ネオンテトラは始動する 4
しばらく、過去と現在が交互に展開します。
-1978年9月-
気がついたら、俺は4歳、いや5歳児に戻っていた。
何を言ってるかわからないかもしれないが、その他に説明のしようがない。これは夢か?
いや、夢でもいいか。
どうしようもなく追い詰められていた死の直前を思えば、ここは天国みたいなものだ。
俺は、およそ30分ほどで、あっさり受け入れた。
いや昭和だ。マジ昭和。
夏がそんなに暑くない!
地球温暖化はデマじゃなかった!
そして、やたら若い両親を見た時はビビった。
困ったのは、洋式トイレが無いことだ。
ぬるま湯に浸かった現代人からすると、和式は辛い。
何なら、水洗ですらない家もあるくらいだ。
父親は、大手精密機械部品製造の会社で、基盤設計の仕事をしていた。後に半導体事業に関わって、結構上のポジションまで行くことになるんだけど、まあそれはいいとして。
今は、ここ熊本に赴任して、デカい工場勤務らしい。
母親は主婦だ。
しはらく様子見で幼稚園児を演じていた。
が、そのうち、これからどうするべきかと考えていた。
1980年代後半のバブル期まで、約10年か。
……これは、イケるんじゃないか?
俺の知る未来を辿るのかどうか、よくわからないが、もしそうだとすると、株で稼げるはずだ!
だが、そこまで考えて、元手がないことに気がついた。
5歳児の俺の財布には、62円しか入っていないのだった。