未来幻視
少年には予知能力があった。少し後の世界をありありと、まるで目の前にあるように感じ取ることがができるのだ。
それが最初に現れたのが9才の時。
少年が食卓についた瞬間、幻視が襲ってきた。少し後の世界。少年の前の料理はすべてなくなっており、腹に快い満足感を感じている。母は食器を片付けようとしていた。
「ごちそうさま」
母が言った。
「まだ食べる前じゃないの。いい、ごはんを食べるときは、いただきますと言うの。わかった?」
少年は成長し、ある会社に入った。数ヶ月たって仕事にも慣れた頃、上司の家にある用事で行く事になった。
「よく来たな。まあお上がり」
その時、またも幻視が襲った。
上司と話し込んで2時間ほどが経っている。ふと気付くと、もう夜だ。帰ろうとするが、奥さんが表れ、食事をしていくよう勧められる。
「そうですか。それじゃ遠慮なくごちそうになります」
「まだ、ごちそうするとも何とも言ってないよ。へんな男だね、君は」
彼も老いる。妻とは数年前に死に別れ、今は息子夫婦と同居の生活を送っていた。特に何をするでもなく、庭先に座っていることが多かった。
そんな昼下がり、幻視がやってきた。太陽は沈みかけて夕焼けが赤い。風が冷たく感じられる。そろそろ、夕食の時間の筈だ。
「サチコさん、メシはまだかいのう」
「いやだ、おじいちゃん。さっきお昼を食べたばっかりじゃないですか。ボケちゃ困りますよ。ほんとにもう」




