ネオンテトラは始動する 6
-1978年11月-
俺は、自転車の練習中、派手にこけた。
わざとだ。
その後3日間、虚な目で、無反応で過ごした。
両親は当然心配したが、ガン無視した。
そして4日目になって、父を前に、正座して対面した。
「どうしたジュン、やっと正気に戻ったか」
「お父さん、僕は夢を見ていました」
「夢?」
「未来を見てきたんです」
「は?」
「大人になった自分の未来を」
「なるほど」
父は技術者だから、比較的思考は柔軟だ。
そして意外と厨二気質もある。
「このままじゃ、僕は大人になってお金で苦しむことになる。
だから、お父さんに協力してほしいんです」
「そりゃ大変な未来を見てきたもんだな。
で、お父さんにどうして欲しいんだ?」
話に乗ってくれた!!
まずは話を聞く、コレ重要!!
「お金を貯めたいんだ。それで、一万円貸して欲しいです。
それから、今週末の競馬のG1レースに賭けたい」
「競馬に賭けたいってかい?」
「見てきた未来で、勝つ馬がわかるんだ。
絶対当たるから、本当にお願い!!!
もし外れたら次の誕生日プレゼントと、お年玉はいらないから!」
「うーん……」
頼む頼む!
ここが分水嶺だ。
「ま、いいか。
お父さんも大学生の時、競馬にハマってたことがあるんだ。
嘘かほんとか、試してみよう」
「やった!!」
お父さん、さすがです!
疑問があれば実地検証する、技術者の鏡だ!
母だったら、こうはいかなかっただろう。
歴代の重賞レースのデータは、何となく記憶している。
恐らくイケるはずだ。
週末、都市部の馬券売り場まで行って、G1レースの枠連を一点買いした。この時代、馬連も3連単もないので、枠連が一番跳ねるのだ。
結果、56倍を当てた。
父は空いた口が塞がらないようだった。
さて、次は銀行口座だな。