表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

122/200

ネオンテトラは勇躍す 34

4-34



 「ああどうも!東京都の岡本です」


「経産省の西川です」


「初めまして、岸谷です」


「この度は、こうして若い起業家たちと、身近にお話できる機会をくださり誠にありがとうございます」


「いえいえ、費用の補助を頂きまして、こちらこそありがとうございます」


 受付で、いかにもお役人、といった二人と名刺交換する。

今回の懇親会は、東京都と経産省から補助金が出ているので、実質タダで開催出来ている。

他にも、中小のベンチャーキャピタルからも協賛の申し出があったが、補助金だけで十分だったので、ロハで参加させてあげた。

タダより怖いものはないのだ。

アコギな投資をしないように、気を遣ってくれると有難い。


 俺の今日の装いは、中島屋が選んでくれたぼちぼち上等なグレーのスーツに、プタラというイタリアのアパレルブランドのサングラス。腕時計はレトリック社のモンテカルロ。

この腕時計、金持ちアピールする時は、とても頼りになる。


靴にこだわる人もいるようだが、俺は綺麗に磨かれてさえいれば、それほど気を遣う必要はない、と考えている。

さすがに靴のクオリティがわかる人は、そうそう居ないからだ。費用をかけるには、コスパが悪い。


こういう場は、そこそこ金持ってますよ?という、わかりやすい格好をしていかないと、信用してもらえない。

TPOを弁えるのも、トップの務め、というわけだ。

というか、今回の俺の役目はそれしかない、と言っても過言ではない。顔を出す事が大事、と言う事らしい。



 集まった女性起業家の卵は、40人くらいか。

立食形式の懇親会は大盛況なようで、何よりだ。

まあすでにウチの投資プログラムで起業していて、セミナーを受けに来ていた人もいるようだな。


「あー、テステス。

みーなさま!!お待たせいたしました!

株式会社【ブラックエンゼル】の皿橋と申します!

本日は、弊社主催の経営セミナーに参加いただき、誠にありがとうございました!」


さも当然かのように、さらっとMCを始める皿橋。

強い。


「この懇親会には、東京都と、経済産業省の方にもお越しいただいております!後ほど、女性起業家に向けた公的補助のお話をいただきますから、よーく聞いてくださいね!

それから、弊社の他にも、皆様に興味を持っている会社様も参加しております!是非この機会に、お話ししてみてくださーい!!」


拍手と歓声が上がる。


懇親会の運営は、【パシフィックキッチン】に丸投げした。

皿橋たちの日当くらいは頂いているが、中抜きはしてないからね。


なんかエビとオリーブが爪楊枝に刺さったようなやつをつまみ食いする。

うんうん、なかなか美味い。

【パシフィックキッチン】の仕切りは確かだね。


「岸谷さん、ご無沙汰してます!!」


「おや、青山さん。

今回は引き受けて頂いて、ありがとうございます」


大袈裟な握手を受ける。


 30代後半、見事なツーブロックに、日焼けした肌。

暑苦しい濃い顔つきに、信じられないほど白い歯。

ブルーに縦縞のタイトなスーツ。

メーカーのよくわからんキンキラキンの腕時計。

誰あろう、【パシフィックキッチン】の社長、青山さんだ。

悪い人ではないのだが、豪太郎とは別の意味でヤバい、ギラギラ系の人だ。


とは言え、見た目に反してブラックな経営はしていない。

親分気質というか、部下に見栄を張るタイプで、末端に至るまで待遇はそれほど悪くないらしい。

こまめに現場に顔を出して酒を奢ったりするようだ。

時折、バイトの女の子を口説いてお持ち帰りすることもあると聞くがね……。

上場したなら、慎重になって欲しいものだ。


「いえいえ、こんな有意義なイベントを仕切らせて頂いて、願ったり叶ったりですよ!」


 お世辞抜きで、そういう側面はあるのかもしれない。

【パシフィックキッチン】は、アメリカからドーナツ屋やらホットドッグ屋やらライセンスしてもらって、輸入しては手堅く小金を稼ぐ小規模な会社だったが、ウチと関わるようになって、経営が軌道に乗り始めたらしい。


 【Lang-Lang Cha】や【シリコンズゴールド】の成功で、今年の初めにJASDAQに上場。別事業の居酒屋のチェーン展開も、上手く行ってるらしい。そして、こういった公的機関が絡む案件は、売上というよりは宣伝効果、つまり株価にヒットする。

ここいらで何かニュースバリューの欲しい青山さんとしては、なるほど願ったり叶ったり、は言い得て妙と言う事だ。


「いつもお世話になりっぱなしです」


「本日は奥様は?」


「今日はあいにくと来ておりません」


「そうですか。

いつもお世話になっておりますので、よろしくお伝えください!」


【パシフィックキッチン】と言えば、妙子だからな。

タイトな交渉となりがちな利益配分の交渉なども、基本的には妙子が前面に立って話をしている。

青山さんは見ての通り、一筋縄ではいかないエグみの強い相手なのだが、妙子にかかるとあら不思議。

平和裡に、かつウチに有利な形で交渉をまとめてくる。

我が妻ながら、なんと恐ろしい。


揃いのスーツのツーブロッカーズを引き連れて、颯爽と青山さんは去っていった。


やっぱ何かヤダ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