第十八話
お久しぶりです。二話目です。これから週一投稿になります。
【アーザレイル・皇の白塔】
最初にアーザレイルに来た時に見たあの塔は“皇の白塔”と呼ばれるらしい。
まあ、確かに王がいるもんな。
っと、それはいいとして。
今のところ、世界全体から見てもアーザレイルは小国だ。さらに、そんなアーザレイルよりもリレイスは弱い。
しかし、対等な関係だ。一方的な搾取、圧倒的な不平等などなく、互いに互いを尊重している。
そして今日は、完全な同盟を結ぶために来た。
今までも互いに協力したり貿易をしたりしていたが、条約を結ぶことも無く、同盟関係でもないあやふやな関係だった。それを、完全に“同盟”とするのだ。
アーザレイル側は五大臣と王が、リレイスからは六皇と王が、互いに最上位役だけで話し合う。
ちなみに、リレイスは放置していいのか? と思われそうだが、今日に向けて防衛機能を格段に上げてきた。数体の堕者なら殲滅できるだろう。
……心配要素である、他国の侵攻を感じ取ったら連絡するように品川さんに言ってある。あの人は俺の補佐役としてすごく頑張ってくれているからな。それに、すっごく有能。あの人いなかったらいまだ作業の半分も消化できていないだろうし。
「よく来てくれた。新興国家リレイスの諸君。儂は天粕 駕狼だ。よろしく頼む」
白いひげを生やした、ガッチリした体形のおじさんだな。やはり王。威厳が違う。額に刻まれた深い皴は苦労の証だろう。
「知っていると思うが、国家戦力管轄課代表取締役、渡辺 武蔵だ。よろしく頼む」
「うちもやな。国家経済管轄課代表取締役、金霧 千優です~。よろしゅうなぁ」
これまでも関りを持っていた二人。金霧さんとは商談、貿易を。渡辺さんとは戦力についてのアドバイスを受けていた。
さて、残りの三人は初めてだな。
最初に自己紹介を始めたのは、だいぶ幼く見える女性だ。ダボダボの黒いシャツを着ている。
「国家……情報管……轄課……代表……取締役の……虹夢……慧夢……よ、ろしく、おねがいしまクゥー」
「「「「「「「寝たぁ!?」」」」」」」
「すまない。虹夢は睡眠時間が短いため、どこでもすぐ寝るのだ。彼女の無礼に少し目をつぶっていてほしい」
「あ、はい……」
この人が、この国の機密情報を握ってる人……見えねえな。
「そう思っても……仕方、ないですね……。いつ、でも眠そうにしてますから……」
「!? なんで……」
「ここ、ろを読むくらいならでき、ますよ……。私、の、モチーフは、『観察者』……クゥー」
「観察者? どういう能力なんですか?」
「私たちもよく知らないのだ。この国の軍事に関してはよく知っていると思っていたのだが、彼女だけは本当に知らないのだ」
「まあ、情報を管理する者やからな。そう簡単には教えへんやろ」
「そうですねぇ。彼女はあらゆる情報を得る割には、自身のことは何も話しませんからねぇ」
「~ねぇ」という彼。まだ自己紹介をされていない。
クルンと曲がり、上を向いた黒い髭。見えているのか分からない細い目。
そして滲み出る変態臭。
「私はですねぇ。国家内務管轄課代表取締役の唐木 榔と言うんですねぇ。よろしくですねぇ」
「ふむ。彼は、アーザレイル内のことは殆ど知っている。どこに何の店があるかから、スラム街のゴミ箱の位置までよく把握している」
「そういわれると嬉しいですねぇ」
「で……も、この人、ロリコン、だから……」
「「「えっ……」」」
「お嬢さん方、あまり引かないでほしいですねぇ。あと、慧夢さん。しれっとばらすのはやめてほしいですねぇ」
「黙れロリコン」
滲み出る変態臭はロリコンだったのか。いや、まあ、人それぞれ趣味があるよな。うん。
そして、最後の人だ。
「はーい。私の番ね! 私は海原 葵! 国家産業管轄課代表取締役だよ! よろしく!」
「よろしくお願いします。海原さん」
「葵さんでいいよー!」
「彼女は、科学が限界まで発展した世界の遺物を拾い集め繋ぎ合わせる既存のやり方ではなく、“職人”や“匠”という人間の力を使おうとしている人だ。作ってほしいものを言えば何でも作ってくれるだろう」
「すごいでしょー!」
「何がすごいかってな? この娘、設計図も無しに全く知らん新しいもの作ったりするんよ。この皇の白塔の地下にある究極の循環器も、彼女が遊びで作ったものやからなぁ」
