第二十三話
投稿が一日遅れていました。誠に申し訳ございませんでした。
リレイスに帰還後、再び研究室に籠る澪。世界情報記憶装置にさらに解析をかけ、あらゆる情報を得る『深奥解析』にかけていた。かっけぇ。
その間、俺達はというと……。
「ここ堕者多すぎねえっ!?」ズバアッ!
「口動かすな! 手ェ動かせ海翔! 気抜いてたら死ぬぜぇっ!」バキュン!
「はいよいっしょー!」ドゴォンッ!
狩りに駆り出されていた。
世界情報記憶装置の稼働に結構な量のエレクテレスを使う。そのため、大量の堕者を狩り、エレクテレスを得る必要がある。
今回は少し遠出をし、千葉の方まで来ていた。
メンバーは俺、海翔、稲盛、沙紀の四人だ。
澪が開発したアルネットというエレクテレス専用磁石使い、効率よく集めてゆく。いちいち拾い集めなくていいからめっちゃ楽。
それに……
「ッ!? やっべぇ……!」
四人の目の前に迫る巨大な堕者。肩や腰回りに大砲を装着しているようだ。
海翔は〈イフェット〉を発動し、沙紀と稲盛を攫う。一斉射撃から逃れるためだ。しかし、悠は違った。
また特殊なタイプな堕者がでてきたのか、と呟く悠。スタスタと堕者に向かってゆく。
「アア゛?」ガチャン!
「どうせなら、試してみるか」
「ハンッ、オオオオッ!」
全ての砲身をこちらに向ける堕者。キュイイインッという音を鳴らし、チャージをしているようだ。
そして、チャージしきったのか、紫色の光をこちらに放出してきた。
ゴガガガガガッ! と地面を抉りながら迫る光だが、何の問題もない……と思う。
「無崩流・伍式」
右眼から紅い光を放つ悠が、光に向けてディヴァル・形態『白狐』を突き刺す。否、光にではなく、目の前の空間に向けて。
その瞬間、光はピンッ……という音を鳴らし、大気中に完全に停止した。
「!? ゴア!?」
いくら放出しようと全く進まない光。大気が、凪いでいるからだ。
そして、目の前に突き刺したディヴァルを右回りに回転させる。鍵を開けるように。
ガキンという音を出す空間。それにより、溜められていた光が一斉に跳ね返される。嵐のように回転を伴って。
「『凪嵐』」
ギャリギャリギャリギャリッ!
全ての光は放った堕者に返り、跡形もなく……いや、巨大なエレクテレスを落として消えた。
無崩流伍式、凪嵐。これは、遠距離攻撃に対して絶対的な力を持つ。右目を光らせる、つまり、〈絶対空間認知〉を発動した状態で、空気が固まる点を突くのが必要条件。つまり、俺しかできない。
こういう無崩流を試せるのも悪くない。
「……悠さぁ……。心臓に悪いからそういうのあらかじめ言ってくれねえ? マジで死んだと思ったんだけど」
「だだだ、だいぶ焦ったぁ……。明らかにアウトな光じゃん。なんで触れずに対応できるの? めっちゃ怖かった……」
「まあ、凪嵐が不発でも〈インフィニット〉のエネルギー大量放出で止めれたけどな。だいぶ強引だけど」
「つーかお前さ、なんで〈インフィニット〉とか〈可能性現滅〉とかを連発したり高出力で出せるようになったんだよ。前まですぐ死にそうになってたのに」
「知らね」
「ぶっ殺すぞ」
「ひっでえや」
本当に知らない。毎日使ってたらできるようになった。それだけ。
というか、今では〈インフィニット〉も余裕で使えるほどの低コスパになってきた。これまたなんでだ。
ホントよく分かんないな。
「まあ、そろそろいいだろ。巨大な結晶なんだし……って、うん?」
「? どしたー、悠」
「いや……堕者ってさ、強さに応じて落とすエレクテレスの量変わるじゃん? なのに、特殊個体だったら巨大なエレクテレスになるのなんなの? って思って」
「んー、特殊個体だからじゃないのか? 澪さんとか何か言ってなかったのか?」
「聞いたことないから、なにも」
「あー、それ私も考えたことあるけど、アレじゃない? 体が変異したときに、瘴気を吸った量とかじゃないの? もしくは、付けられた傷の量とか」
