01_夢
僕は空中にいた。
飛んでいるのかと思ったが翼が生えているわけでも、何か乗り物に乗っている訳でもない。
それにもかかわらず、上から何かを見ていた。
眼下には怪しげなローブを来た高校生の男女が5人くらい。
よく見ると、ローブの下には近所の高校の制服。彼らの中の1人と目が合う。
彼女はこちらを指さして口をパクパクと動かしているが、声が聞こえない。
瞬間、急な浮遊感に襲われた。同時にふわりとスカートが揺れる。
…スカート?なんで僕がスカートを履いているんだ?
僕の性別は男だ。女装趣味もない健全な男子中学生だ。
しかしそんなことを考えている間もなく、浮遊感は増していく。
為す術もなく瞬く間に地面が近づく。
そこで僕の右手に何かが握られていることに気づいた。
これは…杖?
なんとかしようと身体中をまさぐるが、やたらとふわふわしたレースがあしらわれた服だということ以外何もわからないし、使えそうなものも出てこない。
やばい__
僕はこんなところで訳の分からないまま死んでしまうのだろうか。
そんな考えがが脳裏に浮かび、もういっその事覚悟を決めてこれまでの人生の振り帰りでもしてやろうかと思った。
しかしこれといって思い浮かぶことも無く、何も成していなさすぎる自分に嫌気がさして目をつぶった。
瞬間身体中に衝撃が走る。
痛い。
でもあの高さから落ちたにしては痛くない。
恐る恐る目を開けてみると、そこは自分の部屋の見慣れた天井。
有り体にいうと、「夢オチ」というやつだ。
身体に走った痛みは、高さ50センチ程のベッドから落ちた痛みだった。
しかしなかなかリアルな夢だったな。
落ちた拍子に床にぶつけた右肩を擦りながら考える。
元々僕はあまり寝ている時に夢をみない体質で、見たとしてもその内容を覚えていないことの方が多い。
しかし強く印象に残った杖とフリフリの服…
何故か僕が夢の中で着ていたものだ。
ふと小さい頃姉と並んで観たアニメを連想する。
そうだ。あれはまるで魔法少女_
所詮ただの夢だ。さっさと忘れよう。
先程浮かんだ考えを払拭するためにテレビをつけると、ちょうど星座占いの時間だった。
そういえば最近クラスの女子達の間では占いが大流行らしい。
教室で休み時間の度に騒いでいるのを見かける。
僕はそんな不確かなものなんて信じない。
どうせ、誰にでも当てはまるようなことをさも自分にしか当てはまってないように感じる心理を利用しているだけに過ぎない。
かと言ってわざわざチャンネルを変える理由もないためそのまま聞いていると、一番最初に僕の星座が読み上げられた。
星の運勢を読み上げるお姉さんによると、今日の僕の運勢は最高らしい。
そのままテレビに表示された文字を目で追う。
「運命的な出会いがあるかも」なんて。
まあ別に信じては無いけど。
ついでにラッキーアイテムは杖だった。