令嬢たちのメイド学院
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【令嬢たちのメイド学院】
~僕が女装メイド講師になった理由~
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著:AI Light Novel Studio
全24話収録(第1期)
登場人物:
・アルフレッド・ヴァンホルト(アリス)── 主人公・17歳・公爵家長男
幼少期より姉に女装メイド教育を受け、女性として通用するほど美しい少年。
内心は男らしく生きたいと思いつつも、メイドの作法は一流。
・エレオノーラ・ヴァンホルト ── アルフレッドの姉・23歳
「ヴァンホルト令嬢メイド学院」学院長。弟を溺愛しつつ講師として送り込む。
【ヒロイン10名】
①セラフィーナ・ロスタン(20歳) ── 侯爵令嬢・学院の優等生・金髪碧眼の完璧美女
②リリア・ナハティガル(21歳) ── 伯爵令嬢・天然おっとり系・小動物的可愛さ
③エミリア・クロイツ(22歳) ── 騎士爵の娘・ボーイッシュで負けず嫌い
④マリアンナ・デルフォン(20歳) ── 子爵令嬢・毒舌ツンデレ・内心は素直
⑤ソフィア・ベルクハルト(24歳) ── 公爵令嬢・大人っぽいお姉さん系
⑥ユリア・シャルティエ(21歳) ── 男爵令嬢・読書好き・眼鏡の知的美女
⑦ロザリンド・ミルテ(22歳) ── 平民出身の苦労人・努力家・赤毛
⑧コーデリア・アスフォード(23歳) ── 伯爵令嬢・天真爛漫・料理下手の努力家
⑨ヴィオレッタ・エストレラ(20歳) ── 辺境伯令嬢・ミステリアス・紫髪
⑩ナタリア・リンドグレン(24歳) ── 宰相家の娘・生徒会長・策士
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第1話「僕が女装講師になった日」
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「アルフレッド、今日から君は”アリス先生”よ」
姉・エレオノーラの言葉に、僕は眩暈を覚えた。
ヴァンホルト公爵家の長男として生まれた僕には、物心ついた頃から奇妙な運命が定められていた。姉エレオノーラが設立した「ヴァンホルト令嬢メイド学院」――王都でも指折りのメイド養成機関に、女装姿の講師として就任させられることになったのだ。
「……姉上、本気ですか」
「もちろんよ。あなたのメイド作法はこの学院で一番の腕前。むしろ教壇に立たない方が社会的損失というものよ」
姉は鏡の前に僕を座らせ、手慣れた動作で化粧を始めた。
「それに、アルフレッドが男だって誰も信じないわ。見てごらんなさい、この美貌を」
鏡に映るのは、艶やかな銀色の長髪、大きな紫の瞳、陶器のような白い肌を持つ少女。
そう――男の、僕だ。
「……最悪です」
「最高よ」
かくして僕は”アリス・ヴァン”という偽名を与えられ、メイドの作法を教える女性講師として学院に赴任することになった。
学院の門をくぐった瞬間、華やかな香りと、美しい令嬢たちの視線が僕を包んだ。
「あら、新しい先生かしら?」
「すごく綺麗……」
――バレたら終わりだ。そう固く心に誓いながら、僕の奇妙な学院生活が始まった。
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第2話「優等生は侮れない」
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翌朝、初めての授業が始まった。広い教室に並ぶ十人の美しい令嬢たち。全員が二十歳以上だというのに、どこか初々しい雰囲気を漂わせている。
「皆さん、おはようございます。本日より礼法・給仕作法を担当します、アリス・ヴァンと申します」
声は姉に徹底的に訓練させられた柔らかい女性の声。完璧なはずだった。
「先生、少しよろしいですか」
最前列、金色の髪を完璧に結い上げた令嬢が手を挙げた。セラフィーナ・ロスタン侯爵令嬢。この学院随一の優等生と事前に聞かされていた。
「ご質問、どうぞ」
「先生のメイド作法を拝見したいのですが、お手本を見せていただけますか? 百聞は一見に如かずと申しますし」
鋭い。しかし動じない。これが僕のホームグラウンドだ。
僕は静かにトレイを手に取り、完璧な角度で傾け、音を一切立てずにティーカップを並べ、一礼した。
教室が静まり返る。
「……素晴らしい」
セラフィーナがぽつりと呟き、次の瞬間、教室に拍手が広がった。
「合格です、アリス先生」
彼女の碧眼が細くなり、微笑んだ。その笑顔が恐ろしいほど美しくて、僕は内心で動揺を必死に隠した。
――この人は危険だ。直感がそう告げていた。
授業が終わると、セラフィーナが近づいてきた。
「先生は、どこで作法を学ばれたのですか? 貴族のご令嬢のような洗練さですが」
「……家庭教師に、徹底的に」
嘘ではない。姉という名の鬼教師に。
「そうですか」
彼女の目が、一瞬だけ何かを見透かすような光を帯びた気がした。
――まさか、もう疑われている?
