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ネオンテトラと新時代 30

5-30


 夜もとっぷりと暮れ、そろそろ飲み会も散会する時間帯。


 我妻 紫帆(あがつましほ)は、草むらにうずくまって、震えていた。


気合を入れてオシャレしてきた、ガーリーなパステルカラーのミニ丈ワンピースは、背中でボタンが引きちぎられ、下着が見えている。髪も乱れ、ストッキングも無惨に伝線している。


(どうしてこんな事に?)


紫帆は、【ツキテレビ】入社2年目の新人アナウンサーである。

名門私立の立治院大卒。

細面にぱっちりとしたタレ目がチャームポイント。

やや小柄で細身だが、比較的目立つ胸と小振りでよく動くお尻が、男性の視線を集める。

見られている方は、意外と気が付いているものなのだ。

柔らかな外見とは裏腹に、性格はかなりしっかりしている。

容姿端麗、頭脳明晰でミスコンで優勝した事もある。

猛勉強して習得した英語も併せて武器として、見事に難関の【ツキテレビ】アナウンサー枠に採用された。


 格別テレビに出たかったわけではない。

バリバリ働くカッコいい女性像が、たまたまテレビ局のアナウンサーだっただけである。


 女性の社会進出が叫ばれてからも、一般の企業での女性の立場は、相変わらず微妙であった。

ファッション系か、出版系か、あるいは女性の好む雑貨などを扱う企業か、そしてテレビを含むメディアか。

そのくらいしか、総合職で活躍出来る場が思い当たらなかったのだ。

紫帆は、どうしても総合職でバリバリと働き、出世してお金を稼がないといけなかった。


 一年目からフル稼働、体を張ったロケも嫌がらず頑張った。視聴者に覚えてもらえて評価されたのか、2年目には大人気クイズ番組のアシスタントに抜擢された。


 数ヶ月前に、会社を揺るがす経営陣の交代劇があったが、現場の空気としては、なんか丸く収まったらしい、という認識だ。以来、報道局の方は色々テコ入れが入っていると同期に聞いているが、紫帆の職場であるバラエティの方は、特に変わりはない。





 2時間前。

紫帆は、赤坂の超高級ホテル【アメジストフィンガー東京】のスペシャルスイートに来ていた。

バラエティ番組に大きな影響力を持つ、ゼネラルプロデューサーの鷺ノ宮 陽次(さぎのみやようじ)に、呼び出されたからだ。


曰く、


「スポンサーを、もっともっと獲得しないといけないからね。林林広告さんの接待に参加して欲しい。これも立派な仕事だよ。なに、ちょっとお酌をして、色々と先方を喜ばせてあげるだけだ。気に入ってもらえれば、君の活躍は約束されたようなものだ、ハッハッハ!!」


との事である。

紫帆は、鷺ノ宮のことがあまり好きではなかった。

自分を値踏みするような、湿った視線がどうにも好きになれない。学生時代に出会ったことのある変質者に近い。

先輩のアナウンサーや女性タレントのお尻を触ったり、気安く腰に手を回したり、冗談混じりのボディタッチが多く、たまに誰かわからない若い女性とどこかに居なくなったり、正直あまりお近づきにはなりたくないタイプだ。

とは言え、数々の人気番組を立ち上げ、絶大な権力を誇る鷺ノ宮である。断ることなど出来るはずがない。

今の所、自分は触られてないし。

自社のスポンサー獲得の為だ、頑張ろう、と気持ちを切り替えて参加した。

わざわざ一度帰宅して、男ウケの良さそうな服に着替えてくる念の有り様だ。




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