ネオンテトラと新時代 60
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一連の事件により、鷺ノ宮は降格の上、ひとまず資料室勤務になったらしい。
源一さんと幹水社長は話し合って、事を内々に処理することにしたようだ。
この処分の仕方はこの時代、普通のことである。
何でもかんでも表沙汰にする風潮は、2010年代後半以降の話だ。
むしろ無かったことにしなかっただけ、グッジョブと言ってやりたい。
もちろんそれは許さないけどな。
鷺ノ宮をクビにする手もあったかも知れないが、【ツキテレビ】の闇に深く関わる人物である。
野に放つと、何をしでかすかわからない。
だから、飼い殺す。
下手なことすると親族郎党皆殺しだぞ、的な脅しが成立する時代なのだ。
脅しっつうか、多分幹水さんとか真面目にやれちゃうんだろう。問答無用で鷺ノ宮が消される未来も、あったのかもしれない。どっちでも良いけど。
いや、良くない!
むしろ消せよ!!抹殺じゃ〜!!
……いかんいかん、ダークサイドに落ちる所だった。
いずれ南極支社にでも飛ばしてくれる事を祈る。
あるのか知らないけど。
雪村には、俺の代わりに源一さんとの繋ぎ役をしてもらっていた。俺が行けたら良かったんだけど、あんま顔を出して身バレしちゃうと色々面倒くさい。
だから雪村に頼んだ。
あいつ、結構何でも卒なくこなすんだよな。
源一さんがちゃんとやってるか、確認する手段もなかったし、雪村が居なかったらとても困るところだった。
雪村の報告では、どうやら彼は日和らずに、しっかり動いてくれたらしい。良かったよ。
ハードディスクを握ってるのは俺、って半分くらい言っちゃってるようなものなので、こちらも下手なことは出来なかったからね。
源一さんが日和ってたら、俺にヒットマンが送り込まれる未来もあったのかなぁ?
大企業怖い!怖すぎる!
という事で、雪村を通じて一つの事実が伝えられた。
【シクリッド】で出会った牛丸さんは、実は牛窪源一であった、という事実だ。あの時は楽しかったです、また飲みたいですね〜、なんて伝言を預かってきた。
源一さんとの関係性で言えば、牛丸さん扱いの方が色々と都合が良かったのだが、致し方ない。
ハードディスク?もちろん送ったよ!
足がつかないようにね!
「紫帆さんはどうなったの?」
妙子が北米支社の、なんかびっしり英語の書かれている資料を片手に、コーヒーを傾けながら微笑む。
ここは自宅のリビング。
子供達はステファニーさんが寝かしつけてくれている。
意外とこういう、二人きりの静かな時間が無いものだ。
「紫帆さんは、めでたく報道の方でキャスターに抜擢されたらしい」
「ウフフ、良かったね」
「そうだな」
俺も、コーヒーを一口。
成り行きで関わった紫帆さんだが、なんだかんだ上手くいったらしい。有能そうな子だし、活躍して欲しいものだ。
妙子や新垣たちも最初は警戒してたらしいが、みんな心配してたんだ。
「【ツキテレビ】の番組編成は、源一さんの影響力がかなり強まった、という話だ」
「良い方向に行くと良いね」
「うん。
これで少しは、源一さんのやりたい方向に進むだろう」
「そうだね」
外は静かな雨が降っている。
もうすぐ今年も終わりか。
なんか、すごく色々なことがあった気がするな。
「来年どこかでさ、子供達と一緒に、しばらく京都に行こうか」
「ウフフ!それ良いね」
第五部、終了です。
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