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第3話「天然の罠」
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学院には講師用の小さな休憩室がある。昼食のために一人でいると、扉が静かに開いた。
「あの……先生、お邪魔してもいいですか?」
丸い目をした栗色の髪の令嬢、リリア・ナハティガルだった。授業中も一番おっとりしていて、隣の子に「リリア様、また転びそうになってましたよ」と言われていた子だ。
「構いませんよ」
「えっへへ、ありがとうございます。あの……お弁当を一緒に食べてもいいですか? 一人だと寂しくて」
「どうぞ」
リリアは僕の隣にちょこんと座り、大きな弁当箱を開けた。量が多すぎる。
「すごいですね、随分たくさん」
「えへへ、食べるのが大好きで。先生はお細いのに、どうしてそんなにしなやかなんですか?」
しなやか。男だからだよとは言えない。
「……体質でしょうか」
「いいなぁ、私ももっとスマートになれたら作法も上手になれると思うんですけど、転んじゃって」
リリアはしょんぼりと耳(のような気がする位置)を垂らした。
「転ぶのはスタイルではなく重心の問題ですよ。足の運び方を意識しましょう」
「先生……! 優しい!」
目に涙を浮かべてリリアが僕の腕に抱きついた瞬間、僕は石になった。
やわらかい。腕が、腕が埋まる。
これは危機だ。心拍数が急上昇している。
「り、リリアさん、食事中は……」
「あ、ごめんなさい!」
パッと離れて、リリアは顔を真っ赤にした。僕も内心で赤くなりながら弁当を口に運んだ。
天然とは最大の武器だ、と学んだ昼下がりだった。
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第4話「勝負を売られました」
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「アリス先生! 私と勝負してください!」
放課後の廊下、猪突猛進な声とともに現れたのはエミリア・クロイツだった。栗色のショートヘアを揺らしながら、真剣な目で僕を見据えている。
「……勝負、ですか」
「メイド作法で! 私、先生の授業を見て悔しくなってしまって。私の方が体を動かすのは得意なんです。でも先生の動きはどこか違う。何が違うか教えてほしいんです。勝負を通して!」
眩しい。この真っ直ぐさが眩しい。
「わかりました」
放課後の実習室で、二人並んでサービスの練習をした。エミリアの動きは確かに俊敏で力強い。しかし、どこかぎこちない。
「エミリアさん、メイドの所作は力ではなく、“流れ”です。水のように、空気のように」
僕はエミリアの後ろに立ち、腕に添えて動きを誘導した。
「こう……自然に、トレイが体の延長になるように」
「う……」
「どうしました?」
「ち、近い……です、先生」
耳が赤い。僕は慌てて距離を取った。そうだ、一般的に女性の先生が女性の生徒にこれをしても別に問題はないはずだが、なぜか申し訳ない気持ちになってしまう。
「す、すみません。では言葉で説明します」
「……いえ、このままで! もっと教えてください」
耳を赤くしながら真剣な目になるエミリアに、僕は別の意味での動揺を感じた。
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第5話「毒舌令嬢の本音」
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マリアンナ・デルフォンは、最初から僕に対して態度が悪かった。
「……ふん。先生の経歴も出身校もわからない。ヴァンホルト学院長の知り合いというだけで講師になれるなんて、縁故採用も甚だしいですわね」
他の生徒が聞こえないよう、廊下の角でそう言い捨てた。紫がかった黒髪に怜悧な目。美人だが、棘がある。
「おっしゃる通りです」
同意すると、マリアンナが面食らった顔をした。
「……言い返さないんですか」
「反論できないことをおっしゃっているので。ただ、私の腕は本物ですよ。そこだけは保証します」
「……口だけでしょう」
「試してみますか?」
放課後、マリアンナだけ残って採点課題の再提出をしていた。彼女の所作はほぼ完璧だったが、一点だけ、笑顔が硬い。
「マリアンナさん、今の笑顔、練習しましょうか」
「……笑顔の何が問題なんですか」
「完璧すぎます。メイドの笑顔は完成品ではなく、温もりです」
マリアンナが沈黙した。長い沈黙の後、
「……教えてください」
その声は、とても小さかった。
一時間後、鏡の前でマリアンナが笑う練習をしているのを見て、僕は思った。ツンデレの皮の下には、誰より真剣な少女がいる。
そして笑顔の練習が終わった後、マリアンナは「……ありがとう、ございます」と呟き、足早に去っていった。耳が赤かった。
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第6話「先生と呼ばないで」
