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双子星  作者: 泣村健汰
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☆9月1日★ その3

 帰宅した父さんと食卓を囲んだ後、僕は居間でソファに座りながら電話をしている雅人の背中を眺めていた。

「おお、おお、そんじゃ、それはこっちでやっておくから問題ないだろ?」

 最初、雅人は里美と明日の話をしてるものだと思ってた。だけど、一度切ってはまた電話をかけるを繰り返している。

「おお、じゃあそんな感じで」

 そう言いながら電話を切った所で、雅人に声をかけた。

「雅人、さっきから、誰に電話かけてるの?」

「ああ、クラスの連中だよ」

「クラスって、2組の? どうして?」

「……まぁ、色々な」

 その時、図ったかのように電話が鳴りだした。

 雅人が受話器を取り、先方にもしもしと声をかける。

「おお、ああ、悪ぃ悪ぃ。そうだな、とりあえず朝から動けるのがいいよな? 遊園地なんかどうだ?」

 相手の反応を待つように少し黙った後、雅人はこちらを振り向いた。

「叶人、明日遊園地行こうと思うんだけど、嫌か?」

 突然そう聞かれた為、少し戸惑ったが、楽しそうだし、反対する理由も無かった為、いいけどと返した。

「よっし、じゃあ明日それで」

 そう言って雅人は再び受話器に顔を近づけた。だけど話し始めてすぐ、雅人が僕に向けて受話器を手渡した。

「里美」

「僕に?」

 受話器を受け取って、声を出す。

「もしもし?」

『あ、もしもし、叶人君?』

「ああ、うん」

『なんかさ、雅人が勝手に遊園地って決めちゃったみたいだけど、叶人君もそれで大丈夫かな?』

「うん、僕は全然。楽しそうだし」

『本当? じゃあ、そうしましょう。明日は由香里が可愛い格好していくから、楽しみにしててね』

 里美の声の後ろから、ちょっと里美、と慌てる由香里の声が聞こえた。その可愛らしい雰囲気に、思わず頬が緩む。

『じゃあ、また明日ね』

「うん」

『ちょっと、もう一回雅人に変わってもらっていい?』

 里美の声に従い、手にしていた受話器を雅人に手渡した。

 雅人は僕から受話器を受け取り、里美との会話に戻った。

 ソファに戻って時計を見ると、9時を回っていた。

 キッチンからは包丁とまな板を使う音が漏れ聞こえてくる。きっと母さんが明日の僕達のお弁当の下拵えをしてくれているんだろう。

 父さんは今お風呂に入っていて、シャワーの音が微かに聞こえてくる。

 雅人は楽しそうに電話で里美との会話を続けている。

 暖かで、とても安らぐ空間。

 家族の空気を傍で感じられると言うのは、それだけでとても安らぐものなんだと、改めて感じた。

 愛しくて、堪らないこの時間も、明日で終わりなんだと思うと、とても哀しくなる。

 だけど、どうしようも無い事なんだよなと、心の奥底にたゆたう諦めと握手をする。

 考えてもどうしようも無い事は、どうしようも無いんだと、自分に言い聞かせる。

 周りの音に耳を澄ませている内に、僕はいつしか、そのままソファで眠ってしまったいた。

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