表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

82/200

ネオンテトラとミレニアム 20

3-20


 「会長、今日はどうしたの?」


会長を会議室に案内して、あたしも座った。

この人、普段着に全然頓着しないんだよね。

今日もTシャツにジャケット。

腕時計だけ、やたら値の張りそうなやつだけど。


「ああ、ちょっと話があってな」


あ、なんか逡巡してる。


「【シャインガレット】の関西支社を作ろうかと思ってる」


「関西支社?」


なんかとんでもない話が出てきた。


「うむ。大阪、京都を中心に、同じようなビジネスが出来ないかと思ってな」


「なるほど。

ウチに集まってるような子達は、全国どこにでもいるっちゃいるよね」


「そうだな。

実は、東京では、積極的に人を増やすのは、100人を目処にしようと思ってる。それ以上増やさないとは言わないが、積極採用するのは、そこまでということだな」


「なんで?増えればそれだけ儲かるじゃん」


「5年後10年後を想像して欲しいんだ。

今25歳のスタッフは、10年後に35になるよな?」


「うん」


「そんなスタッフが30人居たとする。

みんな一斉に歳をとって、みんな一斉に辞めたら、困るだろ?」


「困るね。それに、35歳の人ばっかになったら、若い子を望むクライアントの仕事がこなくなるじゃん」


「そそ、そう言う事。

一気に増やさず、毎年一定数を確保してバランスを取った方がいいわけ」


「なるほど。新卒採用みたいことか」


「理解が早くて助かる。

【シャインガレット】の中で、人を使う事業を開始すればまた変わってくるが、現状ではそういう方向性が良いと思っている」


会長は賢いなぁ。

ずっと先のことを考えてる。


「それで、拠点を変えて事業を拡大しようって事?」


「そうだ。

複数の拠点を持つことは、一極集中を避けると言う意味でも、メリットがある」


「でもさ、支社って言っても、一から立ち上げるのは大変だよ?


「そうだ。結構大変なんだ。

そこで、今から仕込みを始めようかと思ってる」


「仕込み?」


「うん。基盤作りと言ったらいいか。

バカ正直にイチから始めるんじゃなくて、すでにある人とスキームを活用したい」


「既にある……あ、どっかの会社を買うってこと?」


「そう言う事だ。

まず、【シャインガレット】に方向性の近い会社を【ブラックエンゼル】で買収する。次に、俺の個人会社が持っている形の【シャインガレット】の株を、【ブラックエンゼル】に移す。

これで、関西の会社と【シャインガレット】は、どちらも【ブラックエンゼル】の子会社になるな」


「うん」


「その後、関西の会社を【シャインガレット】に吸収合併すれば、晴れて関西支社の出来上がりだ。

青木さんともすり合わせが必要だと思うが、座組は後から考えればいい。

ともかく、イチから拠点を作るよりは、だいぶショートカット出来るはずだ」


「そんな上手くいくかな?」


「絵に描いた餅にならないよう、重要なのは、買収する会社選びになる」


「そうだね」


「そこで登場するのが、おまえだ」


ビシっと私を指さす会長。


「え!あたし?」


「うむ。花明院なら、京都に少なからず伝手があるだろう?」


「確かにそうだけど……」


「会社選びを、おまえに任せたい」


うわわ、いきなり重要な仕事振られた。


「で、でも、あたしは青木さんの代わりをしなきゃいけないし……」


「そうだな。

だから、急がなくていい。

暇を見つけて関西に出張しろ。

目処は、今年中だ。今年中にアタリをつけて欲しい」


今年って、あと半年しかないじゃん!

京都に行けるのは素直に嬉しいけど。


「そんな急に言われても……」


「俺のルートでもあたってみる。

少人数で、派遣業をしていて、資本基盤が脆弱で買収に乗り気であるといい。青木さんみたいな実直なトップがいることが望ましいが、そこまで高望みはしない。

真面目であればいい」


「うーん」


「悠華さんも実家と和解したらしいし、小島の家の伝手も辿れるぞ」


「確かにそうだけど……」


そう。悠華は生活が安定したから、黒田と赤松の勧めもあって、実家と和解したんだ。

お父さん、泣いて喜んだらしい。

ちなみに経緯を聞いて、会長を婿に!って言ってたらしい。

どこの家も考えることは一緒だね。

悠華は満更でもなさそうに見えたけど、妙子が相手じゃ分が悪いね。乳でも負けてるし。

「ワシは側室でも構わんが」

とか沙苗みたいなこと言ってたけど、そんな制度無いから。


「【シャインガレット】を大きくして、どうするつもりなの?」


【シャインガレット】は上り調子の会社だけど、上場しないなら、そこまでメリットはない。このまま手離れしちゃっても良いと言えば良いんじゃないかと思う。


「未来への布石だな」


「言ってる意味が……」


「関西、特に京都は観光の街だよな?」


「うん」


「今は国内旅行で人気だと思うが、これからは違う」


「何が?」


京都は人気の観光地だよ?

祇園祭りとか、すごい人出なんだから。


「予想が外れたら恥ずかしいから、今は言わない」


「なんだそれ」


「ともかく、関西の観光は、これからさらに有望な分野になると、思っている」


預言者かよ!

あ、預言者だった(笑


「その為に、流動的な人手を確保しておきたい」


「あー、えーと、派遣業が、観光業のための下準備ってこと?」


こんがらがってきた。


「先々を考えると、そういうことになる。

が、あまり深く考えなくていい」


「それは助かるよ」


意味がわからないから。


「じゃ、よろしくな。期待している」



 会長は言いたい事だけ言って、去って行った。

買収先の調査か……。

あたしの頭に、いくつかの分家筋の顔が浮かんだ。

京都の事は、京雀に聞くのが一番だ。

まずは父に相談だなー。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