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ショートショート:野良ドローンを追い払う

掲載日:2026/10/15

「あー……ここにもいっぱいいるなぁ」


 俺はドローンスポットに群がるドローンの惨状を見てため息をついた。


 ドローンインフラのメンテナンスの仕事について数ヶ月。誰にでもできる簡単な仕事ですとの触れ込みで軽い気持ちで就職したんだけど。


 まさかここまで肉体的に負担が掛かる仕事内容だとは思わなかった。


 ここ数年でドローン周りの環境整備は格段に進み、高度なAIを搭載したことであらゆる物流にドローンが活用されるようになった。個人の所有も進み、法律上の決まりすら守ればそこそこの値段でドローンが持てる。それに呼応するように充電スポットも整備され、今やあちこちの電柱の上にテーブルのようなスポットが設置されてドローンがそこに駐まっているのが見られるようになった。


 そこまでは良かったのだが、それからがひどかった。


 スポットはサポートのサブスクに加入していればどのドローンでも利用ができる。だが、それの認証手続きが割と適当な仕組みであったために、どの所属のドローンでも使えるようになってしまった。当たり前のようにシステムがハッキングされて認証が通ってしまう。その数が多いので取り締まりが追いつかない。コストが掛かりすぎるので抜本的対策も講じる余裕がなく、結果として黙認となってしまった。ハックのスクリプトはAIなら一瞬で導入が可能で、更に課金情報の欺瞞もされてしまい、もはやシステム側からは見分けが付かない。こうして誰の所有か分からない、いわゆる野良ドローンが群がってしまうようになったのだ。


 スポットは面積に限りがある。だから充電は早い者勝ちになる。野良ドローンの多くはそこを占有するようになり、駐まっているドローンを押しのけてまで充電しようとしている。正規ユーザーを優遇するシステムもないからやりたい放題の状態だ。自衛策としてきちんと課金しているドローンまでが実力で他のドローンを排除する機構を搭載してしまい、ドローン同士が弱肉強食の競争にさらされた。


 スポットの周囲では鈍い金属音が響いてドローンが互いに戦闘を行っていて、周囲には突き落とされて破損したドローンが転がっている。俺はそれを片付ける仕事をしているのだ。こんな作業もドローンでやればいいと思うのだが、話によるとメンテナンスドローンまでが攻撃対象と誤認されてしまうのだそうだ。


 周囲にはドローンが運んでいた荷物も散乱していることがある。これを荷主に連絡して持っていってもらうのも仕事のうちだ。ほとんどは運送時にスポットにドローンが駐まることはないから、荷物に被害が出ることは少ないのだけれども、運悪く通りかかったドローンに別のドローンが襲いかかるケースがあって、それで荷物を落とされてしまうのだ。


 そういうのを見かけた場合は、だいたいは荷物にラベルが残っているから、それを画像で読み込んで運送会社へと通報する。俺には荷物を触る権限が与えられていないので、荷物が散乱していても手を触れることはできない。……まぁ、価値の高そうな荷物は早々に誰かが漁って持ち去っていることが多いんだけども。


 こう言うのを見てるので、俺はドローンで運ぶサービスはあまり使う気になれない。とはいっても今どき人間が手で運ぶ運送サービスなど数えきれるくらいにしかないし、とても高価で破損したら困る高額品くらいしか需要がない。俺にような庶民には無縁な代物だった。なので通販を頼むときには破損して事故らないようお祈りするしかない。


 今回も荷物の箱が壊れてて中身が見えている物があった。どうやら通販らしいが。ラベルを見れば送り先は女性宛、種別はパソコン部品、見えてしまった中身は……うん、見なかったことにしよう。荷物あさりのハイエナもこれは要らなかったようで、手が付けられていなかった。俺は荷物に触れることができないから中身を隠す事もできない。ああ辛いなぁ。


 落っこちていた破損ドローンをチェックして、正規のものの認識コードを確認する。これも画像で認識して所有者に連絡。非正規のはゴミとして持ち帰ってリサイクルに回す規定となっている。俺は乗ってきた小型EVの荷台を開けて正規品は丁寧に、非正規のは雑に放り込む。そういう取扱規程になってるのである。


 だいたいは片付いた。あまり一カ所に時間を掛けてたら回らないので手早く作業を済ませ、俺は次の巡回場所へ移動する。今日はまだ担当の場所が100以上ある。早くしないと日が暮れちゃう。


 そこを離れて移動を開始したところで、近寄ってくる車があるのに気付いた。そのまますれ違い、その車は先ほどの場所に止まる。


 降りてきたのは女性のようだった。距離があるので顔までは分からない。ただ体つきはなかなかのグラマー。いわゆる恵体。実際のところ、かなり好みのタイプだ。


 その女性が乗った車はさっきの場所に。あわてて女性は勢いよく車から降りて、さきほどの荷物に。そして確認するやいなや周囲の目を気にするようにその荷物を車に載せた。


 つまり、あの中身をあの女性が……


 ……


「で、君はよそ見で事故を起こしたわけだが、そこで何かを見たのかね?」


「えーと……あのぉ……」


 警察署で取り調べを受ける俺。警官が事故原因を確認しようと何度も訊いてきたが、あれこれややこしくて、言えるわけがなかった。

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