ネオンテトラと新時代 14
5-14
曽良岡妙子です。
未来のことが心配で、懇親会は早めに退席することにしました。
そして、とってもイライラしています。
「もう!なんなの!?」
デレデレしちゃって!
「妙子ちゃん、どうどう。
いつものことじゃない」
直美ちゃんは、いつでも私の味方です。
「そうだけど……」
そう、いつものことなのです。
マキちゃんは結婚して落ち着いたけど、メグちゃんはずっと先輩に迫ってくるのです。ブレない子です。
夜のお仕事をしているせいか、最近ますます妖艶さが増してきています。
そして青木さんは良いとして、沙苗ちゃんも沙苗ちゃんです!
誰が貸すものですかっ!!
ハムスターを預かるのとはワケが違うのです!
…ええ、八割がた冗談なのはわかってます。
しかし、微妙に本気が混ざってる風なのが気掛かりです。
そして、一番気掛かりなのが……
脳裏によぎる、天才児の雅な姿。
「みんな、岸谷先輩を拠り所にしてるんだと思う。
安心したい、って言うかね」
「【預言者】様だもんね……。
着いていけば救われる絶対的安心感!!
もうなんか教祖様みたい」
そんな特別な才能が無くても、私は先輩とずっと一緒に居たいんだけどな……。
「なにそれ、ウケるんですけど!
確かにそうかもね。
親しみやすい教祖様なんだよ」
なによ、親しみやすい教祖様って。
笑っちゃう。
親しまないんで欲しいんですげど。
「心配しなくても、岸谷先輩は妙子ちゃんしか見てないよ」
「うーん、そうなんだけど〜」
「まあ、魔が差すことはあるかも……」
「ちょっとー!」
「ナハハ、うそうそ。
でも先輩は優しいからねぇ」
そうなのです!
先輩は基本的に女の子には、めちゃくちゃ甘いのです!
しかし、私達初期メンバーには、さらに特別甘々なのです。
むふふ。
「親しみやすい教祖様かぁ」
いっそ宗教法人でも作った方が儲かるんじゃないかなぁ?
実際、預言は当たる訳だし。
……先輩が嫌がるか。
目立つことも面倒なことも、偉ぶるのも嫌いだしねぇ。
仕方のない人ね。
でも、【ラジオジパング】経営陣交代劇の筋書きを書いたのは、間違いなく先輩です。
我が夫ながら、なんと恐ろしいことをする人でしょう!
その底知れない感じが、全く別の魅力でもあります……。
「教祖様を独り占め!妙子ちゃんは罪じゃのぉ。
ガハハハ!」
「ええ?」
私がみんなの教祖様を独り占め?
そういう見方も出来るのか……。
私は直美ちゃんの言葉にはっとして、思考の海に漕ぎ出してしまいました。
あ、その前に先輩にメールしとかなきゃ。
怒ってないよ、って。




