表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双子星  作者: 泣村健汰
2/28

☆8月30日★ その1

 ☆8月30日★


「じゃ、今日はこれまで」

「きりーつ!」

 日直の声に合わせて、教室中の生徒が立ち上がる。

「れーい! 先生さようなら!」

 号令に合わせ、さようならの挨拶が教室中に響き渡る。そして中村先生が教室を出て行くよりも先に、教室の中は賑やかな放課後の空気に包まれる。

「か~なと~! 帰ろうぜ!」

 中村先生とほぼ入れ違いにして、雅人が教室の入り口に顔を出した。

「うん、ちょっと待って!」

 机の上にランドセルを乗せ、急いで机の中の道具を全部その中に入れる。

「うっす由香里」

 近くまで寄って来た雅人が、僕の隣に座っていた由香里に声を掛けた。

「雅人君、今日も元気ね」

 由香里の穏やかな声に、まぁな、と得意気な声を返している。

 ここ最近、雅人が僕を迎えに来て、一緒に帰る事が多くなった。今まではクラスメートとすぐに遊びに行ってしまう事が多かったから、小さい頃に戻ったような気がして、何だか嬉しい。

「叶人、今日はジャグレンの日なんだから。急げ急げ」

 雅人がワクワクした様子で僕の机を叩き、キラキラした目で僕を急かす。

 ジャグレンと言うのは、現在テレビでやっている『大道戦隊ジャグレンジャー』と言う特撮物の番組の事だ。大道芸の道具を使いながら怪人達をやっつけていくと言う奇抜な発想が、子供達の間で流行りに流行っている。僕も興味が無いわけではないが、毎週夢中になっている雅人程では無い。毎週毎週、新しい技が登場するので、番組の翌日は、男子のみならず女子も巻き込んで、クラス中その話で持ちきりである。

 因みに雅人は、ボール使いのブラックがお気に入りで、真っ黒なボールを幾つも持っている。

 僕と由香里は、それを遠巻きに見ている事の方が多いのだけど。

 ランドセルを背負い、由香里に軽く手を振ってから僕は雅人と共に教室を出た。

 教室を出る時、入り口にあるカレンダーからわざと目線を逸らして、僕は雅人の後姿に目を移した。

 来週か……。

 ふと入りこんで来た暗い感情を、頭を振り払いながら必死に追い出す。

「雅人、待ってよっ!」

 前方を走っている、ほぼ自分と同じ後ろ姿に声を掛ける。

「早く早く、置いてっちまうぞ!」

 楽しそうにそんな言葉を飛ばしてくる雅人との追いかけっこは、結局家に辿り着くまで続いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