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ネオンテトラと新時代 60

5-60


 一連の事件により、鷺ノ宮は降格の上、ひとまず資料室勤務になったらしい。


源一さんと幹水社長は話し合って、事を内々に処理することにしたようだ。

この処分の仕方はこの時代、普通のことである。

何でもかんでも表沙汰にする風潮は、2010年代後半以降の話だ。

むしろ無かったことにしなかっただけ、グッジョブと言ってやりたい。

もちろんそれは許さないけどな。


 鷺ノ宮をクビにする手もあったかも知れないが、【ツキテレビ】の闇に深く関わる人物である。

野に放つと、何をしでかすかわからない。

だから、飼い殺す。

下手なことすると親族郎党皆殺しだぞ、的な脅しが成立する時代なのだ。

脅しっつうか、多分幹水さんとか真面目にやれちゃうんだろう。問答無用で鷺ノ宮が消される未来も、あったのかもしれない。どっちでも良いけど。

いや、良くない!

むしろ消せよ!!抹殺じゃ〜!!


……いかんいかん、ダークサイドに落ちる所だった。


いずれ南極支社にでも飛ばしてくれる事を祈る。

あるのか知らないけど。



 雪村には、俺の代わりに源一さんとの繋ぎ役をしてもらっていた。俺が行けたら良かったんだけど、あんま顔を出して身バレしちゃうと色々面倒くさい。

だから雪村に頼んだ。

あいつ、結構何でも卒なくこなすんだよな。

源一さんがちゃんとやってるか、確認する手段もなかったし、雪村が居なかったらとても困るところだった。


 雪村の報告では、どうやら彼は日和らずに、しっかり動いてくれたらしい。良かったよ。

ハードディスクを握ってるのは俺、って半分くらい言っちゃってるようなものなので、こちらも下手なことは出来なかったからね。

源一さんが日和ってたら、俺にヒットマンが送り込まれる未来もあったのかなぁ?

大企業怖い!怖すぎる!


 という事で、雪村を通じて一つの事実が伝えられた。

【シクリッド】で出会った牛丸さんは、実は牛窪源一であった、という事実だ。あの時は楽しかったです、また飲みたいですね〜、なんて伝言を預かってきた。

源一さんとの関係性で言えば、牛丸さん扱いの方が色々と都合が良かったのだが、致し方ない。


 ハードディスク?もちろん送ったよ!

足がつかないようにね!




 「紫帆さんはどうなったの?」


妙子が北米支社の、なんかびっしり英語の書かれている資料を片手に、コーヒーを傾けながら微笑む。

ここは自宅のリビング。

子供達はステファニーさんが寝かしつけてくれている。

意外とこういう、二人きりの静かな時間が無いものだ。


「紫帆さんは、めでたく報道の方でキャスターに抜擢されたらしい」


「ウフフ、良かったね」


「そうだな」


俺も、コーヒーを一口。

成り行きで関わった紫帆さんだが、なんだかんだ上手くいったらしい。有能そうな子だし、活躍して欲しいものだ。

妙子や新垣たちも最初は警戒してたらしいが、みんな心配してたんだ。


「【ツキテレビ】の番組編成は、源一さんの影響力がかなり強まった、という話だ」


「良い方向に行くと良いね」


「うん。

これで少しは、源一さんのやりたい方向に進むだろう」


「そうだね」



 外は静かな雨が降っている。

もうすぐ今年も終わりか。

なんか、すごく色々なことがあった気がするな。


「来年どこかでさ、子供達と一緒に、しばらく京都に行こうか」


「ウフフ!それ良いね」


第五部、終了です。

ここまで読んでいただき、

誠にありがとうございますm(_ _)m

もしよろしければ評価やブックマークをして頂けると、大変励みになります。

少し書きためるお時間をいただきます。

次章からまた時間が飛び始める予定です。

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