労働安全衛生法 第6章 労働者の就業に当たっての措置 (安全衛生教育)
短いです。
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労働安全衛生法
第6章 労働者の就業に当たっての措置
(安全衛生教育)
第59条 事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。
2 前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する。
3 事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。
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次の日の朝、俺は指定された住所に行くと渋谷ダンジョンに面した高層ビルの一角がオフィスのようだ。冒険者の事務所にしては…適してないような気もするが…幾つもの企業が入っているビルのエレベーターに乗ってオフィスへと向かう。
「おはようございます」
オフィスは静かで誰にもいないように見える。席には書類やパソコンがあるので社員がいるのは間違いないと思うが…もしかして、みんな渋谷ダンジョンに潜っているのだろうか。
「やぁ。来てくれたんだね」
「うおぉ!?」
後ろから声をかけられ振り向くとナタリヤが立っていた。ニヤニヤとしている。
「ああ…デルベドワ社長…驚かせないでくださいよ」
「ナタリヤでいいよ」
「ええと…ナタリヤ社長…他の社員さんは?」
「ああ。今は業務中だからね。今日の終わりに歓迎会するから。その時に会えるよ」
ナタリヤはパソコンの準備をしている。ちらっとこちらを見ると興味深そうに喋りかける。
「ノリ。昨日と違って大人しいね?」
「昨日は酔ってたんで…」
「ダンジョンは禁酒だからね」
そりゃそうだとは思うが…もしかして、思ったより渋谷ダンジョンって結構、お堅いところなのだろうか?ナタリヤがパソコンの画面を見せる。
「さて、雇い入れ時の教育を始めるわ」
「雇い入れ時教育やるの?」
「そりゃ、法律で決められてるからね」
それからは普通の企業でやるような話をされる。なんでこんなことをしなきゃいけないんだとあくびを押し殺しつつ聞くしかなかった。
「つまらなさそうだね?さて、そろそろ面白い話をしようか」
「面白い話すか?」
ナタリヤは頷くとパソコンの画面を指さす。画面には渋谷ダンジョンの地図が映し出されている。
「さて。渋谷ダンジョンってのは何かわかる?」
「5年前に突如として渋谷の一角に出現したダンジョン…すよね?…最初は自衛隊とかが対処して、最近、民間へのダンジョン開拓が委託され始めたって話を聞いたんすけど…」
「そうそう。私達はそこに参入しているって訳。おそらくだけど…ノリってダンジョン労働者たちが無秩序にダンジョンに行ってると思ってるでしょ?」
無秩序に?パーティーとか組んでいるだろうが…ナタリヤの言いたいことはよく分からない。
「ダンジョン労働者を有する私たちのような企業は国によってランク付けされていてそれによって受けれる仕事が決まってるの。あと、入札がある」
「入札?」
「そう。国が公共事業としてダンジョン開拓の一部を依頼として提示して複数の企業に競い合わせる仕組み」
ワクワクさ加減を失わせるのが得意なようだ。政府は。がんじがらめに縛られたようなダンジョン探索。少し気落ちはするが…辞めたくはない。それでも…あのブラック企業に戻るよりはマシなのだ。
「おーけー?」
ナタリヤが首を傾げながらこちらを見つめる。その瞳に吸い込まれるように俺は立ち上がる。
「…思ったより…めんどそうだがやらせてくれ。俺は…冒険者になりたいんだ」
俺の言葉にナタリヤは微笑む。
「ええ。一緒に冒険をしましょう。ノリ。あなたも栄えあるダンジョン労働者の仲間入りです」
……なったのはいいけどこの後、どうするんだろうか。
俺が黙っているとナタリヤはパソコンをしまいつつ俺の方を見る。
「次は技能講習ですよ」
「技能講習?」
「はい。武器の」
俺の人生が少しだけ非日常感が増した。
お読みいただきありがとうございました!