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第十六話 合成アイテム『マンティスキラー』、発動!

 「よし、これでとどめだ!」


 とっておきのアイテム。


 俺は今回のために練りに練った合成アイテムを取り出した。


 「マンティスキラー、くらえ!」


 巨大な煙玉のような合成アイテムを、落とし穴の底にいるマンティス目掛けて投げ込む。その巨大煙玉は、シュウッと音を立て、紫色の煙を吹き出しながら落ちていく。


 ギガマンティスに直撃した瞬間、玉が弾けるように破裂し、毒々しい紫色の煙が穴の中を埋め尽くした。マンティスの複眼がぎらつき、不気味に光る中、その全身が煙に包まれていく。


 「ギシャアアアアア!」


 凄まじい咆哮を上げるギガマンティス。


 この合成アイテムの成分はこうだ。


 まず、異世界アイテムの魔石と、地球アイテムの研磨剤を合成すると、合成アイテムの魔結晶になる。


 その魔結晶と、地球アイテムの殺虫スプレーを掛け合わせると、合成アイテムの殺虫魔石になる。


 合成アイテムの殺虫魔石と異世界アイテムの煙玉を掛け合わせると……


 『殺虫の魔導煙玉』、通称『マンティスキラー』の誕生だ!


 もちろん、このルートをたどっていくには、それぞれの材料が必要だった。


 異世界アイテムは、エルフのみんなに頭をぺこぺこ下げて譲り受けるという現地調達でなんとかなったが、地球アイテムは、クソ女神のぼったくり【ショップ】で購入しないといけない。


 そのためにはクルナがいる。俺はほぼすべての所持品を売却、この合成ルートテストに費やした。


 俺、合成に全ツッパして大丈夫か? 


 と、ギャンブル中毒の人間が一度は陥る思考に迷い込んだりもしたが……。


 自分を信じてよかった!


 しっかりと結果がでたぜ!!!


 「どうよ! いくらお前が頑丈な外殻を持ってたとしても、所詮は昆虫だろうが!」


 俺は高らかに叫ぶ。


 「地球にいる人間サマの知恵にはかなわねえぞ!」


 殺虫剤は、殺虫成分“ピレトリン”によって、虫を致死に追いやるという。そして、俺たちのような温血動物には毒性が低い。だから、エルフの村で使用してもOK、と。


 過去の研究者の華々しい成果を、虎の威を借る狐よろしく、偉そうに吠える俺。


 ともあれ、結果は明らかだった。


 ギガマンティスは、最初は落とし穴の奥底、殺虫成分がたんまり入った紫色の煙で満たされる中で大暴れしていて、まるで地響きのようだった。


 紫色の煙は、空気よりも重く、ずっと落とし穴の底で滞留している。


 さぞかし昆虫であるギガマンティスにとっては地獄のような状況だろう。


 そして、しばらくすると、その動きが徐々に鈍くなり、ついにその巨大な体が地面に倒れ込む。


 「やった……!」


 俺の手が自然と握り拳を作る。


 「勝ったぞーーーーー!!!」


 エルフたちの歓声が村中に響き渡る。子供たちは跳ね回り、大人たちは抱き合って喜んでいる。


  ※  ※  ※


 で、まあ、ネタバラシなんですけどね。


 俺が逃げ続けてたのは、もちろん作戦。


 炎の魔法石でとどめをさせてたらベストだったけど、そううまくはいかねえってわけで。


 「ウルフと一緒に、かなわないふりをして逃げ続けた。演技、うまかっただろ? え? もちろん演技っすよ。本当にビビってなんていないっすよ


 逃げ回ってたのは、あの落とし穴の地点まで誘導するため。で、落とし穴は朝からエルフのみんなと総出で掘ったんだ。


 落とし穴をつくるために、スコップをつかった。もちろん、地球製。1つ5000円もする高級品だ。


 つまり、10本で5万円。さすがに俺の手持ちじゃ足りないから、エルフのみんなに家庭や村にあるアイテムをショップのマケプレで売却してもらった。


 そして、そのスコップで10メートルの落とし穴を掘ったわけ。きつかったけど、ガチムチエルフさんたちが楽しそうにやってくれたよ。


 杭と木槌、それに植物の固いシダでつくられたネット、これらはエルフの村製。DIY工房にあったものだ。


 で、最後のマンティスキラーは、合成パターンを解析して、一番あいつに有効そうなものを狙って作ってわけ。


 俺は得意げに胸を張る。


 な、ゴキブリと格闘しかしてない陰キャリーマンの知識も、少しは役立っただろ?




 てなわけで。


 今、エルフの村は、全体が祝賀ムードに包まれている。


 みんなが総出でお祝いの祭りを開いてくれていた。


 広場では歌や踊りが繰り広げられ、食事もふんだんに用意されている。


 「エルフの宴会って、すげえ……」


 俺は、いままでにない豪華なお祭りに目を奪われていた。



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