ネオンテトラと漆黒の女王 6
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秋の夕暮れ時、日も傾き始めている。
バー、【マーガレック】は、隣のビルの2Fにあった。
アンティークな扉を開けると、中は如何にもバー、という薄暗い内装で、カウンター10席、テーブル2セットくらいの広さだった。
「すみませーん、お店まだ開けてなくて……
って、佐里っちじゃん!」
カウンターの奥から声がしたかと思ったら、金髪の黒ギャルが姿を現した。
「あー?どしたの佐里っち。
つうか、そっちは?」
もう一人、今度は茶髪の白ギャルが姿を現した。
「マキちゃん、メグちゃん、ちょっと話があるんだ」
「どうも、投資家の岸谷 順也です」
「マキでーす」
「メグでーす」
黒ギャルがマキ、白ギャルがメグらしい。
お二人とも、結構なエロボディ……ゲフンゲフン、ナイスバディですね。
何でか、高校の制服を着ている。
「一応、確認ですが、お二人は成人で?」
「ウケる!ウチら21だし」
良かった。
ていうかほぼ同年代。
「その制服は……」
「自前の制服だよ〜。この方がお客さんの反応良いからさ」
ガールズバーかーい!
胸元はガバッと開いてるし、えらいミニスカートだし。
そしてルーズソックス!
「そうですか……」
「ジュンジュンも好きでしょ?こういうの」
「触りたくて仕方がないのね?ジュンジュンったらエッチ!」
ジュンジュン……。
「マキちゃん、メグちゃん、ちょっとその辺にして。
岸谷さんは、うちの会社を救う為に来てくれた、高名な投資家なのよ。社長になるかも知れないんだから、失礼のないようにして」
ハードルをどんどん上げていくスタイル!!
「「シャチョー!!」」
何故か両脇から腕を組んでくる二人。
「マキは、シャチョーに助けて欲しいな。
アリリンが居なくなってから、大変なのよ。
佐里っちはテンパっちゃってるし」
「メグ、良い子だよ?
今夜、証明してあげようか?」
グイグイ来るな、この二人。
「いい加減になさい!」
「「はーい」」
「ということで、改めまして、この二人がうちの従業員の、マキちゃんとメグちゃんです」
「改めて、岸谷です。
御社のお力になりたいと思っています」
「ウチたちの会社、ヤバいらしいね。
ジュンジュンは、どうして助けてくれようとしてるの?」
「まさか、ウチたちの体が目当てなの!?
人に言えないような仕事をさせられるのね?」
「ヒィィ!」
二人して体を抱きしめて、恐怖の表情を浮かべている。
「マキちゃん!メグちゃん!」
「「はーい」」
「おほん、えーとまあ、成り行きです。
お二人は、昼間は派遣のお仕事をされる、ということで良いんでしょうか?」
「そうだよ?
マキは、何でもやるけど、アパレルとか、化粧品関係のお仕事するのが好きかな」
「メグは、簡単な事務とか、イベントもやるよ」
「あ、イベントはマキもやる!」
「なるほど」
一応、真面目に働く、らしいな……。
イベントコンパニオンまでやるのか。
対応力がすごいな。
「でもこの前の仕事はウケたよねー?」
「電話のやつ?ああーん、とか喘ぐやつね」
「バカウケ!」
確か、辛い時期を耐え忍んでくれた、大事な従業員、って言ってた気がするんだが……めちゃめちゃ適応してたみたいだ。
「ジュンジュンも好き?ああーん!」
「うう〜ん!」
青木さんが、くわっ、と目を見開いた。
「「ごめーん」」
「それで、夜はこちらに?」
「そだね。
結構忙しいし、他に人がいなくなっちゃったから、大変だよ!」
「みんなメグに夢中なの!」
「マキにだよー!」
「はい、分かりました。
青木さんに聞いたところ、給与の支払いが滞りがちとか……
生活の方は?」
「最近マキは、お金がないから、友達の家を渡り歩いてる」
友達……深くは聞かないことにしよう。
「メグもお金ないから、今はお姉ちゃん家に居候してるよ」
「つまり、お二人とも、今まではどこかにお部屋を借りていたが、今はそれが出来ない状況だと?」
「そだね」
よく見ると、二人とも目の下に化粧で隠しきれないクマがあるし、肌ツヤも良くない。
栄養状態も推して知るべし、と言ったところか……。
というより何より、風紀の乱れが。
しまいには捕まるぞ。
「わかりました。ありがとうございます。
お店の準備もあると思いますので、この辺で失礼します」
「ああ!もう開店の時間じゃん!」
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