ネオンテトラは始動する 19
-1994年8月-
下田の夜。
おじさんが一人だけいた男風呂で、温泉を堪能した。
うん、一人の方が気が楽だよ。
女風呂が隣にあって、胸の大きさを評価し合っている様子に聞き耳を立てるとか、そういうラノベのような展開は、ない。
昼間は、何だかすごく精神力を消耗した。
俺のMPはもう一桁だよ。
夜は、大広間で、エア投資の成果発表をするらしい。
サークル活動してるじゃん。良い良い。
「先輩は、後ろでコソッと見てください」
とか皿橋に言われたので、コソッと大広間に入ろうとしたのだが……
「見た!?東堂先輩の××、めっちゃ綺麗なピンク〜!」
「羨ましいわ、私なんて××が××で……」
とか、
「新垣先輩の胸、めっちゃハリがあってビックリしちゃった〜」
「私も触らせてもらった〜!」
だの、
「曽良岡先輩のスタイルエグくない?
トップとアンダーの差がヤバイわ!」
「いやむしろウェスト、マジでビビるんですけど!」
「何センチなの!?」
57㎝だよ!とか内心ツッコんでみたり……
などなど、風呂上がりの一年達のトークが、大変盛り上がっている様を聞いてしまい、入るに入れなくなってしまった。
しまいには、
「私は、2号でも良いですよ!」
「私が、2号です!」
「いやいや、私はもう予約されちゃったもんね〜」
とか、何の話か判然としないが、何やら不穏な話まで聞こえてきた。
困ったな、とウロウロしていると、皿橋と有希がやってきた。
「何してるんですか?始めますよ?」
不審者扱いである……。
「は〜い、みんな!静粛に!」
というわけで、成果発表が始まった。
割と真面目にやってるのもいれば、適当な奴もいて、人それぞれって感じだな。
さすがに上級生たちは、手本となるべく、書式を合わせて手堅くやってる。
別に成果を期待しているわけではない。
こうして、興味を持ってくれれば、まずは良し。
「では最後に、会長!一言ください」
え?そうなの?
何も考えてなかった。
みんなの視線が集まる。
「みんな忙しい中、課題をこなしてくれて、ありがとう。
とても楽しませてもらった。
こうやって、たまに経済やお金のことに興味を持ってくれると、嬉しい。
今夜は、楽しんでくれ」
ぱちぱちぱち。
新歓の時よりは、拍手が大きいな。
地味に嬉しい。
夕食後、部屋で有希とマッタリお茶を飲んでいる。
「岸谷くん、昼間、妙子ちゃんと何かあったんだって?」
ニコニコしてるね。
「イヤ、ナニモナイヨ」
「ふーん」
夏なのに、涼しいなぁ。




