第二話 アコガレ
「アイルさんに行くなって言われてたけど、やっぱり気になるな~。俺が来たのは北側だったしやっぱ探索はしたいよな。」
俺は、アイルさんの言いつけを破り、南の森を歩いていた。西とは違い、日光が程よく当たり、とても気持ちがよかった。西のほうはジメジメしすぎて長くはいたくない気持ち悪さがあった。
「これから散歩するときは南寄りに歩いてみようかな~。そのほうが気持ちいいし!」
少し歩いていくと、小屋が見えてきた。
「こんなところに何であるんだ?でも休憩にはちょうどよさそうじゃん!ラッキーラッキー」
かれこれ体感二時間ほど歩いていたので足は少し悲鳴を上げていた。扉の前まで来てドアノブに手をかける。その時、
「…か…ちか…わたした…すすめ」
小屋の中で声が聞こえた。その声は間違いなく、
「アイルさん?」
聞きなれた声が聞こえてしまい、戸惑ってしまった。ここでバレたらまずいので離れるべきだった。だがアイルさんが話していることについて気になった。気になってしまった。声の聞こえるほうに近づき、そして聞いてしまった
「父さん母さん、私が必ず必ず…神を殺します!」
(神を殺す?何を言ってるんだアイルさんは)
「そして、人が人として生きられるようにしてみせます。だから見ていてください。」
(人が人として生きる?そんなの当たり前じゃん。何を言って…)
「何者ですか!」
急に殺気を感じ取り、鳥肌が立つ。そしてアイルはどんどんこっちに近づいてくる。
(なんでバレた!音も何も出してなかったのに。ああ…ちゃんと謝らないと!)
「ごめんな「その命頂戴する!」」
火の玉がアイルに向かっていく。その火は小屋に燃え広がり、あっという間にアイルの周りを飲み込んだ。一瞬の出来事に体が強張ってしまい動けなかった。
「ん?なんだこの小僧」
その火の玉の打ち込んだとみられる男に見つかってしまった。
「目撃者か。めんどくせえな」
逃げなければ殺されると思いながらも体は動かない。腰が抜けているのだろう。目の前に見える死から逃れられない。こういう時は走馬灯とやらが見えるらしいが、俺はアイルと出会う二年前の記憶はもっていない。持っているものというと、前世の二ホンで過ごしていた時間を少しだけ覚えているくらいだ。そんなものは走馬灯とやらには乗るわけないのだが、なぜだろう
「サンドイッチが食べたかったな…」
そうささやいた
その時、火の中から、
「神を敬う哀れな盲目者め。自分の神をけなされたというだけで私の命を狙いに来るのですか。それほどに人の命というものは軽いようですね。あなたたちにとっては。」
アイルが出てきた。なんで生きてんの。
「なぜ生きている!」
「あの程度の神術など対処は簡単ですよ。弾速が遅いので避けられます。範囲も狭い。小屋に燃え広がっても素早くここを出ればいい。その程度神術では私を殺せませんよ。残念でしたねぇ。」
「黙れ!この反逆者め!」
(反逆者?アイルさんが)
「懐かしい呼び名ですね。反逆者ですか。くくく。こうは考えないのでしょうか。神こそ世界の反逆者だと。」
「貴様ああああ!」
「あの愚神を敬うとは情けない人ですね。愚神のささやきの先は地獄ですのに」
再び、火の玉がアイルに向かって飛んでいく。だが、アイルは物怖じせず、前へと進む。火の玉を左へ右へ避けて男のほうへ進む。
「来るなあああああ」
その時にはもう、男の首から血が流れていった。一瞬だった。俺は何を見ていたのだろうか。
「よりによって今日ですか。レン」
こっちに近づいてくる。でもなぜだろう。殺されると思うよりも、その力に、その心に
「あこがれ」を持ってしまった