ネオンテトラは勇躍す 15
4-15
ぱん!
「じゃあ京都旅行の話です!」
「「「待ってました!」」」
「いつがいいですかね?」
「GWじゃない?
5月中旬からは、妙子が声をかけた海外のお客さんが何組か、予約を入れているから、受け入れ準備を進めないと」
「楓ちゃんの言う通りね!」
「2泊3日くらいですかね?」
「いいね!」
「わたしは……ん…着物が着たい…ぃぃ…かな?」
最上の着物姿か……見たい。
はっ!
そうだ!妙子にも着てもらおう!
似合うぞー!妙子は何を着ても似合うからな!
「……社長?社長!?」
「あ?なに?」
「なんか、だらしない顔してましたよ」
「そんなことはない」
「全員参加することになりました!
つきましては、旅費を経費で落としていいでしょうか?」
しっかりしてるよなぁ。
「……ああ、いいよ」
「ではみなさん!
出発までに、仕事を終わらせておくように!」
「「「「おおー!」」」」
-新宿-
【GOUCHI】の本社ビルは、新宿副都心に建っている。
電話回線工事から、携帯電話のアンテナ工事、ケーブル敷設から、関連する保守業務まで。
【NDDT】の民営化前から、電話会社の縁の下の力持ちとして、成長してきた。
経営の多角化に失敗して経営が傾いたが、社長が代替わりし、今は安定成長のレールに乗っている。
最近は携帯電話のアンテナ感度を良くするステッカーや、保護フィルム、ストラップも生産している。
そのグループ企業には、工事時の警備員や、施設保守のためのガードマン業務に端を発した【河内セキュリティパートナー】という警備会社がある。
グループ再編に辣腕を振るった現社長の、身辺警備も行っている。
その警備会社の一角に、【調査部】という調査専門の部署があり、その課長が、土方という男だ。
西新宿の本社ビル、その最上階に、【GOUCHI】の社長室がある。土方はそこに居た。
社長のデスクのそばで、立って後ろ手に手を組み、険しい表情で窓の外を見つめる男。
河内豪太郎である。
「河内さん、ようやく金の受け渡しの現場を押さえました」
A4の封筒を、デスクに置く。
「そうか。よくやった」
土方には、この大グループの頂点に立つこの男の、心の内はわからないが、少し安堵しているように、見えた。
役に立つことが出来、良かったと思った。
部署は違うが、身辺警護に関わる人間の話では、刃物を持った男を見た、ということは一度や二度ではなかったらしい。
恨まれるリスクを犯してでも、大鉈を振るったこの男を、土方は高く評価していた。
-夏子ちゃん、どうしてるっかな〜-
豪太郎は、ブレない男だった。
いや、ブレているのかもしれない。
いずれにしろ、肝の太い男だった。




