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未来幻視

作者: 来也亜男
掲載日:2026/07/31

 少年には予知能力があった。少し後の世界をありありと、まるで目の前にあるように感じ取ることがができるのだ。

 それが最初に現れたのが9才の時。

 少年が食卓についた瞬間、幻視が襲ってきた。少し後の世界。少年の前の料理はすべてなくなっており、腹に快い満足感を感じている。母は食器を片付けようとしていた。

「ごちそうさま」

 母が言った。

「まだ食べる前じゃないの。いい、ごはんを食べるときは、いただきますと言うの。わかった?」

 少年は成長し、ある会社に入った。数ヶ月たって仕事にも慣れた頃、上司の家にある用事で行く事になった。

「よく来たな。まあお上がり」

 その時、またも幻視が襲った。

 上司と話し込んで2時間ほどが経っている。ふと気付くと、もう夜だ。帰ろうとするが、奥さんが表れ、食事をしていくよう勧められる。

「そうですか。それじゃ遠慮なくごちそうになります」

「まだ、ごちそうするとも何とも言ってないよ。へんな男だね、君は」

 彼も老いる。妻とは数年前に死に別れ、今は息子夫婦と同居の生活を送っていた。特に何をするでもなく、庭先に座っていることが多かった。

 そんな昼下がり、幻視がやってきた。太陽は沈みかけて夕焼けが赤い。風が冷たく感じられる。そろそろ、夕食の時間の筈だ。

「サチコさん、メシはまだかいのう」

「いやだ、おじいちゃん。さっきお昼を食べたばっかりじゃないですか。ボケちゃ困りますよ。ほんとにもう」



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