特別編 クリスマスの一時
作者「メリークリスマス!」
アルケ「今年はクルシミマスじゃなくてよかったな」
作者「本当によかった!! ケーキ最高!!!」
アルケ「大丈夫か、コイツ……」
アリア「使いますか?(愛用の凶器を差し出しながら)」
アルケ「すいませんが使いこなせません」
今日は12月24日。世間で言うクリスマスイブだ。
それにちなんでCWOでもクリスマス限定のイベントが2つ特別に用意された。
1つはダンジョン系。クリスマスをモチーフにしたダンジョンで転移泉から転移できる。敵の強さはエリア1の中盤程度の難易度だが、これは初期設定。一度クリアすると次からは難易度を選べることができる。
なお、最高ランクは「ソロでジャイアントデーモンを討伐するレベル」とラインが言っており、絶賛挑戦中だ。
クリア報酬はその名も〝クリスマスプレゼント″。中身はセルやアイテム、装備品など多種に及び内容もランダム。難易度が高いバージョンで何回も死に戻り、ようやくクリアしたのに中身が1セルだったプレイヤーもいれば、初めてのクリアでランクRの武器を獲得したというプレイヤーもいる。
そんなわけで転移泉では転移したり、死に戻りして再度挑戦のために作戦会議をしたりするプレイヤーたちで溢れかえっている。
さてもう1つのイベントだが、これは攻略に力を入れていないプレイヤー用で、25日0時の時点で一度もダンジョンに挑戦していないプレイヤーには運営からランダムでアイテムがプレゼントされるというものだ。これに関してはこれ以上の情報が運営から公開されていないので完全に運任せのランダムということになる。
そんな中で俺は『水仙』にお邪魔している。
そしてティニアさんとゆっくりクリスマスを満喫…………だったらどんだけ幸せだっただろうか。
「アランジアイス三つ追加お願いします!」
「同じくアランジアイス三つ、お願いします!」
「すいません! こっちはランゴをお願いします! 数は四つ!」
「さっきお願いしたグランプルーツまだですか!?」
「グランプルーツはそこに置いてある! アランジはそこの箱に入ってる! ランゴは少し待ってください!」
もうすでにお分かりだと思うがひたすらアイスを調合しているのだ。
事の始まりはティニアさんからの相談。CWOの世界にもクリスマスと同じ日に祝祭がある。と言っても、各種族でその内容は異なっている。
例えばドワーフ族は自分たちが創った武具を相手に贈ったり、エルフ族はアレンジした魔法を披露するイベントが行われたり、獣人族は総出で大型の魔物を狩ってお祝いしたりとさまざまだ。
そして妖精族では女性に感謝を伝える日なのだ。なんだか別の日に行わるイベントみたいだが、この日の妖精族の男性は様々な形で女性に感謝を伝えている。
ある人は家事を一日代理したり、ある人はプレゼントを渡したりと見ていると微笑ましく、幸せな気持ちになる。
一方で相手がいない男性も当然存在し、この日は酒を飲み合う男性たちを各所で見かける。まさに天国と地獄が具体的になる日なのだ。
そんな日にティニアさんはがんばってくれている遊女の皆さんにお礼をしようと考え、俺に協力を依頼してきたのだ。俺としてもいつもティニアさんを借りているし、遊女の中には仲が良い人も何人かいるので喜んで協力することにした。
そして今に至る。
「なんかすいません」
「気にしなくていいですよ」
いつもより動きやすそうな着物を着こんだティニアさんが申し訳なさそうに言って出来たばかりのランゴアイスを運んで行った。
本来ならそういう役割をティニアさんに絶対にさせない遊女の方々だが、今日は遊女の方々が主役だ。なかには本当にいいのかそわそわしている人もいるが、見たことない顔なのでおそらくは新人だろう。
ちなみに、新人が入ってきても称号【遊郭『水仙』の主】は消えなかった。あの時の全員と会っているから追加されても問題ないのだろう。
……これ以上変な称号が増えないことを祈るだけだ。
さて、(CWO内部で)そろそろ日付が変わる時間に差し掛かってきた。その頃になると追加の注文も入らなくなり、遊女の方々からは「また明日から仕事か~」とか「アイスおいしかったー」などの声が聞こえてくる。
その声を聴きながら俺はいまだにアイスを作っていた。
「お疲れ様でした」
「お疲れ様」
俺一人でも回せるようになったので休憩していたティニアさんが帰ってきた。髪がほんのり濡れている様子を見るとお風呂にでも入ってきたのかな?
「花魁きれ~い」
「わざわざ入浴したってことは、本気だよね?」
「でも、それならそれでありじゃない?」
「問題ないよね? むしろ私たち的にも役得だし!」
またしても遊女の方々から声が聞こえてきたがティニアさんが振り向くと一斉に顔を逸らした。なんか微妙に遊女の方々の身体が振動しているような?
