本当にあったかも知れない怖い話
夏は怪談の季節。
多くの人々が涼を求めて怖い話をする場を設け、楽しみます。
そんな関係で、本当にあったかも知れないお話を致しましょう。
聡は、昔から非常に怖がりで、同級生ばかりか、妹の友達にまで「怪談話」でからかわれていました。
そんな彼が高校2年の夏、部活の合宿で泊まったある湖のそばのユースホステルでのお話です。
町を離れ、山の麓にあるユースホステルに宿泊する事になった聡の所属するバスケ部は、日中の練習を終え、夕食を終え、入浴するために大浴場に行く所でした。
「ここさ、出るらしいよ」
「えっ?」
同級生の敦史の言葉に、聡はビクッとしました。
「出るって、何が?」
普段からクールな言動の幸喜が尋ねました。すると敦史は嬉しそうに、
「出るって言ったら決まってるだろ? あれだよ、あれ」
「あれって、幽霊か?」
呆れ顔で言ったのは亮です。彼はオカルト完全否定派で、霊もUFOも信じていません。
「そうそう。それもさ、可愛い女の子の霊らしいんだ」
「ホントか、それ?」
と急に話に乗って来たのが三度の飯より女の子という陽介です。
「あのな。可愛い女の子っていうだけで目の色変えるなよ」
敦史は軽蔑の眼差しで陽介を見ました。
「ハハハ。でもさ、陰気なババアの霊よりはいいじゃん」
陽介は飽くまで陽気です。
「おいおい、聡が黙り込んじゃったぞ」
幸喜が聡の異変に気づいて言いました。
「ああ、そうか、聡ってこういう話ダメなんだっけ?」
敦史が聡の顔を覗き込んで言いました。聡はゆっくりと頷きました。敦史は笑って、
「ビビリだなァ、ホントに。大丈夫だよ。出るワケないじゃん、幽霊なんて。な、亮?」
「当然だ。霊などというものは、全て錯覚だ。人間は死んだら土に還るんだよ」
亮の説は身もフタもないな、と敦史は思いました。
「やめろよ、そういう言い方!」
聡が突然大声で言いました。亮はびっくりして聡を見ました。聡は全員を見渡して、
「そんな言い方するから、その子が泣き出したじゃないか。皆は女の子を泣かして何ともないのかよ!」
敦史達が世界記録並みの速さでその場から逃げ出したのは言うまでもありません。