ネオンテトラと新時代 5
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「はい、お目出度い話が続いたが、結果として【ブラックエンゼル】の人員が手薄になる」
宮下と二戸が抜けて皿橋が時短では、ほぼ壊滅と言っていい。俺の頭を悩ませているのは、この人員の問題だ。
二戸が抜けるということは、投資事業を誰かに引き継がなければならない、という事だ。
「というわけで、ちょっと人員の異動を行うことにした。
まずは真鍋」
「はい」
「真鍋は、【ブラックエンゼル】に復帰だ。
二戸の持っている投資事業を引き継いで、皿橋の下で働いてくれ」
「承知しました」
まあ、2ヶ月くらい前から、既に引き継ぎ進めてるけどね。
「それから、永倉」
「はい!」
「おまえも真鍋と一緒に【ブラックエンゼル】に異動だ」
「承知しました!」
永倉 明日香。
俺が認識していなかった、去年の新卒の一人だ。
国際交流学部 国際交流学科卒。
最上世代の一つ下世代で、【ネオンテトラ】の副部長をしていた。
東大合格率トップクラスの私立高校出身。
その中でもさらに上位の成績であり、当然東大に行き、将来はキャリア官僚かと思われていたが、【ネオンテトラ】に入る為にわざわざ山野辺大学を選んだ変わり者である。
入試の成績は学年トップ。
卒業時の成績も学年トップ。
山野辺大学開闢以来の天才児として、歴史に名を刻まれた。
抜群に数字に強い上、最上世代の薫陶を受けて、金融や会社経営、株式市場について学び、他を寄せ付けない優秀なサークル幹部として君臨していた。
……が、最上曰く、
「ん、明日香ちゃんは……ぁん、キャプテンシーがないから……ぅん」
という事で、副部長をしていた。
スタイルはまあ、少々小柄というくらいで、普通。
前髪ありの黒髪ストレートで、フレーム無しメガネを掛けている。ファッションセンスがどうも俺には馴染めないのだが、その謎の紺色の襟付きワンピースとレース付き靴下は何だろうか。
普段は物静かで常識的だが、たまにテンションがおかしくなる時がある。
声がデカく、口癖は「おいィィィィィ!!」である。
俺が【シャインガレット】に行った時に、どこからともなく、
「おいィィィィィ!!
そうじゃねえだろおおおおおお!」
みたいな奇声を聞いたものである。
何だろう、ちょっと怖い……。
下の世代に行くほど個性が強いキャラがいるって、どういうことなんだ?
ま、とにかく。
真鍋や最上に聞くところ、メンがヘラってる気質ではないらしい。逆にすごくメンタルは安定している子だと言う話だ。俺にはよくわからないが、2人がそう言うなら、そういう事なんだろう。
とんでもなく頭の回転が速いのは確かで、俺の中では【周回プレイでクリアデータを引き継いで新規スタートしたけど、テンションがおかしくなってしまった青木さん】という評価だ。
これ、褒め言葉だからね。
真鍋は、恋愛は上手くいかないようだが、仕事に関しては申し分ない安定感がある。
この二人を【ブラックエンゼル】に戻して、何とかする!
何とかするしかない!
さてそうすると、今度は【シャインガレット】が手薄になるんだ……。ままならんなぁ。




