ネオンテトラは勇躍す 22
4-22
行く前は、みんな別行動しよう、という話だったのだが、結局花明院の仕切りで、団体行動することになった。
詳しい人に案内してもらうのが一番だ、という常識的な判断と、放っておくと、何をしでかすかわからない連中がいるからだ。
家を案内しただけなのに、憔悴しきった表情を浮かべていた道晴が、その日の宴会で強く進言したことが大きい。
俺は、妙子と二人でのんびり過ごしたかったのだが……。
「はいはい!みんな固まってー!
GWで人出が多いから、はぐれたら最後だよ!
探さないからね!」
いつもの黒スーツスタイル。
花明院家の家紋の入った旗を振る、花明院の仕切りは頼もしい。もはや仕事だな。
花明院、すまんなぁ。
GWの嵐山は、観光客で大混雑していた。
とは言っても、日本人ばかりだし、修学旅行シーズンでもないので、まだ統制が取れている感じはする。
京都嵐山は、有名な観光地だ。
寺社の他、竹林の小径や、嵐山登山鉄道などがあり、結構自然豊かな場所なのだが、メインストリートは、雑多なショップが軒を連ねている。
軽井沢や、鎌倉の小町通り辺りと雰囲気は近い。
山と反対側に行くと、これまた有名な渡月橋に出る。
「おお!人力車ではないか!
ワシはあれに乗るぞ!楓、あないせよ!」
「寝言は寝てから言いな。
ほら、邪魔だからこっちだよ!
恵さん、悠華を見てて!」
「はーい」
メグの本名は、小沢 恵と言う。
メグは源氏名というか、愛称なのだ。
「人力車のお兄さん、たくましいわぁ」
「ぼさっとしない!行くよ!」
ちなみにマキは、小山田 真希と言う。
「わぁ!抹茶焼き芋ティラミスだって!
これ買おう!」
「沙苗、後にしな!まずは神社に行くよ!」
「楓さん、トイレ!」
「芳江!だから出る前に行っとけ、って言ったでしょ!」
「えー、でも……」
「仕方ない。
みんな!この店の前で5分休憩するよ!!
お手洗いに行きたい人は、駅のとこにあるから、そこ行って!くれぐれも、あまり遠くに行かないように!
はぐれたら見捨てるからね!!」
といった具合で、大変安心感がある。
ちなみに俺の側には、小梅ちゃんが張り付いてくれている。
道晴は、花明院の指示であちこち走らされているようだ。
そんなこんなで、嵐山を観光した後、渡月橋を渡り、(道晴が手を回してくれた)老舗の旅館で昼食を取った。
もうこれ、立派な観光ツアーだよ。
「はいはーい!
この後ですが、二条城・京都御所ルートと、金閣寺ルートで分かれるよー!
宿に戻るのも良いけど、ちゃんと言ってからにしてね!」
昨日の宴会時に、意見が割れたので、ここで二手に分かれることになったのだ。
俺は金閣寺ルートだね。
なんか金ピカって、御利益ありそうだから。
賑やかな観光ツアーになったが、これはこれで良いもんだな、と思った。