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ソフィア・ベルクハルトは、授業中から他の生徒とは違う空気を纏っていた。二十四歳、公爵令嬢。なぜ今更メイド学院に、と思っていたが、理由を話してくれたのは午後のお茶の時間だった。
「実は、将来婚約者の屋敷を切り盛りする立場になるので、使用人側の気持ちを理解したくて入学したんです。アリス先生、変に思いますか?」
「すごく素敵な動機だと思います」
ソフィアがほんの少し頬を緩めた。
「……先生は、私と同い年くらいに見えますけれど」
「あ、いえ、私の方が年下です」
「そうは見えませんわ。とても落ち着いていらっしゃる。……ねえ、先生同士で話すようにアリスって呼んでもいいですか? 先生と呼ぶのが少し……堅苦しくて」
「それは……」
困った。親しくなるほどバレる危険が増す。でも断る理由も思いつかない。
「……構いませんよ、ソフィアさん」
「ありがとう、アリス」
ソフィアが微笑んだ。温かく、どこか懐かしいような笑顔だった。お姉さん的な包容力があって、なぜだか姉のことを思い出した。
――いや、姉は全然違う。もっと危険だ。
「アリス、今度二人でお茶しませんか? いろいろ教えてもらいたいことがあって」
「……喜んで」
心臓が変な音を立てた。これは友人としての好意だ。そのはずだ。
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第7話「本の向こう側」
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学院の図書室でレポートの採点をしていると、すでに先客がいた。ユリア・シャルティエ。銀縁眼鏡の奥で静かな目が活字を追っている。
気づかれないよう別のテーブルに座ろうとしたが、
「……先生、そちらは明かりが暗いですよ」
本から目を離さずに言われた。
「ありがとうございます」
彼女の隣のテーブルに座ると、ユリアがそっと栞を挟んで本を閉じた。
「珍しいですね、先生が図書室に」
「採点を。ユリアさんは何を読んでいたんですか?」
「ベルガー著の『使用人階級から見た宮廷史』です。メイドとしての仕事を歴史的文脈で理解したくて」
……その本、僕も読んだことがある。むしろ姉の書架にあって、子供の頃繰り返し読んだ。
「第三章の宮廷侍女の所作の変遷、面白いですよね」
「……先生、読んだことあるんですか?」
「ええ」
「……私、その章についてずっと考察していたんですが、聞いていただけますか?」
目が輝いている。普段は静かなユリアが、本の話になった途端に活き活きとし始めた。
気づけば二時間、本の話をしていた。
「こんなに話せた人、初めてです」
ユリアがそう言って、眼鏡の奥で照れたように目を伏せた。
「……先生、また来てもいいですか、ここに」
「もちろんです」
帰り道、なぜだか足取りが軽かった。
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第8話「赤毛の意地」
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ロザリンド・ミルテは他の生徒と少し違う。平民出身で、奨学制度で入学した努力家だ。授業に誰より真剣で、放課後も一人残って練習している。
「ロザリンドさん、もう消灯時間ですよ」
夜の実習室、ろうそく一本の明かりで練習するロザリンドに声をかけると、彼女は飛び上がった。
「せ、先生! い、いつから!?」
「今ちょうど。……続けてよかったですよ、見ていましたが、格段に上手くなっています」
「……本当ですか?」
赤毛が揺れた。
「私、令嬢のみなさんとは違って、作法なんて全然知らなかったから。ずっと追いつこうとしているんですけど、なかなか……」
「今日の給仕の動き、セラフィーナさんより滑らかでしたよ」
「えっ……そんなまさか……」
ロザリンドが信じられないといった顔をした。
「本当のことです。センスがある。あとは自信だけです」
「……先生」
ロザリンドの緑の瞳が潤んだ。
「……ありがとうございます。誰かに、ちゃんと見ていてもらえているんだって、嬉しくて……」
泣きそうな顔でそう言って、ロザリンドはぐっと涙をこらえた。
――この子は、本当に頑張っているんだ。
「一緒に特訓しましょうか、たまに」
ロザリンドが顔を上げて、晴れやかに笑った。
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第9話「失敗作のスコーン」
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調理実習の日、コーデリア・アスフォードが問題を起こした。正確には、スコーンが問題を起こした。焦げているというより、炭に近い物体がオーブンから出てきた。
「ど、どうして……! レシピ通りにやったのに!」
「コーデリアさん、オーブンの温度を確認しましたか?」
「し、しました! でも……あれ、この目盛り、摂氏じゃなくて……」
「……やり直しましょう」
