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夜明け前、沈黙の中で息を知る  作者: 南 飛香
2/2

壊れた僕を、呼ぶ声があった

豪 (ごう)

凪 (なぎ)

6時間目の終わりのチャイムがなり、神楽は片付けを始めた。片付けをしていた神楽の耳に近くで話していた女子生徒の話が聞こえてきた。

「最近、ぱんだカラオケの近くで変な人がうろついてるらしいよ。沙妃も声かけられたみたいでめっちゃ怖くない?」

少しだけ神楽の手が止まった。そう、この情報は神楽のいる華月でも話題になっている。しかし、女子生徒に話しかけるほど神楽は仲良くはなかったため、もう一度片付けを再開した。クラスメイト達は先生が来るまで席を立ち、好き勝手に話したり携帯を触ったりしていた。神楽は友達という存在はおらず、ひとり席に座っていた。そこに、隣のクラスの学年的にも1軍と呼ばれている陽キャの人たちが2,3人で神楽の席まで歩いてきた。神楽はぼーっと考えごとをしており近くまできていた男子生徒達に気づいていなかった。そのことに腹を立てたひとりが神楽の机を足で蹴飛ばした。すぐに神楽は現実世界に戻ってきて、状況を理解しようとした。周りのクラスメイトたちは神楽をみて驚いてみている。神楽自身も目の前の男子生徒たちに見覚えがなく、何事だろうと他人事のように思っていた。すると突然ひとりの男子生徒が神楽の胸ぐらを掴んで叫んだ。

「お前が、勇哉のことぼこした立花だろ。あんま調子のってると痛い目みるって分からしてやるよ。」

”勇哉”その名前に一ミリも聞き覚えがなかったが、すぐに誰だが神楽には分かった。

ーーこの日の朝、やけに神楽は心がむずむずしており誰かを傷つけたくてたまらなかった。その欲求を殺しながら普通を演じながら登校していると、女子生徒がひとりの男に言い寄られていた。その様子を見ていた神楽はちょうど良い獲物を見つけたライオンのように足音を立てず静かにちかよっていた。神楽の顔には笑みがこぼれていた。

「ださいことしてんなよ。女の子に嫌われるよお兄さん。」

いやみたらしく言うと、当たり前のように男子生徒は神楽の元にやってきた。

「あ?誰だお前。」

そう言いながら圧をかけるように神楽の胸ぐらを掴んだ。

神楽はパーソナルスペースが広く、人に近づかれるのが大嫌いだったため、顔を寄せてこようとした瞬間男子生徒の顔にグーパンチを食らわせた。突然殴られた男子生徒はよろめいたが、それ以上の怒りで神楽に向かい拳を突き立てた。しかし神楽はそれを華麗に避け、男子生徒のお腹を殴った。あまりの痛さに地面に倒れ込んだ男子生徒に追い打ちをかけるように頭を何度も何度も殴り、神楽の制服は血に染まっていた。時間を忘れるぐらい神楽は新しいおもちゃを買ってもらったように楽しんでいた。ふぅと息を吐くときには、男子生徒の意識は無くなっていた。最後に持っていた小型ナイフで顔に浅い傷をつくり、その場を後にした。

その殴った男子生徒が勇哉と呼ばれている人だったのだろうと気づいた。そんなことより、なぜ自分がやったとわかったのだろうとそちらに神楽の意識は向いていたが、すぐさま男子生徒に言い返した。

「やっぱり、あほはやることが同じなんだね。胸ぐら掴む以外にやることないの?」

半笑いになりながら言った神楽に胸ぐらを掴んでいた男子生徒が神楽を突き飛ばした。しかし、神楽は床に倒れ込むこともなかった。そのこともまた男子生徒たちに火をつけ大人数で神楽に向かってきた。そんな状況になっても神楽はなぜか楽しそうにしていた。楽しそうに人を殴り、蹴りをしていると、担任の先生がやってき、神楽と男子生徒の喧嘩を止めた。そこで神楽は冷静になり、自分が何をしてしまったのか全て理解した。別室に連れて行かれて事情を先生に話した。しかし、男子生徒3人を病院送りにしてしまったのと、神楽が楽しそうに殴っているのをクラスメイトに見られていたため、神楽は停学処分をくらってしまう。まぁ、停学処分ぐらいなら軽いものだと考えていたため、あまり気にしてはいなかった。

「親御さんに連絡して、迎えに来てもらいます。」

担任の先生が神楽に告げるが、神楽は分かっていた。誰も迎えには来ないことを。神楽は父・母・姉・妹・弟の6人家族だ。しかし、父親は仕事人間であまり家庭のことは気にしてはおらず、母親にほとんど任せていた。母親は神楽が少年院にいった事件から神楽を恐れ、ほぼ関わらない生活を送っていた。だからこそ、母親は迎えにはこないし、父親はもってのほか。どれだけの時間がたったのだろう。電話をすると教室を出た担任の先生は帰ってはこない。そんなときふと思い出した。そうだった、淺緋から連絡があったことを。神楽は教室にある時計をみると時刻は16時30分。もう少しで集会が始まってしまうと今のこの状況より集会に遅れてしまうことに焦りを感じた神楽は、こっそりと教室を出た。教室から出てきた神楽を見て、放課後まで残っていた生徒たちがこそこそと話し始めた。しかし、悪口を言われようが神楽には届かなかった。めずらしく、拠点まで走ってむかうと、入り口には豪と凪が立っていた。

「おい神楽、遅いじゃねぇか。」

豪が神楽の姿を見て、台詞を吐いた。

「すみません。」

とても申し訳なさそうには見えなかったが、豪も凪も神楽の特性を知っていたため、何も言わなかった。

「早くいきな。」

凪が優しく神楽に言う。神楽は頭を少し下げ、奥へと向かった。たくさんの少年、少女がいるが神楽は誰かを探しているように首を左右に動かしていた。なかなか神楽の探している人物は見つからなかったが、そのとき

「神楽!」

誰かが神楽の名前を呼んだ。それは神楽が探していた人物の声だった。すぐさま神楽は声が聞こえたほうを見ると、その人物は笑顔で神楽を見ていた。

「積先輩。」

そこにいたのは淺緋だった。淺緋は神楽を呼びよせ話始めた。

「学校終わって何してたんだ?喧嘩してたんじゃないだろうな?」

淺緋は少し怒ったトーンで言った。あった出来事を話すと淺緋は爆笑していたが、笑い終わるとその顔には心配してそうは顔をみせた。

「あんま、心配させんなよ。」

神楽に伝えるが、あまり神楽には伝わらなかった。なにがいけなかったのか神楽は理解していなかったが返事だけはした。淺緋も神楽が理解していないことは分かっていたが、伝えることだけはやると出会った頃から変わらず決めていた。

「もう少しでリーダー来るからおとなしくな。」

淺緋は神楽の頭を撫で、どこかへ行ってしまった。

その背中を見ていた神楽は心がぞわぞわしていた。この気持ちがまだなにかは理解していなかった。

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