第十八話 エルフの村からの旅立ち
「エルフの秘宝の代わりに、DIY工房にあるDIY設備をいただけませんか?」
俺がそう切り出すと、リリアーナは目を丸くした。
「ええ、まあ、それくらいでしたらお安い御用ですが……」
たき火の炎がパチパチと音を立て、辺りを穏やかに照らしている。その赤い光がリリアーナの表情をより神秘的に映し出していた。
「エルフの秘宝に比べると、価値は全く下がってしまいますわよ?」
「いえ、いいんです。俺にとっては、そっちのほうが価値があるので」
俺は笑いながら答えた。
リリアーナは少し戸惑いながらも、微笑みを浮かべた。
「ソータ様の価値観は、やはり異世界のものですわね」
焚き火の光がリリアーナのドレスを優しく照らし、彼女の輪郭が浮かび上がる。静けさの中で、俺はDIY設備の可能性を思い浮かべながら、ふと未来への希望を感じていた。
「結婚の件は、またソータ様がこの村に戻ってきた時に」
※ ※ ※
翌朝、リリアーナと共にDIY工房を訪れた。
広々とした工房の中には、作業台や工具が整然と並べられていた。木の香りが漂い、どこか落ち着く空間だ。
「やっぱり俺はこの雰囲気が合うよな」
俺は作業台を見つめながらショップのウィンドウを開き、『収納』ボタンを押した。
シュウン、と透明な光が走り、作業台とDIYツール一式が目の前から消える。
ウィンドウが表示される。
【登録完了】 - DIY作業台 - DIYツール一式(木製)
「よし、これで準備はバッチリだ!」
リリアーナが少し驚いた様子で俺を見つめている。
「さすがソータ様。やはり、その能力はとても便利ですのね」
「まあ、これが俺の唯一の武器だからな」
俺は照れくさそうに笑いながら答えた。
※ ※ ※
DIY設備を収納した後、エルフの村を旅立つ準備を整えた俺は、村の入り口に立っていた。
「ソータ様、どうかお気をつけて」
リリアーナが目を潤ませながら見送ってくれる。彼女は最後まで優雅で、ほんのり赤い頬がどこか寂しげだった。
その隣には長老が立ち、村の屈強なエルフの男たちや、マンティスから救った母子の姿もあった。
「ソータ殿、あなたの勇気に村は救われました。感謝してもしきれません」
長老が深々と頭を下げる。その言葉に俺は少し照れながらも頷いた。
「みんな、本当にありがとう。助けてくれて感謝してる!」
俺が手を振ると、村の子供たちが「また遊んでね!」と叫びながら手を振り返してくれた。
「これを旅のお供にどうぞ!」
エルフの男たちが大きな袋を差し出してきた。袋の中には、エルフの村人服、村の特産品である乾燥した果実や香ばしい焼きパン、そして手作りの薬草茶が入っていた。
「いや、こんなに? 本当にいいのか?」
「もちろんですとも! 落とし穴を掘った仲間として、我々も誇りを持っております!」
男たちが胸を張りながら笑う。その様子に思わずこちらも笑みがこぼれる。
「がうがう!」
隣でウルフが元気よく吠える。どうやら俺についていくつもりらしい。エルフの子供たちがウルフを撫でながら名残惜しそうに見送っている。
「よし、行こう!」
ウルフの背中を軽く叩きながら、俺は歩き出した。振り返ると、村の人々が手を振り続けている。
※ ※ ※
しばらく歩きながら、ショップの中を確認する。
「ここで一旦おさらいしておこうか」
登録されているアイテムと現在のクルナをチェック。
【登録アイテム一覧】 - スコップ ×8 - 虫取り網 - 釣り糸 ×2 - 釣り針 ×2 - ライター ×2 - 魔石 ×4 - 古代生物の化石 ×2 - 謎の鉱石 ×3 - 炎の魔法石 -魔結晶 -絆創膏 -小石(苔付き) ×2 - 魔力釣り針 - 強化釣り糸 - DIY作業台 - DIYツール一式(木製) -鉄板 -鉄鉱石 -木材 -エルフの村人服 -エルフの乾燥果実 -赤い木のみ -エルフの焼きパン -エルフの薬草茶
【現在の所持クルナ】
25,000クルナ
「これだけあれば、しばらくは困らなさそうだな」
ウルフが隣で「クゥーン」と鳴きながら歩調を合わせてくれる。
「あー、エルフの村のふかふかベッド、最高だったなぁ。今度こそショップで布団買おう……」
俺は軽く笑いながら、空を見上げた。
「クソ女神ファイナンスへの借金返済まで、あと29億9998万7500円!! やるぞぉおおお」