他の生徒が片付けをする中、コーデリアだけ残って再挑戦することになった。明るく天真爛漫な性格の彼女が、初めてしょんぼりしている。
「先生、私、何をやっても料理だけは……。器用なはずなのに、なぜか」
「好きですか、料理」
「大好きです! だから悔しくて……」
好きこそものの上手なれ、とも言うが、得意不得意は別物だ。
「では一緒にやりましょう。私が手順を口で言います、コーデリアさんが手を動かす」
二人で並んでスコーンを作った。コーデリアの動きは思ったより丁寧で、指示通りにやれば問題ない。ただ少しテンポが速い。
「ゆっくり、あわてなくて大丈夫です」
「……先生の声、落ち着きますね」
コーデリアがぽつりと言った。
「ハイになってくるといつも誰かに言われちゃって、でも先生に言ってもらうと、なんか……素直に落ち着けます」
そしてオーブンから出てきたスコーンは、今度こそ黄金色だった。
「やった! 先生! できました!」
コーデリアが僕の手をぐっと握った。手が大きくて温かい、という感想が脳裏をよぎり、僕は慌てて思考を中断した。
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第10話「紫の瞳が見ている」
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ヴィオレッタ・エストレラは謎めいた生徒だった。辺境伯令嬢で、紫の髪と紫の目を持つ、どこかこの世のものではない雰囲気の少女。授業中は完璧なのに、いつも何かを観察しているような目をしている。
ある日の放課後、庭で一人で月を見上げていた彼女に声をかけた。
「ヴィオレッタさん、夕食は?」
「……先生こそ」
「今から行くところです、一緒に行きますか」
「……はい」
食堂への道を二人で歩きながら、ヴィオレッタが静かに言った。
「先生は、不思議な方ですね」
「そうですか?」
「……はい。所作が美しいのに、どこか緊張している。いつも何かを隠しているような……」
心臓が止まりそうになった。
「……何を隠しているように見えますか?」
「わかりません。でも……嘘をついている人の目ではない。何か、必死に守っているものがあるような」
紫の目が、静かに僕を見ていた。
「……ヴィオレッタさんは、鋭いですね」
「辺境で育ちましたから。人を見る目だけは鍛えられました」
少しの間があって、
「……秘密があっても、いいと思います。私にも、あるから」
それだけ言って、ヴィオレッタは歩き続けた。
――この人は、知っているのかもしれない。でも、黙っていてくれている。
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第11話「生徒会長の宣戦布告」
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ナタリア・リンドグレンが僕の部屋を訪ねてきたのは、夜の九時過ぎだった。
「夜分に失礼します、アリス先生。少々お時間よろしいですか」
宰相家の娘、生徒会長。常に完璧な微笑みを浮かべる、この学院で最も抜け目のない生徒。
「……どうぞ」
入室したナタリアが、椅子に座りながら言った。
「単刀直入に申し上げます。先生に関する、ある噂を耳にしました」
「……噂、ですか」
「ヴァンホルト公爵家の令息が学院に関わっているという話。まあ、真偽はともかく」
僕は表情を変えないように全神経を集中させた。
「それが私に何か関係が?」
「いいえ、直接は。ただ、私はこの学院の秩序を守る立場。もし何か問題があれば、対処しなければなりません」
ナタリアが微笑んだ。美しい笑顔だが、目は笑っていない。
「ただ、先生が素晴らしい指導者であることも事実。……私は問題を見つけにきたのではなく、提案しに来たのです」
「提案、とは?」
「私の個人レッスンを引き受けてください。週二回、一時間。そうすれば、余計なことを調べる時間もなくなります」
これは脅迫か、取引か。
「……わかりました」
ナタリアが満足そうに立ち上がった。
「よろしくお願いします、先生。楽しみにしています」
扉が閉まった後、僕は深く息を吐いた。
――策士め。
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第12話「秘密の個人授業」
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ナタリアとの個人レッスンは、しかし想定と全く違う方向に進んだ。
「先生、歓待作法の第七項について質問があります」
真剣な目で質問してくる。脅迫をしてきたはずの令嬢が、ただただ真剣に学んでいる。
「……ナタリアさん、昨日の件は」
「昨日の件? ああ、あれは私の不手際でした。変な言い方をしてしまって」
あっさり言った。
「……脅しではなかったんですか」
「まさか。私はただ、先生との時間を確保したかっただけです」
ナタリアが少し頬を染めた。
「皆が先生の話ばかりするから……私も個人的に教えていただきたくなって。でも直接そう言えなくて、変な回りくどい言い方を」
――策士ではなく、単純に、恥ずかしかっただけ?
