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運命ですね 前編

俺の名前は留離垣翔介。

現在母さんと二人暮らしで兄弟はいない。

兄弟ほしかったんだけどな・・・。

父さんのほうはというと行方不明。別に山で遭難したとかではなくて、母さんによると「どこかで仕事をしている」とのことらしい。俺自身会ったことも話をしたこともない。

俺が物事を記憶して思い出せるようになってた頃には父さんの姿はなかった。

てっきり離婚してるのかなと思って母さんに聞いてみたんだが、それについては否定。

なんだよそれ、じゃあ別居でもしてるのかとも聞いてみたがやっぱり否定された。

生活にかかわる費用だけは毎月送ってきているらしい。

いや、すごく疑問に思いましたよ?離婚もしてなく別居もしてなく家にも帰ってこないだなんて。それこそUFOのような謎が多い夫婦関係なのである。

俺も今頃会いたいだなんて思わないし。会ったところで天変地異が起こるわけでもないからどうでもよくなってきているんだが。




俺が通う成十華高校では「運命」っていうのが流行っているらしい。ちなみに男子の中だけの話だ。

もちろん、ベードーヴェンの交響曲第5番の運命ではなく恋愛的な意味での運命だ。

なぜこんなことが流行っているのか。それは西嶋香織という人物と関わりたいかららしい。

何を隠そう男子があこがれる美少女。運命的な出会いでもいいから彼女と話したいという男子が大勢いる。

普通に話しかければいいじゃんなんて思うのだが。まぁ、そんな先手を打つものがいたとして仲良くなったら、周りの男子は嫉妬をこめてそいつを恨むだろう。校内で戦争がおきてもおかしくない。

俺はそんなフランス革命のようなものには関わりたくない。痛いのは御免だ。

だが、起きてしまった。

誰もが予想もしなかった出来事が。

運命。

そう、彼女との西嶋香織との運命的な出会いが俺の身に起きてしまった。

時期は入学式が始まって二週間ほどたつ。去年と同じく今年も西嶋香織と一緒のクラスになった俺は、いつもの変わらない下校をしていた。二年生になると修学旅行などの大イベントが迫っている中で、俺はスキップスキップランランランという気分で住宅街が密集する十字路に差し掛かろうとしていた。

そこで事故はおきた。

まるでドラマやアニメ、映画でもあるようなラブコメ的展開。

俺が十字路を左に曲がろうとした時、西嶋香織とぶつかった。

俺は驚愕・・・。

成十華の男子だったらキターくらいの喜びを心の中で叫んでいたかもしれないが、おれにはむしろやっちまったーという感情の方が顔に浮かんできた。


「うわっ」


その耳に残るような声とともに彼女は地面に尻をついた。

俺はとっさに「大丈夫か?」と声をかけようとした。だが、彼女は制服のようで、そこから見える綺麗な肌をした太ももに、一瞬言葉を発するのを忘れてしまった。

あぁ、俺大丈夫かな。変な気起こさなければいいが。


「えっと、大丈夫ですか?・・・」

「え、あ、はい。」


幸い、彼女は地面に尻をついただけで怪我はしていないようだ。

よかった・・・。

他に心配することは周りに成十華の生徒がいないかだ。

すばやく辺りを見渡す・・・・。

よし、誰もいない。

そんなことを確認してから安堵の息をはき、彼女に振り返ろうとした。瞬間。俺の左足が右足に絡まり倒れてしまった。


「うわぁーーーーー」


俺は視界が流れていくのを見届ける。

そして・・・。

彼女の両肩の横に手をつき何とか受身をとった。彼女に覆いかぶさる状態。

彼女は予想もしていなかった出来事に、避けることもできず上半身を後ろに後退させるしかなかった。

よかった叫ばれるなんて事されなくて。

とりあえず誰も見ていないことを祈るばかりだ。もし成十華の男子にでも見られたら同盟なんて発足しちゃって俺を殺しに来るだろうからな。

とりあえず、黙って早く体を起こして謝ることにしよう。

さぁ!動け体よ。誰かに見られる前に。


「こらーそこの少年なにをやっているー」


甲高い声が道の上を響き渡る。

慌てて顔を上げて、俺は声の主が誰なのかを確認しようとする。

ん?なぜかすごい勢いでこちらに向かってきている。

ここから見えるだけのことで判断すると警察の類ではなく、スカートをはいていて俺よりか身長は低めの女子らしい。


「ドロップキーっク!」

「ぐはあぁっ!?」


俺は苦しくうめき声を上げながら空中をぶっ飛び、道の上をどんどんごろごろと転がる。

しばらくして俺の体がアスファルトの上で静止した。

うっ。いってえー。

うまく衝撃を殺したから良かったけど、まじでご臨終しちゃうかと思ったよ。

俺は体を起こして状況確認を始める。どうやら走ってきた女に吹っ飛ばされたようだ。


「大丈夫香織?気持ち悪いお兄さんに変なことされなかった?」

「・・・・・」

「・・・・・・・押し倒された」

「ちょっとまてよ。別に押し倒したわけじゃないんですけど」


いろいろと突っ込みたいことはあったが、今一番最優先されることについて。俺は西嶋の発言に全力で否定をした。ドロップキックを仕掛けてきた猛獣はうちの高校と同じ制服を着ていて、見たところいつも西嶋と仲良くしているクラスメイトと判明。

名前は確か・・・柏木咲だったか?


「ど、どういうこと押し倒したって」


咲は驚愕の声を上げながら俺に目を向ける。


「いや、あのですねこれは」

「そういえばあんた見覚えがあるわ。名前は・・・留離垣しょうすけ。平凡で地味で変態の!」

「まて、最後の言葉は少し誤解があるようだ!」

「この変態ならやりかねないわね。」

「だから変態じゃないって言ってるだろ」

「今ここで咲を襲おうとしてたじゃない!咲が押し倒されたって言うからにはそれが事実なんだから!」


咲は俺に指を向けて言い放つ。全くこいつは話を進めていくのがうまいな。俺に一切の発言をさせてくれない。


「とりあえず警察を探して逮捕してもらわなきゃ」

「・・・・・・」


どうしてこう勝手に話が進むんだ!俺の話を聞いてくれー。

まぁ、そう簡単に警察がいるわけが。


「いないようね・・・」


そりゃそうだ、そう都合よくいるはずがない。いたら俺の人生が終わるよ。

まだ地面に座り込んだままの西嶋をゆっくりと立ち上がらせてから、咲はうーと唸り始めた。


「しかたないわね」

「・・・・」

「こうなったらあたしが捕まえるほかないわね」

「えー」

「えー」


俺と西嶋は雷が走ったような驚きの声を上げる。

ちょっとまて、俺もさすがに女の子につかまることなんてないと思うが。

この俺でも中学時代にはマラソン大会で3位に入った男ですから。


「ちょっと待て、一回話し合おうじゃないか」

「何を・・・」


ピリピリと気が立っている咲。レースのスタート準備は万端のようだ。

全くややこしいことになったもんだ。


「分かったよ、出頭する」

「本当か!?それはこちらとしても助かるよ」


俺は咲の言葉を終わりに決心した。そしてゆっくりと足を踏み出す。

後ろに。

全力で走り出した。

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