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ネオンテトラと漆黒の女王 15

2-15


-1995年8月-


下田の海は、今年も綺麗だ。

【ネオンテトラ】の夏合宿。

去年、大評判だった下田に、今年も来ている。


俺と有希は4年生になり、ほぼ引退勢。

砂浜の隅っこにパラソルを立てて、まったりしている。


今年は引き続き、3年の皿橋部長体制となっている。

副部長は、曽良岡が引き継いだ。

新垣がハミ子っぽく見えるが、彼女はスポーツ系のサークルにも顔を出しているので、結構忙しい。


【ネオンテトラ】には今年、20人の新入生が入った。

去年の新入生が10人ほど居残っているので、30人を超える大所帯になっている。


こうなってくると、もう顔を覚えられない。

若い女子がいっぱい居るなぁ、って感じ。


女子が多い当サークルには、他サークルからの合コンの打診が引きも切らないのだが、素行の悪いサークルとは関わらないよう、3年が目を光らせているらしい。


合宿にも25人程度が参加していて、大盛況と言っていいだろう。

スポンサーとしては、嬉しい悲鳴だ。

来年、これ以上増えるんだろうか?


たくさんの女子達が、海できゃっきゃウフフしているのを見ていると、ここが天国か、と錯覚する。


視線を感じて横を見ると、有希が微笑んでいた。


「ミテナイヨ」


「そうじゃなくて。

【ブラックエンゼル】の場所。私の話聞いてた?」


天国に見とれてました。


「ああ、うん。

都内であれば良いと思うんだけど」


「【シャインガレット】に通いやすいように、渋谷にしたら?」


「そうだなー。渋谷がいいかもな」


そうそう、有希は4年になって、授業に余裕が出来た。

何でって、単位を一つも落としてないからだ。

優等生だよ。


で、【シャインガレット】に週4のバイトに入ってもらった。

青木さんの部下だ。

現代風に言えば、インターン?


【シャインガレット】は、春先に従業員が2人増えて、青木さんとステファニーさん、俺を合わせて13人になった。


元々オーバーワーク気味だった青木さんが、いよいよゾンビみたいになってきたので、4月から、有希に手伝ってもらうことにしたわけだ。


もう他に頼れる先が無かったので、拝み倒した。


一応、青木さんたちと折り合いが悪ければ、夏でフェードアウトしてもらおうかと思ったが、杞憂だった。


【シャインガレット】のみんなには、俺の彼女だとも、いずれ別会社を俺とやることになる、ともはっきり言った。

やりにくいかな、とも思ったんだが、そもそも俺、そんなに恐れられてなかった……。


青木さんは仕事に妥協しない人だし、そもそも猫の手も借りたい状況。

有希の、人の言うことに耳を傾ける素直な性格も、青木さんにはとてもフィットしたようで、仲良くやれている。

自分の目の届かない所で、俺が女の子と良からぬ事をしているのではないかと、心配していた節があるから、むしろこの仕事に参加出来て嬉しそうでもある。


流石というべきか、書類仕事から電話応対、従業員とのコミニュケーションまで、そつなくこなしている。

飲食チェーンで帝王学を学んできた有希は、基礎的な社会人スキルが高く、会社という組織の仕組みを理解している。

それ故、行動に無駄がないのだ。

管理業務の素養が素晴らしい。さすがは社長令嬢。

前世で有希は、どれほどの人物になっていたのか……?


主任ポジのマキとメグは、俺の彼女と言うことで、手ぐすね引いて待ち構えていたみたいだ……。

有る事無い事吹き込まないで欲しいものだ。


と言うことで、うまく溶け込んでいる。


合宿が終わったら、俺と有希で仕事を分担して、青木さんに夏休みを取ってもらおうと思っている。



「でも渋谷はゴミゴミしてるし……

その周辺、中目黒か恵比寿、代官山という選択肢も……」


今は、俺の構想の中核となる会社について、有希と相談している。

株式の運用や、ベンチャーキャピタルを事業とする予定の会社で、有希や【ネオンテトラ】のメンバーが働く会社だ。


実はもう会社自体は出来ているのだが、今のところ所在地が俺の家だ。さすがに事務所は欲しい。

新会社の名前は【株式会社ブラックエンゼル】。

漆黒の女王の異名を持つ、美しい熱帯魚だ。

資本金は9,000万。

有希は取締役にしてある。

まあ、箱を使っただけだな。


事務所の場所は、交通の便が良ければ何処でも良い、というのは、俺と有希の共通見解なのだが、渋谷はいずれ再開発が始まり、駅前の構造が定期的に変化するダンジョンと化していくので、なんか避けたいんだよなぁ。


「もう、早く決めてね」


控えめな膨れっ面をする有希、可愛い。


「うん、まぁでもその辺。すぐ決めます!」




投資も再開した。


バブル崩壊からいち早く立ち直り、業界再編が行われている分野がある。そう、自動車業界だ。

確かな技術力を持ち、海外販路を拡大した二つの会社の株を購入した。

そのうちの一つ【モトヨ自動車】は、近々、ハイブリッドカーの量産に成功するはずだ。



【モトヨ自動車】

単元1000株35万

¥350,000 × 1600単位(1,600,000株) = ¥560,000,000


【ヨンダ技術開発】

単元1000株70万

¥700,000 × 800単位(800,000株) = ¥560,000,000


これらの投資は、会社の資金も含まれている。

俺の個人会社【クラウンローチ】から3000万、【ブラックエンゼル】から8000万だ。


【ブラックエンゼル】は、ほぼ全力で投資した。


ちなみに【モトヨ自動車】は、最初に父が勧めてきた会社で、誰もが知る巨大企業だ。

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