「そう、でしたか」
「……笑いますか? 宰相家の娘が、こんなことで緊張するなんて」
「笑いませんよ。素直に言ってくれた方が嬉しかったですけれど」
ナタリアがさらに頬を赤くして、資料に目を落とした。
「……次からは、素直に言います」
この人も、ちゃんと普通の令嬢なのだ、と気づいた瞬間だった。
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第13話「姉が来た」
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最悪のタイミングで、エレオノーラ学院長が視察にやってきた。
「皆さん、本日は授業を見学させていただきます」
教室の後ろで腕を組んで見守る姉。その目が時々、僕に向いて細くなる。あれは「面白いことになっているわね」という目だ。
授業は順調に進んだ。セラフィーナの優雅な動き、エミリアの力強い所作、リリアの一生懸命な姿、マリアンナの完璧な笑顔……
「アリス先生は本当に素晴らしい先生ですね」
授業後、エレオノーラが満足そうに言った。生徒たちの前で。
「あ、ありがとうございます、学院長」
「生徒の皆さん、アリス先生を大切にしてあげてくださいね。この先生、実は私の……」
――止まれ止まれ止まれ!
「大切な弟子ですから!」
姉がニコニコしながらそう言い換えた。僕の背中に冷や汗が流れた。
生徒たちが「素敵な関係ですね」と笑顔で言う横で、姉が耳打ちした。
「生徒たちに随分懐かれているじゃない。ふふ、予想以上ね」
「笑い事ではありません」
「あらあら、もう十人全員に好かれているのに、自覚がないの? かわいいわね、アルフレッド」
「聞こえます!!」
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第14話「嵐の前の給仕大会」
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学院恒例の学内給仕コンクールが開催されることになった。生徒全員が技術を披露し、採点を受ける。採点者として僕も加わる。
前日の夜、廊下を歩いていると、あちこちの部屋から練習する気配がした。
ロザリンドの部屋からは「一、二、三……」と動きを確認する声。
コーデリアの部屋からは「こっちに置いて、それで……あっ落とした!」という音。
マリアンナの部屋は静かだが、明かりがついている。
全員、必死だ。
翌日のコンクールは圧巻だった。セラフィーナの完璧な動き、ソフィアの温かみのある接客、ユリアの正確さ、エミリアの力強さ……そしてロザリンドが、誰より流れるような動きを見せた。
「ロザリンド・ミルテ、一位」
採点が読み上げられた瞬間、ロザリンドが口を押さえた。
「……え、え……?」
次の瞬間、泣き出した。
他の生徒たちが拍手する中、コーデリアが「おめでとう!」と抱きつき、エミリアが「次は私が一位を取る!」と宣言し、マリアンナが「……今回は、ね」とそっぽを向いた。
僕はその光景を見ながら、何か温かいものが胸に広がるのを感じた。
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第15話「お風呂場の大惨事」
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最大の危機は、まったく予想していない形でやってきた。
学院には女性専用の大浴場がある。講師は別の小さな浴室を使うはずだった。しかしその日に限って、小浴室が修繕中だった。
エレオノーラからの書き置きには「緊急なので大浴場の端の仕切り付き個室を使ってください。鍵がかかります」と書いてあった。
個室があるなら問題ない。そう思って大浴場に向かうと、なぜか今日に限って全員が早風呂の日で、脱衣所で鉢合わせた。
「あっ、アリス先生!」
「先生も今からですか?」
リリアとコーデリアが笑顔で手を振っている。
「あ、は、はい……」
――個室に直行だ。絶対に個室に直行だ。
「先生、背中流しましょうか?」
コーデリアの無邪気な一言に、僕の精神が崩壊しかけた。
「遠慮します! 個室を使いますので!!」
全力で個室に逃げ込み、内側からしっかり鍵をかけた。心拍数は最高値を更新していた。
扉の向こうからリリアの「先生、恥ずかしがり屋なんですね、かわいい」という声が聞こえて、それどころじゃないんだよと心の中で叫んだ。
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第16話「君の笑顔の理由」
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セラフィーナが廊下で一人、窓の外を見ていた。いつもの完璧な笑顔がなく、どこか遠い目をしている。
