ネオンテトラは勇躍す 46
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テレビも新聞も、連日連夜、【ツキウサギグループ】の話で持ちきりだ。やれ創業者一族の復讐だの、表現の自由は失わせないだの、言いたい放題だ。
都合の良い時だけ被害者ぶるのは、もう見飽きたよ。
だが、国民の多くはそれを信じてしまう。
10年後20年後、騙されていたとわかっても、もう遅い。
遅過ぎるのだ。
まあ、和解して協力してガバナンス改善に取り組むと見て取れるし、良い方向に転んだと見ていいかな。
俺は、広げていた手紙を丁寧に折り畳んで、テーブルに置いた。
「ウィリアム?」
妙子だ。
「うん。
とても儲かりそうだと。
また良い話があれば是非、とのことだ」
「ウフフ、調子がいいわね。
乗り気じゃなかったくせに!」
「奥様によろしくと。
というか、ほとんど妙子のことしか書いてない」
俺は眉を顰めた。
人様の妻を賛美する手紙を、その旦那に送りつけるとは、良い度胸だ。
「ウフフ。妬いてるの?」
俺は妙子の腰を抱き寄せた。
「当たり前だ。
妙子は誰にも渡さない」
前世ならここで、浮気でもしてるのかー!、っと大暴れしているところだ。妙子の魔性の魅力に取り憑かれ、独占欲に支配されて頭のおかしくなった俺には、もうどうすることもできなかっただろう。
今の俺なら、冷静に対処可能だ。
よしよし、俺は落ち着いているぞ。
なんかイライラするけど、全然落ち着いている。
「もー!」
「……妙子、骨を折ってくれて、ありがとう」
「お安い御用よ」
妙子の魅惑の瞳が揺れて、甘い空気が漂う。
3人目を考えるのは、まだ早いかな?
などと思いながら、俺は昨年のことを思い出していた。