「改めて、ご協力ありがとうございました」
振り返って俺に正面を向いたティニアさんはいつも通りなので特に気にしないでいいだろうと俺は調合を続ける。
まだだれか追加したのかと呆れているティニアさんに俺は完成したアイスを差し出した。
「これは?」
「今日は女性に感謝を伝える日ですよね? これは俺からの気持ちです」
完成したのはダリルアイス。さすがにこれは数を確保できなかったので遊女全員には提供できなかった。
「……いいんですか?」
受け取っておきながら信じられないという顔をしているティニアさん。軽く頷いて肯定の意志を伝えると一口一口丁寧に口に運ぶ。その度に満面の笑みで幸せを体現してくれると作ったこっちもうれしくなる。
「花魁幸せそうですね」
「一方通行だけどね」
「それは言っちゃダメ!」
その後『水仙』を去る時になぜか悲鳴が聞こえてきたけどあれはいったい何だったんだろう?
『水仙』での用事が終わり、今度はアリアさんの道具屋にお邪魔する。
「いらっしゃい!」
店番としてカウンターに立っていたのは身長の高い男性。慣れていないのが分かるくらい大声で出迎えてくれる。
「ちょっとお父さん! そんなんじゃダメだよ。 やっぱり私がするから」
「しかし、俺にはこういうことでしか感謝を表せないからな」
「それで何度もお客さん驚かしたらダメでしょ!……ってアルケさん!?」
男性の後ろから私服姿のアリアさんが登場し、俺を見て驚く。さらにその後ろから「ど~したの~?」とアリサさんも登場した。
「あ、アルケさん。こんばんは」
「どうも。お邪魔でしたかね?」
「いえ! 全然!」
慌てているアリアさんも結構珍しいと思っていると男性、先ほどの話の内容からアリアさんとアリサさんの父親と思われる人が俺を見つめて、どちらかというと睨んでいた。
「えっと、なにか?」
「いや、娘たちから良く話を聞いていたので、どういう人なのかと思っ……っ!」
「え?」
「うふふ、お父さんったら、うふふふふふ」
アリアサン? ソノテニモッテルクロイブッタイハナンデショウカ?
「姉さんったら。 でも今回は父さんが悪いからしょうがないか」
「そうなんですか?」
「そうなんです。 これ以上言うと私も同じになるから言えませんが」
よくわからないがこれ以上お邪魔するのも悪いと思ったのでアリサさんに二人分のダリルアイスを渡してお暇した。
「……まったくもう! あれ? アルケさんは?」
「もう帰ったよ」
「なんで!?」
アトリエに戻り、セリムさんとエイミさんにもダリルアイスをあげた。二人とも喜んでくれたのでよかった。
そして現実時間で午前0時となり、運営からプレゼント付きのメールが届いた。文面はクリスマスを祝うお決まりの定型文だったので割愛。
本命の中身は木で出来た小さなブレスレットだった。効果も無いただのアクセサリーだ。正直持っていても意味が無いし、捨てようかと思ってあるアイディアが思いついた。
朝時間になってから再度ダイブインした俺はある場所を目指した。さすがに一人だと大変だったが最初の頃よりは格段に早くなっていることにうれしくなる。
「さて、いるといいんだけど」
目的地に到着し、辺りを歩き回る。正直ここに来ると絶対に会えるわけではないので会えるかどうかは運次第だ。
途中休憩を入れながら歩き続けることすでに5時間以上、これ以上はさすがに無駄かと帰ろうとしたところで音が聞こえた。
音のほうへ顔を向けると夜時間が近いため薄暗い空間の中に見えるちいさなきのこ。
「怖がらないで。あの時みたいに攻撃しないから」
地面に膝を付け子供を迎える母親のように両手を広げる。それで安心したのか、それとも前に抱かれたことを思い出したのか草むらに隠れていたお目当ての相手は一直線に俺の胸元に飛び込んできた。
「会えてよかった」
そう、俺が探していたのはこの前会ったパニヤードだ。最もあの時と同じパニヤードかどうかはわからないと思っていたのだが、抱いてみてなぜか“間違いない”と確信した。
「それで、今日来たのはこの前のキノコのお礼がしたかったんだ」
俺の言葉が理解できなかったのか?マークを浮かべてそうな顔をするパニヤード。
俺はもらったばかりの木のブレスレットを取り出し、それをパニヤードの腕に付けてあげた。こういうアクセサリー系は大きさが自動調整できるが、モンスター相手でも有効だったようで一安心。
「!」
着けたブレスレットを見て驚愕し、俺を見つめてくるパニヤード。
「メリークリスマスのプレゼントだ」
言われた言葉の意味は分からないだろうが想いは伝わったようで涙を流して笑顔を見せるパニヤード。やっぱりこういうモノは子供にあげるべきだよな。
「ア、アリガトウ」
「どういたしまして」
頭を軽くなでるとパニヤードは少しばかり頭を動かす。それにより撫でやすくなったので気が済むまで撫でることに。
そして満足したのか後退していくパニヤード。しかし草むらに入る前にブレスレットをつけた腕を振ってくれたので同じように手を振る。
その後、パニヤードは草むらの中へと姿を消した。
「さて、俺も帰るか」
立ち上がると目の前を白い雪が舞う。いつの間にか空から雪が降ってきていた。
「ホワイトクリスマスか。明日には積もってるかもな」
降り続く雪を見ながら俺は足を踏み出した。
季節物をテーマとして書くのは初めてでしたがどうだったでしょうか。楽しんでいただければ幸いです。
ではいつも通り三日後にお会いしましょう。
その次は本物の年末なのでまたしても特別編が出せるようがんばります!