「……セラフィーナさん、どうかしましたか」
声をかけると、彼女は少し驚いた後、いつもの笑顔を作った。
「何でもないです、先生」
――その笑顔は、さっき練習させた”作った笑顔”だ。
「……無理しなくてもいいですよ」
セラフィーナが目を見開いた。
「先生は……本当によく見ていますね」
「授業中、ずっと見ていますから」
少しの間があって、セラフィーナが静かに言った。
「……婚約の話が、進みそうなんです。お相手は悪い方ではないのですが、会ったこともなくて」
「不安ですか」
「不安というより……何のためにここで学んでいるんだろう、と。花嫁修業の一環なのか、自分のためなのか」
僕はしばらく考えた。
「どちらでもいいんじゃないですか。ここで学んだことは、どちらの目的にも役立つ。でも一番は、セラフィーナさん自身が”できた”と思えることが、自信になると思います」
「……先生は、いつも核心をついてきますね」
セラフィーナが今度は本当の笑顔を見せた。
「ありがとうございます、アリス先生」
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第17話「ユリアの秘密の本」
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図書室でユリアと話していた時、彼女の鞄から一冊の本が落ちた。
「あ!」
ユリアが慌てて拾おうとしたが、タイトルが目に入ってしまった。
「……『男性の見分け方・骨格から読む性別の違い』」
ユリアが石になった。僕も石になった。
「……先生、これは」
「研究ですか、学術的な」
「そ、そうです!! 純粋な知識欲で!!」
顔が真っ赤なユリアが本を鞄の奥深くにしまった。
「……先生のことを疑っているわけでは、決して!!」
――疑っているじゃないですか。
「ユリアさん」
「は、はい!」
「仮に……何か秘密を持った人物を知っていたとして、あなたならどうしますか」
ユリアが静かに考えた後、眼鏡を押し上げて言った。
「……その人が信頼できる人で、誰かを傷つけていないなら。私は何も言いません」
真直ぐな目だった。
「本を読むのは純粋な知識欲です。でも、それを誰かへの武器には使いません」
――やっぱり、この人は知っている。
「……ユリアさんは、いい人ですね」
「先生が、いい先生だからです」
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第18話「エミリアの挑戦状、再び」
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「先生! また勝負してください!!」
エミリアが再び突進してきた。
「今度こそ先生に勝ちます!」
以前より明らかに上達している。動きに無駄がなくなり、流れが出てきた。
「では、応用勝負にしましょう」
二人で実習室に入り、今度は即興の設定で給仕をした。「突然の来客、食器が一つ足りない、でも笑顔で対応する」という状況をお互いにこなす。
エミリアは焦りながらも機転を利かせた。スムーズではないが、一生懸命さが伝わる。
「……どうでした?」
「合格点以上です」
「本当ですか!? ……先生は?」
「見ていてください」
同じ状況を僕がやると、エミリアが目を見張った。
「……なんで焦らないんですか」
「慣れです。緊急事態も、平常心でいるための練習をしてきたから」
エミリアがしばらく考えて、
「……先生って、どんな子供時代だったんですか」
予想外の質問だった。
「……変わった子供時代でした」
「教えてくれますか、いつか」
「……いつか」
エミリアが満足そうに笑い、「今日も負けた、でも楽しかった!」と言って帰っていった。
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第19話「ヴィオレッタの庭」
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ヴィオレッタが「先生に見せたい場所がある」と言った。
連れて行かれたのは、学院の奥にある小さな温室だった。誰も使っていない、ガラスの庭。
「辺境では、こういう庭が多くて」
ヴィオレッタが静かに言った。
「夜空の下、一人でいる時間が好きで。ここも、一人でいるのに丁度いいと思って見つけました」
温室の中には、誰かが以前育てていたらしい花が残っていた。少し野性的に伸びた白い花。
「先生にだけ教えました」
ヴィオレッタが振り返って、珍しく少し笑った。
「先生も、一人でいたい時があるでしょう。ここを使っていいですよ」
「……ありがとう、ヴィオレッタさん」
「私のことは、ヴィオレッタで」
