ネオンテトラは勇躍す 14
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「では次に、関西支社について。
楓ちゃん、よろしく」
「ほーい。
【花蓮峡】の人員は、25人になったよ。
営業先への根回しも終わったから、もう【シャインガレット】と合併しても大丈夫だよ」
「ありがとう、花明院。
折を見て合併を進めよう。【花蓮峡】の屋号は残した方がいいか?」
「そうだね。残した方がいいと思うよ。
京都の人たちは保守的だから」
「じゃあ、そのようにしよう」
先んじて、【シャインガレット】は【ブラックエンゼル】の子会社になっている。同じポジションの【花蓮峡】を吸収合併することは、既定路線だ。
「あと、会長から頼まれてた京町家5軒のリノベーション、ほぼ終わったよ。今はテストで、ウチの父親を数日住まわせてみたりしてる」
「おお、終わったか!
俺も行くぞ!」
「え、ズルい!」
「私も行きたい!」
「私も!」
「わかったよ。みんなで滞在テストしような……」
「「「「「やったー!!!」」」」」
昨年、花明院に5軒の京町家を探してもらい、一軒あたり1000万とかで購入した。俺の個人資産でね。
そしてそのまま花明院家にリフォーム会社を紹介してもらい、小洒落たコンドミニアムにリノベーションした。
それが終わったのだ。
一軒あたり4、5人は滞在可能だ。
ちなみに、俺が購入して、俺の金でリノベーションした。
こんな新規事業、【ブラックエンゼル】や【シャインガレット】の経費使えないしな。
だから俺の好きにしていいはずなのに、何故みんなを招待する流れになっているのか……?
謎である。
凛子を預けて、妙子としっぽり京都旅行の夢が……。
「では京都旅行の話は後でするとして、
出資関連について、沙苗ちゃん」
「はい。
かねてよりご報告していましたが、かなり景気が悪く、倒産した会社が二社あります」
「うん。それは仕方ない。
金に困ってそうなら、他の投資先に斡旋してやってくれ」
「はい、もちろんです。
その他の会社は、踏ん張っています。
また、二社が上場準備に入りました」
「ほう」
「いずれもネット通販関連です。
ひとつは化粧品、ひとつはスイーツ関連ですね。
上場と共にイグジット予定です」
「うん。任せる」
俺の中では、ベンチャーへの出資は、慈善事業だと割り切っている。年間一億くらいなら、綺麗な事業さえしていればどこへ出資するのも構わない。
どちらかといえば、より良い仕事が出来るよう、失敗しても次を目指せるよう、見守ることを重視している。
「とにかく、出資先間の、シナジー効果を重視してくれ。
足りないところを補えるように動いてあげるのが、俺たちの役目だ」
「承知しました。
皿橋先輩や芳江ちゃんに手伝って頂いて、こまめにフォローするようにします」
とは言え、成功してもらって、こっちに返ってくるなら、それに越したことはない。
「現在出資検討している会社は?」
「はい、三社ほどあります。が……」
「ん?」
「最近、ベンチャーブームのようなものが起こってまして……。
調子の良いことを言って出資を募り、お金を集めては計画的に倒産するような事例が見られますので、慎重に検討するようにしています」
「なるほど……」
出資詐欺がもう出始めているか。
「より人を見て、より調査を徹底して、進めるようにしてくれ。我々が見るべきは-」
「思い、ですよね」
「そうだ。忘れないでくれ。
青木さんや悠華さんのように、思いが真っ直ぐであれば、それだけ寄り添える。金儲けは、後からついてくるものだ」
「はい、肝に銘じておきます」
「いつも心がけてますよ!」
二戸と共に、出資周りをみている皿橋。
最上に調査もさせているので、ゴミを拾う事はないだろうが……。
「うむ。頼む」
「沙苗ちゃん。少額出資の方は?」
「そうですね。
何と言いますか……起業のためのセミナーの方が人気になっていまして……。
起業に興味のある女性たちのサロンみたいになっています。そして、そこに集まる女性たちに興味を持った投資家や政府、自治体からの問い合わせが、結構来ます」
「なるほど……なんか別の方向に盛り上がっているな」
「はい。
当社のセミナーは女性限定ですし、お金も取りません。
こちらが出資検討するための条件として設定しているので、当然ですが……。
【シャインガレット】の多目的ホールを使っていますから、隣で働いているのも女性ばかりです。
安心感があるのかもしれません」
「うむ……」
「実際、当社のセミナーを受けて、出資を元にパン屋やカフェを開店した方もいますから、そういった方達がメディアの取材などを受けて当社の話をして広まり、そして人が集まり……といったことになっています。
女性の社長は珍しいですから、耳目を集めやすいですよね」
何かの宣伝になればいい、と思ってやっていることではあるが……。ならいっそ、もう少し踏み込んでみてもいいか?
「セミナーって月一だったよね?」
「はい。そうです」
「じゃあセミナーの後に、懇親会やれば?
政府や投資家からお金貰えるなら貰ってさ」
自治体や政府は、女性の社会進出に貢献してますよ、というアピールがしたいんだろう。なら話に乗ってやっても良い。
「ああ、良いかもしれませんね!
それなら招待客としてお呼び出来ますし。
しかし、ウチから他に流れてしまいませんか?
公的な補助金の話も出るでしょうし」
「良いじゃん。
選択肢は多くて困ることはない。知識もな。
どうしてもウチを選んでもらわないといけない理由はないんだし」
参加者が増えても、ウチから出資する金額は、年間で上限を決めている。儲けがないからな。
利益の分配なんて形だけの微々たるものだし、ほとんど制約も設けていない。経営が軌道に乗って俺たちに相談することもなくなったら、色を付けて返すことで、出資の解消すら可能だ。
「ですね!」
「それいいですね!私司会やります!」
皿橋は、こういうの好きだよな。
「運営は出資先のどこかか、【パシフィックキッチン】にやって貰えばいい。うちの手間はあまりかけないようにな」
「承知しました」




