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第一話 携帯音楽プレイヤーはお好きですか?

男子大学生と付喪神の織り成す現代日常風景。そんなお話を一話完結で書いていこうと思います。ところで。付喪神ってファンタジーでいいよね?


地元の商店街を歩きながら、俺は携帯音楽プレイヤー聞いている。

 携帯音楽プレイヤーといえば、各種電気メーカーが生産しているし、有名どころで言えば歯形の付いたリンゴがマークの会社も出している。

 最近は胸ポケットに入れてなお隙が出来るほど薄く細く、そして軽いものが主流だ。

 しかし俺はそんな時代に逆行するかのごとく、


「次は何を聞こうかなぁ」


――かしゅんっ

 

 乾いた音を立ててMDが飛び出す。

 そう、MD。ベルトに巻いているポシェットがパンパンに膨れるほど大きな、MDプレイヤーを使っているのだ。

 そんなに持ち運べないから、セットしていないMDは2つしかポシェットに入れていない。それでも俺の腰で自己主張激しく存在感を放っているのだから、今の携帯音楽プレイヤーがどれだけ形態性に優れているのかよくわかる。

 それでも俺は、このMDプレイヤーが可愛くて仕方がないから使うのだ。


「じゃあ今は萌えアニメシリーズにするか」


――ふぇぇぇっ。またあのMDながすんですかぁ? とっても恥ずかしいのですぅ・・・


 イヤホンから流れる音楽とは違う、頭に響いてくるような独特な声。

 頭に直接飛んでくるようだけど、飛ばしている相手は周りを見なくてもすぐに分かる。


「買い物はもう終わってるから、家までよろしくね」


 うん。可愛いよ、このMDプレイヤー。

 俺は止めていた足を動かし、商店街を抜けて家路へと付く。

 まず言わせてもらうが、先ほどの間延びした女の子の声は俺の妄想ではない。断じてない。ないったらない。

 実は怪電波を受信しているというわけではない。いや、近からず遠からずといった感じかもしれないな。

 あの声は俺のポシェットの中で歩くたびに揺れている、MDプレイヤーの声だ。

 実際、今俺のMDプレイヤーは曲の歌詞によって操作画面のバックライトを恥ずかしそうに点滅させている。そんな機能は本来ないが、それこそ俺のMDプレイヤーがちょっと違う理由だ。

 別に俺は機械の声が聞こえる、という特殊な人間ではない。霊力がある、という特殊な人間だ。

 そう、霊力だ。うちの家系は代々祓い師をしていて、母親は今も全国各地津々浦々、観光もとい除霊の旅に出ている。

 そんな母親を持ってるもんだから、至極自然に息子の俺にも霊力が受け継がれた。

 だけど俺の霊力はそんなに強くない。そもそも、男は霊力が強くないのだ。札に雀の涙ほどの霊力を必死に込めて闘う数少ない男は、陰陽師と呼ばれているらしいが。

 俺もそうだが、男の霊能力者は特殊かつ限定的な能力でも持ってない限り、霊が見えて霊の声が聞こえる程度しか力を持たない。

 残念ながら、蒸気機関で動くロボットを操縦できるほど霊力は無いだろう

 

――ご主人様ぁ、おうちに着きましたよぉ? だからぁ、早くコレ止めて欲しいのですぅ。


 ぷるぷるとMDの口を震わせて言う俺のMDプレイヤー。

 そんな・・・まるで俺が子供には見せられないような辱めをしているみたいじゃないか。

 まったく。そんな風に言われたら僕だって、


「確かに家に着いたけど。やや子、そのセリフがツボに入ったからもうちょい流そうか」


――ふぇぇぇっ!


 うん。やっぱりうちのMDプレイヤーは可愛い。

 あ、やや子っていうのは俺のMDプレイヤーの事だ。我が家のMDプレイヤーの付喪神、恥ずかしがり屋で控えめな女の子、やや子だ。

 付いた物の名前で呼ぶのは味気ないから、みんなにはそれぞれ名前を付けてある。

 他にも我が家の付喪神、家族はいっぱいいる。

 一度に紹介するには多いから、ちょっとずつ、みんなに紹介していこうと思う。



 これは俺と、俺の一風変わった家族を紹介する物語。

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