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13/200

ネオンテトラは始動する 13

-1994年5月-


柔らかな朝日が差し込んでいる。

ベッドで少し眩しげに、一糸纏わぬ有希が手を翳している。


二人分のコーヒーを淹れながら、その様子を見た俺は、


美しい


と、思った。


気が付かないうちに涙が流れた。

はっとして、涙を拭う。


見た目は20歳の大学生だが、中身はおじさん、何ならお爺さんなのだ。何かに感動すると、すぐ涙が出る。

涙脆くなるのだ。



「岸谷くんは今日は?」


二人で朝食を取っている。

目玉焼きとサラダは有希が作ってくれた。


「午前で講義が終わるから、午後からは島田さんと、丸の内で打ち合わせ」


「ああ、証券会社の人ね」


「うん、なんか投資家の集い?みたいのに、紹介してくれるって話でさ」


「へー」


実は島田さん、東京勤務になっている。

40代になって、そこそこ偉くなったらしい。

島田さんからの俺の評価は結構高く、顧客の間で話題になったらしい。

コンプライアンスとは一体。


それで、投資家同士の集まりに呼ばれた。

投資組合ってこうやって出来るんだなと納得。


「有希は?」


「今日は放課後に、みんなと夏合宿について相談」


「ああ」


「伊豆と言えば、やっぱり伊豆高原かな?下田まで行くのもありかと思ってるんだけど」


「うーん、下田がいいかなぁ……ワニ見たいし」


「マンゴーワニ園ね!」


「そうそう。

でもまぁ、有希の水着が見れるなら、どっちでもいいよ」


「何それっ!」


と言いつつも、満更でもなさそうだ。


「ダイエットしなきゃなぁ……」


とか小声で呟いている。



と、チャイムが鳴った。


「あ、マズい、ステファニーさんが来た」


慌ててインターホンの方へ行く。


「え、もうそんな時間?」


有希がパンを口に詰め込んでいる。



大急ぎで身なりを整えていると、玄関からステファニーさんが現れた。


「ハロー、順也!今日は有希も一緒なのね」


「ああ、すぐ出る」


ステファニーさんは、在日5年の、ふくよかなオランダ人のおばさんだ。旦那さんは外資系の商社勤めだとか。


週二で掃除洗濯、クリーニング、ゴミ出しから生活用品の補充までしてくれている。まあ、お手伝いさん的な?


英語でのコミニュケーションを考えて、学生課に募集してもらった。国際交流学部、様々である。


コーヒーやカップ麺のストックから、有希の好みの化粧品まで揃えてもらって、非常に助かっている。



二人で慌ただしく飛び出した。


「いってらっしゃい、順也」


ステファニーさんの、のんびりした声が響いた。


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