7/11
痴漢
む?
何だ、この感触は?
気のせいではない。
明らかに触られている。いや、弄られている。
満員電車で、皆が身動き取れないのをいい事に、やりたい放題という訳か。
何て品性下劣な男だ。
絶対に許さない。
私が降りる時か、こいつが降りる時に首根っことっ捕まえて、警察に突き出してやる!
でも、振り返る事すら出来ないので、奴の顔を見る事が出来ない。
あ、駅だ。
少しだけ人が動いた。これで奴の顔が見られる。
私は身体を捻るようにして後ろを見た。
真後ろにいたのは、中年のサラリーマン。
でも両手は吊り革。
私を触ってはいない。
他の奴?
もう少し身体を動かしてみる。
しかし、皆両手が見えている。
犯人がいない?
そんなバカな?
私のお尻は、今も触られたままなのだ。
こうなったら、この手を掴み、引き摺り下ろすしかない。
意を決して空いている左手で、まだ人のお尻を触り続けている手を抓った。
「いて!」
声がした。
私は、その手を逃がさないように掴んだ。
「この痴漢、許さないわよ!」
私は次の駅に到着と同時に、犯人の手を掴んだまま、ホームに出た。
「さあ、警察呼ぶから、覚悟しなさい」
私は犯人を見るために振り返った。
そして腰を抜かした。
私のお尻を触っていたのは、「右手首」だけだったのだ。