「それだったら、エレクテレスの数が増えるだけだろ? そうじゃなくて、巨大になるからさ。根本的に違うのかな~、って」
「私にそんなこと聞くなし」
「なんでやねん」
まあ、確かに澪に聞くしかないな。うん。
というわけで大量のエレクテレスを車に積み込み、爆速で帰る。
それを研究室まで運び、世界情報記憶装置のとなりの箱に入れる。
「ん、ありがと。これで当面の稼働には問題ないと思う」
「へっ、まあ余裕ってことよ! へっ」
「その、へっ、はなんなん?」
「へっ」
「なんやねん」
海翔の新たな口癖はともかく、これでようやく血成結晶を深く調べることができる。
なのでそこは澪に任せ、俺は俺で事務作業へ帰る。
ケカルセルトに接触するための書面を書かなければならない。
はーめんど。
「だいぶ書かなきゃならねえんだなぁ……。個人情報でも抜かれるんじゃなかろうか」
ありえない話ではない。相手は旧日本最大の国であり、もっと言えば謎の超素能力使いもめっちゃいる。何ができてもおかしくないのだ。
だが、接触しなければならない。この国を大きくしたいわけではないが、他国とのかかわりを持つことは重要だ。いざとなれば頼ることができるから。
だけどめんどくせえなぁ……。そうだ。あの人に任せよう。
あることを思い浮かべたので、急いで街へ出る。
原初の住民のもとに。
ドンドンドン!
「品川さん。いるー?」
『はーい。少し待ってください』
そう、品川さんだ。彼の事務作業能力は目を見張るものがある。そのため、時々仕事を押し付け……任せたりしている。
「今日も仕事ですか?」
「うん。ちょっと面倒なやつだけどいい?」
「はい、任せてください!」
この人は元社畜だそうだから、どんな仕事もあっさり引き受けてくれる。
国同士の関わりを持たせる書類を任せている時点でお察し。
「俺が書くべきところはもう書いてあるから、あとはこの国のところを書いて欲しい。簡単だけど量が多いからめんどい。俺はまた別の仕事があるからよろしく~」
「はい! 任されました!」
バタン!
……よし。仕事が一つ減った。あと二つ三つだ。
残りの仕事の大半はうちが攻撃受けてそう、ってのなんだけど。
ちょっと前に澪が解析かけて東北から来たっぽい、と判断した堕者たち。これをさらに虹夢さんに見てもらう。
詳しくは知らないが、彼女のモチーフ『観察者』による力で色々解析するとのこと。
真っ先にアーザレイルと組んでよかった。
ってか、解析にかけてもらったやつが帰って来るのって今日中じゃなかったっけ……。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「……来た。血成結晶の概要」
研究室にて澪が解析結果を眺めていた。
「……一時的に血中のネオクロイドに反応して濃度を高める……。つまり、出力が上がる。けど、おかしい。一時的な物のはず。でも、明らかに永久に強化できそう。この違和感……」
ぶつぶつと呟きながら部屋をぐるぐる歩き回る澪。かれこれ数分間考えているが、何も思い浮かばない。しかし、視界の端に移りこんだ物体が事態をさらに混乱させる。
「……血成……」
未だ三つしか作れていない希少な遺伝子確立液体。そのうちの一つを未知の素材の実験に使おうというのだ。
うーん、うーん、と考えた結果。
「まあ、どうせ誰にも使おうと思ってないし、いっか」
というわけで、使うことに。
血成を個体にするよりも血成結晶を液体にする方が簡単だと思ったので、結晶を加工した。
そして、互いの一部をさらに解析にかける。互いに血成の名を冠している。似たようなものでは? と思ったからだ。
解析をかけている間にも違う実験を進める。
互いを混ぜたり、燃やしたり、溶かしたり。とりあえず、思いつく限りのことをした。
その結果分かったこと。
血成結晶は、新たなステージへ至る手段である。
ガイアキューブとか書いてたらルービックキューブにはまりました。