月明かりが温室のガラスを通して差し込む中、二人でしばらく花を眺めた。言葉は少なくてよかった。
ヴィオレッタと一緒にいると、不思議と何も隠さなくていい気がした。
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第20話「マリアンナが泣いた夜」
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夜、学院の廊下を歩いていると、窓際で小さな背中が震えているのが見えた。
マリアンナだった。
泣いていた。
声をかけようか迷ったが、踏み出してしまった。
「……マリアンナさん」
彼女が振り返った。目が赤い。しかし、すぐに表情を整えようとした。
「……見ないでください」
「見てしまいました」
「……帰ってください」
「一人で泣いているのを置いて帰れません」
マリアンナが唇を噛んだ。
「……父から手紙が来て。結婚の話が、一方的に決まっていて……私には、何も聞かれなくて」
淡々と言ったが、声が少し揺れた。
僕は隣に座った。何も言わなかった。
マリアンナがまた泣き始めて、しばらく泣いて、落ち着いた頃に言った。
「……こんな顔、見られたくなかった」
「誰でも泣くことがありますよ」
「……先生は?」
「あります」
「……いつ?」
「姉に、理不尽なことをされた時」
マリアンナがふっと笑った。
「先生の姉上、大変そうですね」
「非常に」
二人でひっそりと笑った夜だった。
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第21話「ソフィアのお願い」
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ソフィアから呼び出されたのは、穏やかな午後だった。
「アリス、一つお願いがあって」
「何でしょう」
「……婚約者に会う前に、正式な場でのテーブルマナーをもう一度見てほしいのです。私の動きを」
「もちろんです」
ソフィアのテーブルマナーを見た。完璧だった。
「……どこか問題がありましたか」
「何もありません。満点です」
「それでは、なぜ?」
ソフィアが少し困った顔をした。
「……誰かに見てもらいたかっただけ、かもしれません。不安で」
「大丈夫ですよ、絶対に」
「……アリスが言うなら、信じます」
ソフィアが微笑んだ。柔らかく、でも少しだけ寂しそうな笑顔。
「アリス、もし私が婚約して屋敷に行っても……たまに会えますか」
「……会えますよ、きっと」
「よかった」
ソフィアが安心したように息をついた。
――この人と引き離されたくないな、と思ったのは、初めての気持ちだった。
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第22話「暴露の予感」
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三ヶ月が経った。
ある朝、ナタリアが僕のところに来た。その表情は、普段と少し違った。
「先生……昨日、先生の部屋の前で声を聞いてしまいました。エレオノーラ学院長との話を」
心臓が止まった。
「……何を」
「“アルフレッド”という名前を」
沈黙。
「……私は、誰にも言いません」
ナタリアが静かに言った。
「でも……正直に教えてください。先生は……男性、ですか」
逃げ場はない。僕は目を閉じて、開いた。
「……はい」
ナタリアがしばらく黙った後、
「……そうでしたか」
表情が変わらない。
「ナタリアさん、怒っていますか」
「いいえ。……ただ、少し、悔しい」
「悔しい?」
「先生のことを、“女性の先生として”好きになってしまっていたから。それが……少し、恥ずかしくて。でも同時に、この気持ちが何も変わらないことも、わかって」
ナタリアが微かに頬を染めた。
「……先生のことが好きです。それは、変わりません」
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第23話「全員にバレました」
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翌日。
全員が教室に集まっていた。
僕が入ると、十人全員が立っていた。
……表情が、それぞれ違う。
セラフィーナは静かに微笑んでいる。リリアは目が潤んでいる。エミリアは腕を組んで悔しそうだ。マリアンナは横を向いている。ソフィアは穏やかだ。ユリアは眼鏡を押し上げて視線を外している。ロザリンドは落ち着いている。コーデリアは今にも泣きそう。ヴィオレッタは月のような目でこちらを見ている。ナタリアは昨日の話の続きのような顔をしている。
「……ナタリアが話してくれました」
