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【再改稿版】骨の十字架  作者: 園村マリノ
第五章

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EPILOGUE-茶織-

 カフェ〈DIAMOND(ダイヤモンド)〉。

 買い物帰りの茶織がアールグレイで一息吐いていると、左隣の高校生の男女四人組の会話が耳に入ってきた。


「[RED-DEAD]活動休止だってね」


 その響きからは、ショックよりも単なる好奇心の方が強く感じられた。


「TAROがああなっちゃったんじゃ、仕方ないよな」


「つーか、大怪我負ってなくてもどのみちアウトだったんじゃない? 人として終わってる」


「他のメンバーどうなるんだろな」


「まあ、KILIK(キリク)は歌唱力高いからソロでも活動出来るでしょ」


 最初に声を上げた女子生徒が、考えながら答えてゆく。


KEN(ケン)はバラエティ番組でのトークが芸人より面白いって前から評判で、既に出演オファー殺到してるみたい。YOICHI(ヨーイチ)は元々俳優志望で、売れる前は劇団入ってたらしいから、そっちに転身するかもって」


「まあ、ぶっちゃけ天罰だわな」今まで静かだった眼鏡の男子生徒が言い切った。「アンチを中心に、死んで償うべきだとかって言ってる人間もいるけどさ、ある意味では死ぬよりも悲惨な罰を受けたよな。まさに生き地獄ってやつ?」


 ──死ぬよりも悲惨な罰。生き地獄。


 一つの考えが茶織の脳裏を(よぎ)った。ピエロには、実は最初から野村を殺す気はなかったのではないだろうか。命を奪ってしまえばそれで終わりだが、生かしたまま、この先何十年も心身共にダメージ──それこそまさに生き地獄──を味わわせてやれば、最高の復讐になる……。


 ──考え過ぎかしらね。




「サムディ、いる?」


 帰宅後、自室で龍と那由多にトークアプリでメッセージを送信した茶織は、ヴードゥーの精霊を呼んだ。


「ほいほい登場~っ! およっ、リュウとナユタに何を送──っぶ!」


「勝手に覗くな」


「見事な裏拳でした……イテテテッ」サムディは顔をさすりながら茶織の正面に移動し、畳の上に胡座を掻いた。「で、どしたの」


「綾兄を探し出したいの。何もしないで、指咥えて帰りを待っているだけっていうのは嫌なのよ」


「ふむふむ」サムディは二回頷いた。


「まずはピエロの時と同じように、情報を集めようと思うの。人外の存在で、綾兄を知っている誰かがいるかもしれない」


「なるへそね~」


「それで、その……」茶織は小さく咳払いした。「あんたにも、改めて協力してほしいのよ。自分勝手だって事はわかってるわ。あんたが気持ち悪くてイラっとするとはいえ、散々ぞんざいに扱ってきたし、その──」


「モチのロン!」サムディはニカッと笑った。


「……有難う」茶織はボソリと言った。


「ああそっか、それでリュウとナユタにも連絡入れたのねっ」


「ええ。それと、ドロッセルマイヤーとかいう奴についても調べようと思う」


 バロン・サムディとの融合が解け気絶していた間に、茶織は奇妙な夢を見た。背が低く痩せており、右目に眼帯をした男が、自殺後に成仏出来ず彷徨っていた少年の霊を唆し、ピエロの化け物へと変貌させたのだ。


「ねえ、パン食べたくない?」茶織は立ち上がった。「これから〈きくちパン〉に行こうと思うんだけど」


「食べたいですっ!」サムディも立ち上がると小躍りした。


「わかっているとは思うけど──」


召喚(よば)れない限りは勝手に出て来るな、でしょ」


「よろしい」


「へーい。んじゃ」


 サムディが消えると、茶織はトークアプリに目をやった。どちらもまだ既読マークは付いていない。

 そういえば、自分の血で汚してしまった龍のジーンズ代をまだ弁償出来ていない。あの日、帰り際にその話をしたら断られたが、このまま何もしないのは気が引ける。今度会った時、無理矢理にでも万札を握らせよう。

 那由多は、次はゆっくりお茶がしたいなどと言っていた。どんな店に行くつもりなのだろうか。アルバと緋雨も一緒なら賑やかになりそうだ。

 共に戦った彼らとの再会を楽しみにしている自分に気付き、茶織は驚いた。


 ──でもまあ、悪くないわね。


 茶織の顔に自然と笑みが浮かんだ。龍が見れば気付いただろう──その表情は、茶織がバロン・サムディと融合していた時によく見せていた、無邪気ささえ感じられるものと同じだという事に。

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