ネオンテトラと新時代 23
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私は、走って、転びそうになりながら走って、メグちゃんに追いついて、その手を取りました。
「メグちゃん!」
メグちゃんは、キョトンとした顔でこちらに振り向きました。
「私の話も聞いてください!
自分だけ話してズルいですよ!」
メグちゃんは、ふっと笑って。
「メグはズルい女だよ。
でも、妙子ちゃんの話は聞くよ」
そう答えました。
いつだって、私の話を聞いてくれる、優しい友達。
それがメグちゃんです。
二人で、誰もいない大杉の根元に座ります。
ここなら、全て正直に話せる気がします。
「……ここには、私も来たことがあります。
大学時代、先輩には有希さんという、素敵な彼女がいました。私も先輩のことが好きだったのに、どうする事もできなくて。見ていることしかできなくて……。
そんな時、別の素敵な男性が現れて、真摯に告白されました。
私は悩みました。
そんな時、ここに来たんです」
私は、誰にも話したことのない、思い出話を始めました。
素敵な男性とは、今の【GOUCHI】の社長さん、河内豪太郎先輩のことです。
あの時は、二度目の告白でしたかね。
河内先輩自ら、会社の不祥事を告発したタイミングでした。何もない俺だけど、この気持ちを受け取って欲しい、そんなふうに言われて心が揺れない訳はありません。
「悩んで悩んで、目の前が真っ暗でした。
私は、こと恋愛に関しては、全然頭がまともに働かないんです。
ですが、ここに来ると、頭の中の雑音が全て消えて、一つの結論に辿り着きました」
私はにっこりと、メグちゃんに笑いかけます。
「自分の気持ちを信じること、です」
「気持ちを信じる?」
「そうです。
私は、先輩が好きです。
ただそれだけなんです。
だから、私の周りで起こる色々な出来事に、心を動かされることのないようにしよう。
そう思う事にしました」
「???」
「ウフフ、わからないですよね。
そう、誰にもわからないと思います。
でも、自分の気持ちをスッキリと整理する事ができたんです。
……ここは、私にとっても、思い出の場所です」
私も、この木を見上げました。
その節は、本当にありがとうございました。
「そうなのね」
「……メグちゃんは、どうしたいですか?」
「わたし?」
「はい。
今の状況を抜きにして、自分に正直になって。
どうしたいですか?」
「それは……」
「良いから言ってみてください。
この木の前なら、言えるんじゃないですか?」




