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118/200

ネオンテトラは勇躍す 30

4-30


-2003年10月-


 「というわけで、この子がストーカー被害に会ってるんです」


 渋谷の明治通り沿いに、【シャインガレット】の入っているビルがある。その7階がオフィスだ。

今日は、青木さんに呼ばれて、【シャインガレット】の会議室にやってきた。

青木さんと、一人のスタッフが居て、非常に困った表情をしている。


この手の話か……。


 ストーカー事件は、1990年代後半から社会問題となるほどに凶悪化してきた。別れ話でモメて、男が付き纏うケースが多いが、女性側が知らないパターンもあるのが特徴だ。


古くは痴情のもつれで片付けられていたものに、ストーカーという言葉を当てはめて分類化しただけなのかもしれない。


警察が判断に困るケースが多々あり、事件になるのを止められない場合がある。


 ともかく、現在ストーカーに付き纏われている【シャインガレット】のスタッフが、青木さんと共に座っている。


「一方的に想いを綴った、気持ち悪い手紙が定期的にポストに入っているし、部屋の前に花束が置いてあったこともあります。夜道も誰かに後をつけられているような気がします。

……ほんとに私、怖くて怖くて」


こちらが知らないパターンか。

こういう奴は、相手にされないとそのうち実力行使に出る。

今は大丈夫だとしても、危ない。


 この子は、園田 絵里奈(そのだ えりな)。23歳。

【シャインガレット】から、某家電メーカーの受付嬢として派遣されている。

あまり浮ついた所がなく、お金を貯めて地元の福岡でカフェを開くのが夢なんだそうだ。


綺麗に切り揃えられた前髪に、ストレートのロングヘアー。

やや丸顔でぱっちりとした瞳に、ぷくりとした唇。

均整の取れた見事なスタイル。

こちらを見上げるような上目遣いの眼差しが、何となく大人しそうな印象を与える。

内面はよく知らないが、外見だけで言えば、清楚系のそそるタイプだ。

綺麗どころの多い【シャインガレット】でも、受付嬢としてエース級の人気がある。


はっきり言って、俺も好きな感じだ!

全男子が好きなやつだ!

好きだよ!悪いかよ!

おくびにも出さないけどね!妙子がいるからね!


 「しばらく様子を見ようかと思っていまして、横浜のビジネスホテルに一週間ほど避難させます。その間仕事も休むことになりますが、問題ないでしょうか?」


「ああ。それで良い」


それで俺に承認を貰いに来たわけね。

青木さんの権限でやっちゃって良いんだけど、お堅いなぁ。


 「では、園田さん。

書類に記入して貰いますので、少々お待ちください」


「はい。ありがとうございます」


 青木さんが会議室を出ていくと、当然、俺と園田さんの二人きりになる。これは、気まずい沈黙が流れるパターンだ。

その前に手を打たないと!


「大変だったね。

まあ、しばらく気分転換すると良い」


「はい、ありがとうございます。

……あの、社長?」


「ん?」


何をモジモジしてるんだ?


「あの、良かったら、たまにで良いので、社長にも様子を見に来て欲しいんですが……」


「ああ、心細いかもしれないよな。

わかった」


頬を染めて言われると、期待して良いやつなのかな?って勘違いしてしま……


あ!

これ、安請け合いしちゃいけないやつ?


「良かった!!

お待ちしてますね!」


「あ、ああ」


しまったーー!

青木さんがいないタイミングを見計らって、というのも考慮すべきだった……。

こんな可愛い子に、はにかみながら言われたら、そら即答しちゃうって!

ズルいって!


いやいや、俺の考え過ぎ、ってセンも捨てきれない。

本当に心細いだけかもしれない!

そうだ!きっとそうなんだ!!

可哀想にっ!!



 「あら、どうしたんですか社長?

難しい顔して」


青木さんが書類を持って帰って来た。

怪訝そうな顔をしている。


「あ、いや。何でもない」


「それでは園田さん、いくつか書類にサインしてくださいね」


「はい」







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