える位置らしいです」
「となると私たちが転移された場所くらいの位置関係ということでしょうか?」
アリサさんの言葉に「なるほど」と納得する。確かにあの場所からだと第二、いや最終遺跡の頂上がぎりぎり見えた。
しかしそれだけだとどこにあるかまではわからないな。まあ、歩いていればそのうち見つかるだろう。
「つまりここから移動してまずはあの遺跡の頭がぎりぎり見える距離を見つける。そしてその距離を保ったまま円を描くように移動すればいいというわけね」
「「「「「……」」」」」」
「……あれ? 私何か変なこと言った?」
思わぬ発言が飛び出たティニアさんをティニアさん以外の全員が見つめる。
「その手があった!」
「うわ、天才!?」
「すばらしいです、ティニア!」
「ティニア、GJ!」
またしてもアリアさんから“そのネタどこから持ってきた?”的な発言があったが今はそんな些細なことどうでもよかった。
「助かりましたティニアさん」
俺の本音の意見にしばし固まった後急に180°体を回転させるティニアさん。どうしんたんだろうか?
「えっと、ティニアさん?」
ティニアさんの突然の行動に戸惑い、彼女の肩に手を置こうとしたところをなぜかアリアさんに止められた。
「大丈夫アルケさん。ティニアちょっとどこかに飛んでるだけだから」
「どういうことですか?」
「詳しくは説明できないけど、女の子にはいろいろあるのよ」
そう言われてはどうしようもないのでとりあえず集落についてもう少しスワンから聞くことにした。
(アルケさんに褒められた! 私、アルケさんに褒められた!!)
ティニアさんが心の中でこんなことを考え恥ずかしくも満面の笑みを浮かべていたことなど全く想像せずに。
スワンから追加の説明が終わったところでティニアさんが復帰したみたいなのでティニアさんの提案通り一旦遺跡の頂上が見える位置まで移動し、そこから右方向に円移動していく。右にしたのは単に俺が右利きだったからだ。
幸運にもそれが功を奏し、歩いてほんのわずかで森の中に切り開かれた場所が出現した。そこには目算でも30人以上のプレイヤーがおり、雑談している者や鍛冶をしている者、あちこちに建てられているログハウスを新たに建造している者と多種多様な人々でにぎわっていた。
「おや? 君も休憩かい?」
偶然近くで切り株に座って何かを飲んでいた男性二人組が俺に声をかけてきた。“君”と言う言葉は他のメンバーがまだ森の中にいて俺一人しかいないと思ったからだろう。
「いや、そろそろ拠点を築こうかと考えていたら集落のことを知ってここに来たんだ」
「なんだ俺達と同じか。俺達も同じこと考えて、今俺たち用のログハウスを建ててもらっているところさ」
男性が指した先には約8割がた完成したログハウスがある。あの大きさだと六人では大きすぎるから最低でも十人以上はいっしょに行動しているプレイヤーがいるということか?
「少し質問いいですか? ログハウスはいくらかかるか教えてもらえませんか?」
俺自身そこそこのセルは持っているが特殊フィールドに建ててもらえるくらいだ。おそらく普通に買うよりも高くなるだろう。
「ああ、セルはいらないぞ」
「へ?」
「だからセルはいらないんだよ。あのログハウス建ててるプレイヤーはリアル元大工で年齢を理由に引退したみたいなんだ。それがここでならまだ大工ができるって始めたみたいでさ。“趣味みたいなものだから金なんて必要ない”って言ってタダで造ってくれるんだ」
なんと親切な。でも俺も似たような理由でCWO始めたからその心境はなんとなくわかる。
「ついでにある程度デザインのイメージを伝えると結構喜ばれる。“自分には無かった発想を得られるのはうれしいことだ”って言ってたな」
ヤバい。マジで素晴らしいプレイヤーだ。ぜひフレンドになって欲しいな。
「情報ありがとうございました」
「いいってことよ。俺達も同じように教えてもらったからな」
「礼ならここに迷い込んだ新人に同じようなことしてもらえばそれでいいさ」
この人たちもいい人たちだな。
俺は後ろを振り向くとどうやら話し声が聞こえていたみたいで「こういうのは?」とか「私屋根裏部屋とか憧れていたんです」とか聞こえてくる。デザインに関してはみんなに任せることにするか。
とりあえずそのプレイヤーに話をするために近づく。すると当然みんなついてくることになる。
男性二人組は俺が一人じゃなかったことに若干驚き、スワンとリボンを見て少し驚き、そしてアリサさんを見て驚愕し、アリアさんを見てカップを落とし、ティニアさんを見て俺に詰め寄ってきた。
「え?」
「「是非、お話を聞かせてください!!!」
次回の更新は1月20日(火)の予定です。




