表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

172/200

ネオンテトラと新時代 33

5-33


 「いやー、岩山都知事って結構気さくなんですね!」


「そうだな。全然怖い人じゃなかったな」


 【プロトコントル】での用事を終えた俺は、その足で赤坂の【アメジストフィンガー東京】へ向かい、雪村と合流した。

中小企業やベンチャーへの支援を目的とした新銀行設立のための、都知事が招集した会合、という名目のパーティにお呼ばれしていたのだ。


まあ、ウチは曲がりなりにもベンチャーキャピタルやってるからね!

……全然儲かってないけど。



 岩山 大二郎(いわやまだいじろう)都知事は元々作家で、芸能一家の出だ。

政治家を志ざして、今は都知事をやっている。

日本という国を正しく導きたい、という気持ちの強い政治家なので、俺としては応援している。

言動がかなり乱暴で、しばしば物議を醸す人物でもある。

しかしながら、岩山氏以降の都知事はどいつもこいつも信じられないポンコツで、首都東京の舵取りが全く出来なかった未来を見ているので、岩山都知事には、出来れば俺の知る歴史よりも、長く都政に関わって欲しいものだ。


 パーティで挨拶だけさせてもらったが、非常に懐の深さと知性を感じさせるおっちゃんで、礼儀正しいナイスミドルだった。

やはりテレビや新聞での印象というのは、全くアテにならない。

女性のベンチャー支援をこれからもよろしく頼むよ、と笑顔で言っていた。うーん、確かに都の役人とは仲良くやらせてもらってるけど、多分何も知らんで又聞きで言っとるな。

まあ良いけど。

金にうるさくない豪快な人物だから、ウチにも俺にも興味がないのだろう。


 俺みたいな若手の投資家も多く見かけたが、胡散臭いブローカー崩れみたいなのが、さらに輪をかけて大量にいた。

金の匂いがする所には、どこからともなく湧き出してくる、ハエみたいな奴らである。



 件の新銀行は、後の【新金融銀行関東】である。

東京都が主管する銀行で、中小企業やベンチャーの支援、という理念は立派だったが、数年で数百億、最終的には1000億近い、空前絶後のとんでもない赤字を出して、結果、実質的に破綻する。


 こういった官製の支援制度みたいなものは、基本的にうまくいかない。後に、国主体でクールジャパン構想を元にエンタメ分野を中心とした支援が行われるが、これも大概な無駄投資をおこなって破綻する。



 何故か?



 それは、中心に据えられる人物、またその周りを固める人物、あるいはその下の管理職が、腐りに腐りきっているからだ。

経営ゴロ、とでも言えば良いのかな。

華やかな経歴でもって会社を渡り歩き、次の雇われ先と見込まれる会社や濁った水に棲む仲間たちに便宜を図り、金を融通し、今いる会社が窮したら、とっとと移動する。

イナゴみたいなもんだ。

全て食い尽くして次の畑に飛び去るのだ。


 そんなのが上に立つもんだから、当然、自分の利となる先にしか金を融通しない。今回はこんだけ金を工面しますから、今度あの会社が経営刷新する際には、私を推薦してくださいね、てな具合だ。

仲間うちで金を回し合ったり、直接的にキックバックを貰ったり、私腹も肥やし放題。

ご大層な理念など、誰も覚えちゃいない。


 国にしろ都にしろ、上司、あるいはその上の政治家の思惑に従って、官僚は言われるままにあっさり巨額の税金をぶん投げて後は放ったらかしだ。自分の金じゃないからね。

上に言われたことはやりましたよ、と。

言われていない余計な事はしませんからね、と。

私の経歴に傷はつきませんね、と。

定年後の天下りの件よろしく頼みますね、と。


経歴作りに必死な経営ゴロたちは、それはもう、笑いが止まらない。

そしてその任命に加担した者達の懐も潤う。



……だから【新金融銀行関東】はうまくいかない。

最初から詰んでいるのだから、うまくいくはずがないのだ。



 2020年以降、こうした、あらゆる補助金等の支援の為の税金が一部の人間の懐に収まり、本来届けたい先に全く届かないシステムは、SNSを通じて徐々に暴露されていくことになる。

それでも、下手を打って目立った奴は明るみに出るものの、多少頭の回る者たちは、狡猾に、虫も殺さぬ顔で、税金を吸い取り続けていたと思う。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