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ネオンテトラと新時代 23

5-23


 私は、走って、転びそうになりながら走って、メグちゃんに追いついて、その手を取りました。


「メグちゃん!」


メグちゃんは、キョトンとした顔でこちらに振り向きました。


「私の話も聞いてください!

自分だけ話してズルいですよ!」


メグちゃんは、ふっと笑って。


「メグはズルい女だよ。

でも、妙子ちゃんの話は聞くよ」


そう答えました。

いつだって、私の話を聞いてくれる、優しい友達。

それがメグちゃんです。



 二人で、誰もいない大杉の根元に座ります。

ここなら、全て正直に話せる気がします。


「……ここには、私も来たことがあります。

大学時代、先輩には有希さんという、素敵な彼女がいました。私も先輩のことが好きだったのに、どうする事もできなくて。見ていることしかできなくて……。

そんな時、別の素敵な男性が現れて、真摯に告白されました。

私は悩みました。

そんな時、ここに来たんです」


私は、誰にも話したことのない、思い出話を始めました。

素敵な男性とは、今の【GOUCHI】の社長さん、河内豪太郎先輩のことです。

あの時は、二度目の告白でしたかね。

河内先輩自ら、会社の不祥事を告発したタイミングでした。何もない俺だけど、この気持ちを受け取って欲しい、そんなふうに言われて心が揺れない訳はありません。


「悩んで悩んで、目の前が真っ暗でした。

私は、こと恋愛に関しては、全然頭がまともに働かないんです。

ですが、ここに来ると、頭の中の雑音が全て消えて、一つの結論に辿り着きました」


私はにっこりと、メグちゃんに笑いかけます。



「自分の気持ちを信じること、です」


「気持ちを信じる?」


「そうです。

私は、先輩が好きです。

ただそれだけなんです。

だから、私の周りで起こる色々な出来事に、心を動かされることのないようにしよう。

そう思う事にしました」


「???」


「ウフフ、わからないですよね。

そう、誰にもわからないと思います。

でも、自分の気持ちをスッキリと整理する事ができたんです。

……ここは、私にとっても、思い出の場所です」


私も、この木を見上げました。

その節は、本当にありがとうございました。


「そうなのね」



「……メグちゃんは、どうしたいですか?」


「わたし?」


「はい。

今の状況を抜きにして、自分に正直になって。

どうしたいですか?」


「それは……」


「良いから言ってみてください。

この木の前なら、言えるんじゃないですか?」


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