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ネオンテトラと漆黒の女王 7

2-7


結論から言って、【シャインガレット】には、資金面以外の問題はなかった。


半田さん、あの店見てないよねぇ……?


「さて、青木さん」


俺の中で結論は出ている。

後は、青木さん次第だ。


「はい」


青木さんの手が震えている。


「私にどんなメリットが?」


「……従業員がみんな笑顔で、明るい雰囲気で、その中で私は、好きな経理の仕事に没頭出来る……そんな未来を、お約束します!」


不安に満ちた表情だが、決意が感じられる。


「それが私のメリットだと?」


「ええ、その通りです」


青木さんの描く未来、か。

しばし腕を組んで考える。


おおむね、俺の期待通りの返答と言える。

青木さんにしろ、マキメグコンビにしろ、経営センスはゼロだ。

成り行きで窮地に陥っているだけ。

俺の見るところ、みんな良い子だし、多分働き者なのだろう。

これ以上の答えは、求めるべくもないのだ。



「……分かりました!

御社を買い取りましょう。社長もお引き受けします」


「岸谷さん……!」


拝むなって。


「ただし青木さん、あなたにはその未来を実現する、義務があります。それをお忘れなきよう」


「もちろんです!!」


出来るかな?やってもらわないと困るが。


「それから、私は学生ですし、いち投資家でしかありません。

あまり業務には関われません。

実質的には、あなたが舵取りをすることになります」


「承知しています」


「もちろん、人材の欠けている点は理解していますから、

いずれ何らか手は打ちますが……

それまでは、踏ん張ってください」


「はい!」


「では、半田さん。

私の持っている会社から、2000万出資して、【シャインガレット】を買い取ります。つまり100%子会社ですね。

先方の顧問弁護士と協力して、契約書の取りまとめを。

それから、【シャインガレット】は株式会社にします。

今のタイミングでもいいし、後からでもいいです」


「承知致しました」


【シャインガレット】は有限会社なのだ。

箔をつけたい。


「長谷川さん、税金対策やお金周り、半田さん達と協力して、建て付けをお願いします」


「やれやれ、割と業務外ですよ?

やりますけどね」


やれやれ。

客観的に見れば、2000万をドブに捨てるようなものだ。

だが、【ネオンテトラ】しかり、これから作る会社しかり、戦略的に女性メインで事業展開すると決めた以上、ここは見捨ててはいけない。女性目線で見て、見捨てて良い理由がないからだ。


周りの信頼を2000万で買えるなら、それはそれで仕方ない投資だ。

半強制的ではあるが、乗り掛かってしまった船である。

これでもダメなようなら「やるだけやった」と言う言い訳も立つ。



「青木さん、青木さんは引き続き副社長です。

入金されたら、まずは銀行に返済を。

それから、滞っている分も含めて、給与をしっかりと払ってください。青木さんもです」 


「承知致しました」


「お店はひとまず続けて頂いて良いんですが、

マキさんとメグさんの服装は、もっと布の面積を増やす!」


「はい……」


「二人のために、派遣の仕事を取ってください」


「それはもちろん!」


いずれお店の売上に頼らない体制をつくらないと。

ひとまずはこれくらいか。


「では皆さん、よろしくお願いします!」


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