ネオンテトラと新時代 49
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「でも本当に許せない!」
「とっちめてやりたいですね!」
「でも誰が関係してるかもわからないし……」
『21世紀の輝く貴女のために』がスローガンの【ブラックエンゼル】である。真っ当に頑張っている女性を馬鹿にした所業を、見過ごすことは出来ない。
「それなんだけど、ちょっといい?」
妙子が切り出す。
一同の視線が妙子に注がれる。
「それ、だいたいわかっちゃったんだよね。
入って!」
カチャッと会議室に入る人影。
「ども」
どこから見ても印象の薄い女性。
「先輩のボディーガードをしている、アヤメさんです」
「「「こんちは〜」」」
「ども、アヤメっす」
「私も最近知り合ったんだけどね。
アヤメさんは、ボディーガードだけじゃなくて、色々と探偵みたいなこともしてるらしいから、ちょっと調査を頼んだのよ」
「「「おお〜」」」
「いや、奥様にはたまにご飯頂いたりしちゃってるんで仕方ないんすけど、頭には内緒っすよ?」
影で岸谷を守るのが役目のアヤメだが、脇が甘いのは若さ故か。だいぶフレンドリーに岸谷家に出入りしているようだ。
「わかってるって!」
「頼んますよ?
我妻紫帆の件、黒幕は【ツキテレビ】バラエティ班のゼネラルプロデューサー、鷺ノ宮陽次っす。まあ、芸能界ってのは昔から色々と闇が深くてですね、テレビ業界も御多分に洩れずってな感じっす。
で、この鷺ノ宮ってのは、悪名高い【ツキテレビ】内部でも、とりわけ問題児らしくて、【ツキテレビ】の女性アナウンサーや新人のタレントとかに、キャスティングをネタに体を要求するなんてのは日常茶飯事。同じように、脅迫まがいにいう事を聞かせては、懇意の大物タレントや広告代理店、スポンサーなんかに、若い女の子を連れて行ってまあ、本人の意向とは関係なく色々と喜ばせてたり、ってなことをしてますね」
「清々しいほどに人間のクズね!」
「もはや犯罪者だわ」
「女の子に限らず、見栄えの良い男の子も含みますがね。
とにかくヤバいことも平気でやる奴ですが、仕事は出来るって事で、幅を利かせてるみたいっす。
まあ、この業界で上に行くのは、こういう人種です。
今回の件は【林林広告】の陣内、って部長を接待しようとしてたらしいすね」
「「「なるほど〜」」」
「ありがとう、アヤメさん」
「いえいえ、お安い御用っす。
くれぐれも頭には内緒でお願いします」
「ええ、もちろん!ウフフ」
喋るだけ喋って、アヤメは風のように立ち去った。
岸谷のボディーガードについては、張り付きではなくローテで回しているとは言え、業務外のことをしていると、甚八にバレかねない。
「さて、黒幕はわかったわね」
「そこでなんですが、私に良い考えがあります!」
アヤメの話を顎に手を添えて聞いていた天才児、永倉明日香。
「明日香ちゃん、何か思いついた?」
「ええ。
【プロトコントル】さんは、確か【ツキテレビ】のバラエティ番組の【YYモード】公式アプリを開発運用されていたはずです。どうせ切っても良い仕事ですし、ちょっとした嫌がらせをしましょう。
まずは新垣さんと悠華さんで……」
「「「それ良いねぇ!」」」
岸谷の知らない所で、またしても怪しい企みが進行しようとしていた。




