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第04話 新しい一歩※日和視点

 受験の日がやってきた。


 合格するために、日和はずっと準備してきた。勉強も、体力づくりも、手を抜いた日はなかった。けれど、いざ会場に足を踏み入れると、緊張で手が冷たくなっていた。


 会場には多くの受験者が集まっていた。想像していたよりもずっと多い。これだけの人数が一つの学校を目指しているのかと思うと、改めて狭き門なのだと実感した。


 学力試験と実技試験。どちらも全力でぶつかった。


 学力試験は、終わった瞬間に手応えがあった。落ち着いて問題を読み込み、回答欄に記入できた。わからない問題はなかった。自信がある。


 実技試験の方はどうだろうか。日和は試験を終えてから振り返った。体力テストのようなものだった。走って、体を動かして、記録を取られた。全力は出し切った。多分、大丈夫だと思うけど。周りの受験者たちも真剣な顔をしていたから、自分だけが良かったとは言い切れない。


 合格発表の日、自宅に通知が届いた。


 お母さんと一緒に確認する。ドキドキしながら封筒を開くと、中身を読むよりも先にお母さんに抱きつかれていた。


「おめでとう!」


 それで実感が持てた。合格したんだ。日和はお母さんの腕の中で、何度も通知を読み返した。


「やった!」


 合格。学力試験の成績はトップクラス。


 同封されていた詳細な成績内容を確認して、日和は目を丸くした。運動能力試験の成績が、女子の中で首席だった。


 まさか自分が女子首席だなんて。手応えはあったけれど、そこまでの結果だったなんて。驚いた。でも、素直に嬉しかった。頑張ってよかった。ずっと真面目にやってきたことが、ちゃんと結果に繋がっていた。




 中学の卒業式も終えて、国立探索士高等専門学校に入学する準備を進めていたある日のことだった。


「日和ちゃん、ちょっといいかな」


「こんにちは、凪原さん! どうしたんですか?」


 凪原さんに呼び止められた日和。部屋の前に立ち止まって向かい合うと、彼は日和に小さな箱を差し出す。なんだろうと思いながら、それを受け取る。


「中学卒業と、ダンジョン探索士の学校に入学するお祝い。受け取ってくれるかな」


「……え?」


 箱を開けると、ネックレスが入っていた。日和はそれを手にとって眺めた。胸が弾む。


「わぁ!」


 シンプルだけれど、大人っぽいデザイン。細いチェーンの先に、小さな石が一粒。光を受けると、淡い輝きを放っていた。こんなものをもらっていいのだろうか。


「これ、実はダンジョン産のアイテムらしくてね。知り合いの伝手で手に入れたんだ。特に効果はないみたいだけど、お守り代わりに持っていてほしい」


「凪原さん……ありがとうございます!」


 突然のサプライズ。嬉しかった。とても嬉しかった。高校の入学祝いを、お母さん以外からもらえると思っていなかったから。しかもダンジョン産のアイテムだなんて。


 まだダンジョンの中に一歩も足を踏み入れていない日和だけど、先にダンジョンの世界に触れることができた気がした。ネックレスを首にかけると、ほんの少しだけ温かいような気がした。気のせいかもしれないけれど。


「大事にする! 忘れずに持っていくね。ダンジョンの実習にも、ちゃんとつけていく」


「うん、気をつけて頑張って」


 凪原さんはいつもと変わらない穏やかな表情で、そう言った。


 新しい制服に袖を通す日は、もうすぐそこまで来ていた。日和は、不安よりも期待の方が少しだけ大きいのを感じながら、ネックレスの小さな石に指で触れた。


 大丈夫。きっと、うまくやれる。


 お母さんを楽にするために。この先の道を、自分の力で切り開いていくために。


 日和は、しっかりと自信を持って前を向いた。

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