セラフィーナが口を開いた。
「私たちに隠し続けてくれていたこと。でも……教えてほしいと思って」
「……怒っていますか」
全員が首を振った。
「怒るどころか」エミリアが腕をほどいた。「先生はずっと、本気で教えてくれてた。それは本物じゃないですか」
「……男性だから、近くにいてはいけなかった?」リリアが言った。「それは、ないと思います」
「作法を教えてくれた先生は、本物の先生です」ロザリンドが静かに言った。
マリアンナがため息をついて横を向いたまま言った。「……泣いているところまで見せてしまったわ。……もう遅いわね」
ヴィオレッタが小さく頷いた。「知っていました」
コーデリアが泣き始めた。「ずっと先生のことが好きだったから、男でも女でも関係ないです!!」
ソフィアが温かい目で言った。「アリス、あなたはいい先生よ。それは変わらない」
ユリアが真面目な顔で「研究通りでした」と言って、すぐ「……冗談です」と付け加えた。
そしてナタリアが微笑んだ。「これから、どうしますか、先生」
僕は、目が熱くなるのを感じた。
「……アルフレッド・ヴァンホルトです。公爵家の長男で、十七歳で、姉に無理やり女装させられてここに来ました。でも……こここで教えたことは、全部本当のことです」
一拍置いて。
「……これからも、先生を続けさせてもらえますか」
十人が、それぞれの笑顔で答えた。
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第24話「僕たちのメイド学院」
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卒業式の日。
学院の庭に白い光が溢れていた。
生徒たちは正装のメイド服を纏い、一人ひとりが壇上でエレオノーラから修了証を受け取った。
壇上の脇で、僕は相変わらず女装姿で立っていた。姉がそれを条件にしたからだ。(「卒業式だけはアリス先生でいてちょうだい」)
「アリス先生、最後に何か一言を」
エレオノーラが笑顔でマイクを渡した。
十人の顔が、こちらを見ていた。
「……皆さんと過ごした三ヶ月は、正直、毎日心臓が止まりそうでした」
笑い声が起きた。
「でも、皆さんがいてくれたから、僕は本当の意味でメイドの仕事の価値を理解できたと思います。作法は道具じゃない。人を大切にする気持ちの形だと」
リリアが泣いていた。コーデリアも泣いていた。ロザリンドは顔をそらしながら目を拭いていた。
「皆さんは一流のメイドになります。でも、それ以上に、誰かを本当に支えられる人になれると、確信しています」
一礼した。
拍手が起きた。
式の後、庭に全員集まって写真を撮った。
セラフィーナが隣に立ち、「また会えますか、先生」と言った。
エミリアが「次会う時は先生の本当の姿で勝負してください」と言った。
マリアンナが「……また、泣いたらどうすればいいの」と小さな声で言った。
ユリアが「先生の本が出たら買います」と真面目に言った。
ロザリンドが「先生に会えてよかったです」とまっすぐに言った。
コーデリアが「また一緒にスコーン作ろう!」と元気に言った。
ヴィオレッタが「温室の花、咲いていましたよ」と静かに言った。
ソフィアが「アリス……アルフレッド、幸せでいてね」と言った。
ナタリアが「続きはまた、別の場所で」と微笑んだ。
リリアが「大好きです!」と言って抱きついてきた。
――女装で抱きつかれると、相変わらず心臓に悪い。
でも。
この十人と過ごした日々は、一生忘れないと思った。
空は青く、風は柔らかく、庭の白い花が揺れていた。
「アルフレッド、どうだった? 楽しかったでしょ?」
隣に立った姉が、得意げに言った。
「……最高でした」
素直に答えると、姉が「まあ!」と目を輝かせた。
「それじゃあ、第二期もよろしくね?」
「………」
「上級科があるのよ。今度は花嫁修業の授業もあって」
「絶対に嫌です」
「アルフレッドが教えるのよ、もちろん女装で」
「……姉上、本気ですか」
エレオノーラが微笑んだ。一番危険な、あの笑顔で。
「もちろんよ。 ──第二幕の始まりね、アリス先生♪」
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──第1期 完──
「令嬢たちのメイド学院 〜僕が女装メイド講師になった理由〜」
全24話
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あとがき
アルフレッドは第2期でも懲りずに女装を続けます。
ヒロイン10人はさらに距離を縮めてきます。
姉は一切反省しません。
またいつかお会いしましょう。
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