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ネオンテトラと漆黒の女王 36

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-1998年1月3日-


「「あけましておめでとう!」」


かちんとグラスを合わせる。

ビールで乾杯だ。

食卓には、【中島屋】で頼んだおせちが並ぶ。


妙子と二人きりの正月。

俺は24歳、妙子は23歳になっていた。


年末年始はお互い実家で過ごしたので、数日ぶりの再会だ。


「何だか、こうして二人で過ごすの、久しぶりかもね!フフフ」


「うん、そうだなぁ。何だかんだ忙しかったもんな」


しみじみとビールを酌み交わす。


妙子の胸には、クリスマスに送った、ファニーティというブランドのシルバーソイネックレスが光っている。

豆っぽい形だからソイ、らしい。

別に特別高いものでは無い。

何故なら、前世の貧乏大学生時代にも送ったことのあるプレゼントなのだ。


妙子はこのネックレスが大好きなのだ。

すごく大切にしてくれている。



あれから【バタフライアクセス】の件は新垣に一任している。

さすがに年を越してしまったが、正月明けに報告を聞く予定。

あのボロアパートでは、地震でひとたまりもなくペシャンコになってしまいそうな為、とりあえずの措置で、適当なウィークリーマンションに移ってもらった。


強烈キャラの悠華さんは、よく聞いたら21歳だった。

花明院のいっこ下だ。

なんでその歳で社会人かって、海外で飛び級して、日本の大学に編入したからだそうで。

思ったより本物の天才だった。失礼。

ちなみに花明院家と小島家は、明治時代からの付き合いだそうです。

知らんけど。



それより、

昨年の暮れに【千川証券】と、それと関わりの深かった【日本学食銀行】が相次いで倒産、投資家界隈は、蜂の巣をつついたような大騒ぎとなった。


【シクリッド】に、結城さんのみならず、レアキャラの蒲田さんまで訪れた。

話の主題はもちろん、今後どうなるかを冗談半分、俺に聞きに来たのだ。

俺にも言えることと言えない事があるので、とりあえず地球は滅亡しないと思いますよ、的な差し障りのない話をしておいた。

時代の流れは、誰の目から見ても携帯電話とITにあるので、その辺は話を合わせておくだけで良かった。


問題なのが、結城さんや蒲田さんに釣られるように、銀行や証券会社の重鎮が訪れるようになり、それに釣られるように、自治体の首長や衆議院議員がちらほらと顔を出すようになったのだ。


やめて欲しい、と切実に思った。


ここはロック一杯800円の場末のバーであり、店長はあの、メグなのである。センチュリーやらクラウンやらで乗り付けて、日本の未来について熱く論じるにふさわしい場所ではない。


ある時、いつもの調子で島田さんや松永さんが訪れた事があったのだが、扉を開いて目を剥き、パタリと静かに扉を閉めて去っていった。


だが、俺の願いとは裏腹に、こうなると人の連鎖がもう止まらない。

よくわからないお偉方が、ひしめき合って歓談している様は悪夢と言って良い。そして意外にもメグの評判が良い。マキも。


おじさん達は基本的に、口の硬いギャルが好きなのである。


そんなわけで、年末ギリギリまで【シクリッド】は大盛況だったのだ。予言者の二つ名は、もうどうしようもなく一部の政財界に浸透し、俺の苦悩と引き換えに、人には見せられないボトルキープが、たんまりと戸棚に仕舞われる成果を得た。


【ブラックエンゼル】で進めていたもう一つの案件も、まあまあ進捗していた。



「【パシフィックキッチン】との話はまとまりそうなんだって?」


「うん、そうね。ランちゃんとの話がまとまれば、来月には契約に持っていけそうよ、フフフ」


【パシフィックキッチン】は、新宿にある飲食系の代理店だ。

予想通り有希は、海外店舗の誘致ノウハウのある会社を、紹介してくれた。優秀な奴だ。


台湾のお店は、タピオカミルクティーを取り扱っていた。

日本人はタピオカココナッツミルクが大好きらしい、なんて適当な噂だけで店を出そうとしてたらしく、俺が絶対こっちの方がいい、って説得したら、あっさりと方向転換した。


【パシフィックキッチン】の担当役員も面白がってくれたので、タピオカミルクティーオンリーの小さいお店を出そうという話になった。

場所は原宿の松竹通り近くの、小さな居抜き店舗だ。


タピオカミルクティー店舗の良い所は、タピオカを煮る道具と、容器に蓋をする専用の機械さえあれば、あとは何とでもなる所だ。

導入コストが安い。


今回の契約では合弁会社を作ることになるのだが、出資金は全部合わせても1000万。

ウチは500万出して株式の25%をもらう予定。

一応、形ばかり妙子に役員に入ってもらっている。

他は人を出したりレシピを出したり、店舗デザインしたり、金以外でも貢献してくれている。

主に手を動かすのは【パシフィックキッチン】なので、ウチは気楽なものである。


「お店の名前は、【Lang-Lang Cha】(ランランチャ)に決まったのよ」


「良い名前じゃん」


「でしょ」


伊達巻をモキュモキュと食べる妙子、可愛い。




【サードハング】が一部上場したので、買い増した。


【サードハング】二回目

・購入時(1998年1月)

単元100株25万

¥250,000 × 2000単位(200,000株) = ¥500,000,000


それから、店頭公開銘柄だが、携帯電話販売を行う【碇真光】を購入。こちらも後世では有名な値上がり銘柄なのだが、ちょっとその後の経過に問題のあった会社だ。


【碇真光】

・購入時(1998年1月)

単元100株40万

¥400,000 × 500単位(50,000株) = ¥200,000,000


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