「発明家じゃねえか……。うちの澪みてーなもんだな」
「いや、私よりもすごい。私は設計図を作って、それをコンピューターに読み込ませて、ホログラムで現実に投影して作ってるから失敗しないだけ。彼女は設計図無しにそれをしている。本当にすごい」
「いやー、天才に褒められると嬉しいね! あはは!」
…………
アーザレイルの五大臣が自己紹介を終え、俺たちも自己紹介をした。特にキャラは濃くない……はずだ。
澪の場合「これが進化の大天才様ですねぇ。以後、よろしくですねぇ」「唐木。お前は黙るのだ」「御意」
沙紀の場合「わあ! この人が力の権化かぁ! かっこいいね!」「これ、褒められてるの?」
海翔の場合「ふむ。いかにも優等生という気配がするな。いつか、手合わせをしてみたい」「対人戦は無理っすよ。俺」
小柳の場合「よろしくでぇす! うぇい!」「元気な娘さんやなぁ。こっちまで元気になってしまうわ!」「ありがとうございますぅ! っしゃおれぇい!」「ミスクレイj……ぐへっ」
稲盛の場合「君がよく聞く厨ニ病の子だね! なんかやって見せてよ!」「おい悠。お前どんな説明したんだよ」「厨ニ病」「ざっけんな!」
小坂田の場合「き、みが……四次元……ポ〇ットを使う少年ですか……よろしくです」「四次元〇ケットを使う少年!? 間違えてないけどなんか悲しい!」
悠の場合「あんたたちの眼から見てどうや?」「これが金霧さんのお気に入りですか……いいですねぇ」「ぜひ手合わせを―――」「いいファルス持ってるね! 後で弄らせて!」「き……みの……モチーフは……」
そんな感じで自己紹介は済み、これからは二国の関係についてを話さなければならない。
目標は同盟を結ぶこと。恐らく、それは互いに同じ。しかし、そこで結ぶ条約の中身が違ってくる。
リレイスは様々な種類の物資が欲し、アーザレイルはうちの農産物を主に欲している。技術提供もそうだ。
条約……結びたいのだがよく分からないので、アーザレイル側に進行してもらう。
「では、これからは私が進行させてもらいますねぇ。では、互いに求めるものとその落としどころについて話し合いますかねぇ」
「そうだな。我が国としてはそちらの農産物、主に米が欲しい。空気は綺麗にできても、国内の食料を賄えるほどには作れないのだ。儂らも不定期に国を拡張しているが、田畑を拡張すると防衛機能が落ちる。そのバランスを取るのがとても難しいのだ」
「俺達としては様々な種類の物資が欲しいですね。常にエレクテレス不足ですから、メステリウムが作れず、国が狭い。こちらも拡張をしていますけど、やはり人口の増加に間に合ってませんからね」
「ならば、こちらはエレクテレスを、そちらは農産物を、の取引でよいな? あとは、関税いくらにするかについてだな」
そこで金霧さんが手を上げる。
「ここからは私の範囲ですからなぁ。うちが話させてもらいます。そうやな、エレクテレスの希少性、農産物の必要性を鑑みて、エレクテレスに100%、農産物に30%でどやろか?」
そこで我らが亮太が手を上げる。
「そこは個人課税の60%を互いにかけて解決しましょう。そもそもエレクテレスの希少性と言いますけど、堕者ならばそこら辺にわんさかいます。逆に農産物、つまり食料品は食料困難のこの世界ではとても希少ですよね? ならば、先ほどの逆に関税をかけるべき。でも、こちらとしてのエレクテレスの価値は高い。じゃあ60と60で解決しましょうと思ったわけです」
「おお、亮太の早口ラッシュ」
「悠黙れ」「うい」
「せやなぁ……今、アーザレイルとしても、リレイスとしても必要な物の価値高いからなぁ……ま、六十六十でええか。どうや? 駕狼さま」
「儂としては対国外のことはお前に一任してある。お前がそれでいいと思ったのならば、儂は許可するのみだ」
「じゃあ、交渉成立やな。この紙にサインし」
出された紙には先程の会話が簡潔にまとめられており、先に『甘粕駕浪』と書いてある。ペンを渡され、俺の名前を書こうとした。しかしその瞬間、いつかの言葉を思い出した。
『相手の提示する資料、契約書、情報、人……全て疑ってみなあかん』
ハッとし出された紙を見ると、『上記の会話に基づき、毎月互いの領地の10%を譲渡する』と書いてあるではないか。
……やってくれたなこの野郎。
