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ネオンテトラは勇躍す 45

4-45


 日本列島を震撼させた、【ラジオジパング】の株主総会。

その翌日夕刻、牛窪 源一と、幹水 司の連名で、【ツキウサギグループ】の今まで通りのグループ連携と、さらなるガバナンスの改善に向けた協議が行われている、と、報道各社にFAXが送られた。


これにより、一時大混乱に陥ったグループ各社と株式市場は、ある程度の落ち着きを取り戻した。


 そして一週間後、両社による包括的業務提携が発表される。その内容は、


・【ラジオジパング】の取締役会長に、牛窪 源一が就任すること

・【ツキテレビ】取締役に牛窪 源一が就任すること

・【ツキテレビ】内に、【ツキウサギグループ】の横軸で強権的機能を持つ、コーポレートガバナンス本部を新設し、その本部長に牛窪 源一が就任すること

・【ラジオジパング】が、現株価の1.2倍の価格で大規模な自社株買いをすること


と言うものだ。



 奥多摩の別荘では、源一と蒲田がお茶を楽しんでいた。


「蒲田さん。

これであなたは株を売り抜けて利益を確定出来ますね」


「ええ。危ない橋を渡ったと、我ながらヒヤヒヤしております」


【蒲田ファンド】は、【ラジオジパング】の株を買い集めるのに、200億を注ぎ込んだ。

これを売り渡すと、およそ300億。

大儲けである。


「しかしこれで、源一さんの目指す、正しいメディアのあり方を、実現出来ますね」


「うん。

これからが大変なんだけど、ひとまずはスタート地点には立てた。そう思うよ」


「しかし、せっかく手に入れた【ラジオジパング】を手放されるとは……」


「良いんだ。

これが、彼の望んだことなのだから……。

今の体制で3年。

そのあとは、【ラジオジパング】は上場廃止して【ツキテレビ】に買収される。それで良いんだ」


「欲をかくな、とはよく言ったものです。

こうなると予想していたとしたら、彼は化け物ですね」


「【預言者】だからな」


「そして源一さんは【ツキテレビ】の大株主になると」


「うむ。

俺の持っている【ラジオジパング】の株を【ツキテレビ】の株と交換することで、一定の抑止力を保持する。

そして、コーポレートガバナンス本部は、10年間は契約によって保護され、俺がトップになる」


「表には出せませんけどね。

まあ、落とし所としては、良いと思います。

幹水さんは、これから大変ですが」


「身から出た鯖だ。

破滅するよりはマシだろ。

取締役として復帰する鶴岡共々、グループの粛清に力を注いでもらうさ」


「お祖父様の遺言というのが、かなり効きましたね。

さすがは一代で巨大メディアを立ち上げた人物です。

あれでお二人は目の色が変わりました」


「そうだな。

お祖父様は偉大だ」


と言ってみたものの、実のところ、完全な作り話だったという事実を、源一は墓まで持っていくつもりだった。

嘉之助の晩年は寂しいもので、自分を裏切った者どもへの恨みつらみを、死ぬまで呟き続けていたのだ。


「きっと喜んでくれているさ」




 蒲田は、カップを傾けた。


「しかし、あのアメリカの投資会社は、どこから出て来たんでしょうか?そして、何故あれほどの委任状を集められたのか?」


「うーん。

俺にもわからないなぁ。

彼らのお陰で、全て上手く行ったんだけどね……」


源一も、蒲田も、ウィリアムというアメリカ人は、あの株主総会で初めて見たのだ。

蒲田と同様、彼らの持ち株も、今回の自社株買いで高値売り抜けが確定している。


「まあ、彼の差し金だろうがね」


「そうでしょうな」


二人は、ハハハと笑い合った。



 この2004年の一大事件の後、【ツキテレビ】や【ラジオジパング】、また系列の出版社による報道は、他社とは一線を画す独自の中道路線を歩むことになる。







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