表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/200

ネオンテトラと漆黒の女王 30

2-30


-1997年4月-


株式を手仕舞いした。

【ブラックエンゼル】の手元資金を確保したかったのと、今年は別の仕込みをしなければならないからだ。


【モトヨ自動車】

・購入時(1995年8月)

単元1000株35万

¥350,000 × 1600単位(1,600,000株) = ¥560,000,000

・売却時(1997年2月)

単元1,000株64万

¥640,000 × 1600単位(1,600,000株) = ¥1,024,000,000

・利益

¥343,000,000(税引後)


【ヨンダ技術開発】

・購入時(1995年8月)

単元1000株70万

¥700,000 × 800単位(800,000株) = ¥560,000,000

・売却時(1997年2月)

単元1,000株160万

¥1,600,000 × 800単位(800,000株) = ¥1,280,000,000

・利益

¥547,000,000(税引後)


【ブラックエンゼル】の利益が7500万、【クラウンローチ】の利益が2500万、俺の利益が8億になる。


【クラウンローチ】は【シャインガレット】への出資を、利益で回収出来た。【ブラックエンゼル】は利益がそのまま回転資金になる。


俺の個人資産は、だいたい30億。



あともう一つ、今、手仕舞いしなければならなかった理由がある。


「まあコーヒーでも」


ソファに座る目の前の人物に、コーヒーを出してやる。


ようやく引越しも完了し、妙子と楽しく時を過ごしたかったのだが、面倒ごとは待ってはくれない。


「いやぁ、まいりました」


やや憔悴した面持ちの中年男性。

島田さんだ。

部下の矢田さんもいる。


「御社、だいぶマズいんじゃないですかね?」


俺は自分のコーヒーを味わいつつ、口を開いた。


「いやいや、軽く捜査が入っただけで、なんて事はないです。

よくある事です。ちょっとした手違いというやつでして……ハハハ」


「苦しい言い訳ですね」


「いやあ、面目至極もございません」


村乃野証券は今年の3月に、総会屋への利益供与の疑いで、検察の強制捜査が入っている。


「総会屋には気を付けてくださいと、言っておいたはずですが」


「ええ、私は大丈夫だったんですが、他部署がやらかしてしまいまして……ははは」


もう良い歳なのに、どうも子犬感の抜けない島田さんである。


「御社がこの調子では、私も付き合う証券会社を考えないといけません」


「いやいや、ご心配には及びません!

ちょっとした手違いなので!」


脂汗を流して言い訳する島田さんだが、苦しさが滲み出ている。


完璧に嘘なのだ。

5月には役員が逮捕され、政府から重い行政処分を食らい、証券会社としての機能が一時麻痺、社長が引責辞任する事態にまで発展する。

島田さんくらいのポストの人なら、ことの重大さを予感しているはずだ。


さすがに俺の取引にまで支障の出るほどの処分を食らうのは、迷惑だ。長い付き合いだが、ここは距離を置かせてもらう。


「まー、そんなわけで、取引する証券会社を、【輪台証券】さんに切り替えることにしました」


「「ええ!?」」


「もし私とまたお付き合いしたいようでしたら、来年辺りに訪ねてきてください」


「ちょ、ちょっと待ってください!!

私に出来ることでしたら、いかなる便宜も図ります!

そうだ、手数料をお勉強しましょう!ね!」


「……」


「岸谷様……弊社は、それほどに……?」


俺は何も言えない。


「来年、お待ちしてます。

良い条件をお持ち頂けるものと、期待していますよ」


「来年……来年には持ち直すと?」


「さてね」


うん、来年には仕事上は持ち直してるよ。

だからその時また来てね。




肩を落として帰って行った島田さん達と入れ替わりに、来客があった。


「【輪台証券】の松永っす!」


短髪で髪がツンツンしており、ガタイのいい30代の証券マン。

松永さんだ。


太い眉に精悍な顔立ちは、ああ、こいつ謎の大学ジャンパークラスタだな、と想像させるに難くない。河内と気が合いそうだ。

実際、ハンドボールをやっていたらしい。


【輪台証券】は、結城さんに紹介してもらった。

ここ数年、証券業界がごたついているので、保険のために複数の証券会社と取引したいんだよね、と【シクリッド】で相談したら、心良く紹介してくれた。


「準備は出来ましたので、いつでも取引可能っす!

何を買いますか?それとも売りから入りますか?」


諸々の書類を受け取り、判子をついていく。


「いや、今はいいんだ。時期じゃない。

必要な時には電話するから」


苦笑いしながら、返す書類を渡す。


「そうですか……噂の予言者様のお手伝いをさせて頂けるのを、楽しみにしてるっす!」


どこの噂なのか、もうどうでも良くなりつつある。


「そういえば、【千川証券】はどんな感じですか?」


「そうっすね〜、結構ヤバそうっす!」


「アバウトだな」


再び苦笑いだ。

この人、高学歴の証券マンらしからず、アバウトなのだ。


「今期はかなり厳しいと聞いています」


【千川証券】は、【村乃野証券】【輪台証券】【忍道証券】と並ぶ、四大証券会社と言われる。

残念ながら不良債権処理と拡大路線が上手くいかず、今年の暮れに経営破綻するはずなのだ。

今の所、大枠の歴史通り推移しているらしい。




個人と法人では引かれる税率も引かれるタイミングも異なりますが、面倒なのでここでは個人合わせで26%にしてます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