「おっ、気付いたようやな。良かった良かった。こんな引っ掛けに気付かんやつらとは同盟を組む意味もない。駕狼さまも駕"浪”って書いてあるしな」
互いの署名が無ければこれの効力も完全には発揮しない。しかし、天粕駕“浪”さんが署名をしたものとし、こちらも俺の名前を書けば、リレイスは領土を譲渡、アーザレイルはなんのダメージも無い。
……いやこれ、いつかどこかの国と条約を結ぶときに騙されないようにしないとな。
「ま、これでテストは終了やな。これからもよろしくや」
「はい。こちらこそ、長い付き合いをよろしくお願いします」
長い話し合いを経て、条約を締結。少し雑談をしてから解散となった。
「ちょっとアーザレイル見て回るか~」『さーんせーい』
となったので、軽く観光をすることに。その間、葵さんにファルスを見てもらった。彼女曰く、
『ちょっとみんなのファルス見せてくれない? 本来の性能を使えてるかを見てみたくて。いい!?』
とのこと。
盗聴器等が仕掛けられていないとも限らないので、一応警戒はしておく。
…………
「めっちゃ楽しかった! 特に、あのゲームが楽しかった!」
「あの格闘系のアーケードね~。明日香ちゃん、三十連敗だったけど」
「うるさいやい! 海翔の方がひどかっただろ! レベル1のCPに五十連敗だぞ!」「ガハッ」
「でも、悠と亮太は本当にすごかった。レベル99のCP相手に負けなし。100ケルドで無限にプレイしてた」
「ん~、俺たちは結構ゲーセンに籠ってたからな。その分いろんなゲームを楽しんださ。なあ?」
「なー! その代わり悠はクレーンゲームが、俺は頭脳系ゲームができないけどな!」
「へえ。私あんまりゲームセンターに行かないからそういうのすごいと思うわ~」
「ん、私は行ったことがない。だから少し憧れはあった。今日で叶ったけど」
普通にゲームセンターで遊んだ。貯めたケルドで。国家予算とか言うんじゃねえぞ。
にしても、国民全員がカード持ってんだな……うちも早く配らないと。
さ、もうそろ帰るか。
と思ったところで品川さんからイヤホンへ連絡が。
『すみません、今大丈夫ですか?』
『ああ、どうした?』
『堕者ではないのですが……なにやら怪しい人間がうろうろしていますので、一応連絡をしました』
『どんな格好をしている? 簡単な説明でいい』
『なんか……黒い外套を纏っています。その外套に魔法陣のような模様が描かれていて、少し怪しい雰囲気を醸し出していますね』
『ふーん……分かった。念のためすぐ帰る』
『分かりました』
プツッ
「ん~? どうしたの、悠?」
「なんか怪しい奴いるから帰ってきてほしいって品川さんから連絡があった。葵さんからファルスを返してもらって、さっさと帰ろう」
「了解。怪しいやつってどんな奴なんだろうな? まさか、敵対国か……?」
「だとしても一人で来るのがな~。かといって入国してない、ってので怪しいし……」
「まあまあ! 帰ればいい話じゃん! さー、帰ろ帰ろ!」
皇の白塔近くの工房へ行き、預けていたファルスを返してもらう。
その際、葵さんから軽い説明を受けた。
各ファルスの改良についてだ(俺以外の)。
俺のファルスは特殊なようで、元から色々隠されていたようだ。それを葵さんが見つけ、開放してくれた。
改良なんてものじゃない。進化だ。
明らかな強化にウキウキしていると、リレイス本土から全体連絡が来た。
品川さんだ。
『先ほどの黒い外套を纏っている男が連れてきたかどうかは分からないんですけど……大量の堕者が来ました。センサーにかかっているだけでも千を超えています』
『ほう……じゃあ、ちょうどいいな』
『『『『『『『?』』』』』』』
『強化されたファルスを試すときだ。それに、フェラーリもな。ただ、俺達が間に合わなかったときのために防衛機構Ⅰを展開していてくれ』
『了解しました』
プツッ
「とか言ってるが、俺は少しあの人たちに用がある。まあ、足りるだろうから六人で先に殺っててくれ」
「んー分かった。仕上げるんだね? でも、どうやって帰って来るの?」
「アーザレイルに頼る」
「じゃ、先に帰っとくぜ。また後でな。悠」
「おう。海翔、一旦任せたぞ」
「任せろ」
王が、破壊神が、預言者が、疾風が、治癒師が、毒使いが、荷物持ちが
暴れる。




