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ネオンテトラは勇躍す 9

4-9


「岸谷さん」


「何でしょうか?」


「私のブレーンに、なってはくれないだろうか?」


微笑みながら、木戸さんは語りかけた。

目の奥は笑っていない。政治家だから当然だ。

だが、滲み出る人の良さは、如何ともし難い。

険しい顔で国会答弁をしている様子が、前世の記憶には残っているが、こんなに穏やかな人なんだな。


「ブレーン?というのは、何をする人でしょうか?」


「構えるようなことはありません。

私の話し相手になって、相談に乗ってもらう仕事です」


「なるほど。砂池さんのご紹介でもあります。

木戸さんのお力になれるなら、私も嬉しいのですが……」


「ですが?」


「これから総理を目指そうかというお方です。

怪しげな占い師に捕まった、などとゴシップの種にでもなったらいけません」


「カカカ、そりゃ大変じゃ」


「なるほど。

岸谷さんは預言者と有名ですからね……」


どこでなのか?

本当にもう、流石に諦めの境地だよ。


「では、こういうのはどうでしょう?

私は、お酒を飲みに行きたい時、【シクリッド】のVIPルームを予約します。そこに、たまたま岸谷さんがいて、一緒に飲むことになる、というのは?

頻度が月に一回とかなら、不自然ではありません」


「確かにそれなら、私も気楽です」


「しかしそれだと、ブレーンとしての契約が難しいんじゃないかね?」


「む、確かに」


「いや、お金は結構ですよ。

秘密保持の契約だけ交わしましょう。

お金が発生していなければ、とやかく言われる事もありません」


「しかしそれでは、岸谷さんが損します」


「一応これでも、成功している投資家だと言われております。日本の未来を担う方と、飲み友達になれるなら、それ以上のことはありません。

飲み友達として、たわいもないお話をさせて頂ければと思います」


「フフフ、そうですか。

たわいもない話をね、ハッハッハ!

わかりました!」


「砂池さんが、最近顔を出してくれないものですから、寂しかったんですよ」


「おや、預言者殿。

ワシが居ないことをこれ幸いと、メグちゃんを口説いておるのではないかね?」


おまえと一緒にすんな!


「私は妻帯者ですよ!妻一筋なんです!」


「ほほう。

ワシの目からは、かなり好色な部類に見えるのだがな」


類は友を呼ぶってか?

勘弁してくれ。


「砂池さん、若者をからかうものではありませんよ」


俺が困った顔をしていたら、木戸さんが助け舟を出してくれた。


「ほっほっほ。まだまだ若いのう」


「しかし実際にこちらにいらっしゃるのは、来年の6月以降として頂いていいでしょうか?ちょっとこちらの事情で」


来年は、派手に資金を動かす予定だ。

インサイダーを疑われたくない。


「なるほど、株式市場が慌しいですからな。

了解しました。

ところで岸谷さん」


「はい?」


「預言を賜りたいのですが、

私は、総理になれますかね?」


直球だな。

なれるよ、とは答えられない。


「木戸さんが、ご自分の信じる道を進むなら、光を見失うことはないでしょう」


本当の預言者みたいな言い方になってしまった。

預言者のみなさんって、みんなこんな制約を課されているのかしら?


「ありがとうございます。

何だか自信が湧いてきました」


「一つ、助言がございます」


「ほほう。何でしょう?」


「強い言葉は、人に伝える為には重要です。

しかしながら、強過ぎる言葉は、時としてあなたの不利に働くことになるかもしれません」


木戸さんは、よく発言を切り取られる人だったと記憶している。真面目で志のある人のようだから、つい言葉が強くなってしまうのだろう。

気をつけて欲しい。


「預言者殿、ありがとうございます。

心に刻んでおきます」


「カカカ、岸谷くん。

預言者ぶりが、板についてきたようだの?」


「やめてくださいよ。

エセ預言者の戯言です。

聞き流して頂ければと思います」


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