最後の一撃
彼の命は尽きようとしていた。
余命幾許もない。まだこれからという時。
あまりに儚い一生。あまりに残酷な運命。
短過ぎる。何も成し遂げてはいない。
本当に終わってしまうのか? これでおしまいなのか?
悲しいまでに潔い存在。狂おしい程美しい生き様。
彼はそれでも力の限り生きる事を諦めていない。
周囲が応援してくれる事もない。
誰も助けてくれない。仲間は次々に倒れた。
皆、命を散らした。彼より先に力尽きた。
しかし彼は生きる。
生きるのだ。生き延びるのだ。
最後の抵抗になるかも知れない足掻き。
彼は渾身の力を振り絞り、生への渇望を表現する。
まだ俺は生きている。生きているんだ! 生きているぞ!
死んではいない。死んではいない!
生きているんだ! 生きているんだぞ!
大声で叫ぼうにも、すでにそれは叶わない。
彼は声を出せない。そんな余力はすでにない。
うおおおおっ! ぬおおおおっ!
足掻く。足掻く、足掻く、足掻くっ!
しかしそれも遂に終焉の時を迎える。
ドスッ……。
鈍い音がする。
まさに最後の一撃。
彼の命は尽きた。とうとう終わってしまったのだ。
でも悔いはないだろう。
彼は精一杯抵抗したのだから。
死に対して。
そして、無情な言葉が響く。
「はい、鯵の活け造りお待ち」