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世界が滅ぶ前に平和を願って何が悪い?  作者: 如月 弥生
第一章 建国編
11/33

第十一話

また投稿忘れてましたァ! すいませんでしたァ!

フオオオオオオンッ!!!


「ひゃはははははっ! 爆走爆走ゥ! ひゃっはっはぁ!」


「やっべえ! 悠が壊れた! ハイテンションになってる!」


「これが深夜テンションというもの……勉強になった」


「真白さんも何言ってんの!? 今真昼だよ!?」


 今、俺たちは荒野を車で爆走している。

何で車に乗ってるかって? 理由はいくつかある。


 まず、壊れていた車を沙紀が直した。これにより、近くにあった高級車(フェラーリ)に乗ることができた。

 次に、運転技術。これは、亮太が完璧に運転できるそうなのでやってもらっている。

『高二のお前がなんで運転できるんだよ?』

『ひ・み・t……』 パキッ、パキッ


……。


『……年齢を偽って、保険証とかも捏造して一回運転免許を取りに行ったんだよ。そしたら、あっさり取れた』

『もしもしポリスメン?』

『やめろや。仕方なかったんだよ。徒歩で旅とかめんどくさかったからさぁ』

『澪?』

『ギルティ』

『なんでぇ!?』


 というわけで亮太に運転してもらってる。

三つ目。走っていってたらだいぶ遅くなる。だから、車でとばす。

以上だ。


「それで? このY字路をどっち?」


「どっちでも最終的な距離は変わんない。どっちでもいいぞ」


「りょうか~い」


 そう言い、亮太は左にハンドルをきろうとする。その刹那、澪が声を上げた。


「! ダメ。亮太、右に行って」


「? なんで?」


「左、大量の堕者(ロスト)が襲ってくる。右なら一体も遭遇しない」


「あっ、分かりました。“預言者”の言うことにはちゃんと従っておきます」


「よろしい」


 相変わらず未来予知って強い……そう実感した悠であった。



…………三時間後



「さすがに法律全無視で来たから早かったな……」


「……んんっ。予知した未来と現実の景色で酔いそう」


「車酔いですか? いったん休んでてくださいね~」


 俺たちはアーザレイルの防壁の目の前にいた。相変わらずのメステリウム製。そこは何処の国でも変わらないようだ。

まあ、コストと耐久性がいい感じなのはメステリウムぐらいしかねえしな。


「じゃあ、売りに行くか。小林のポーションとエレクテレス」


「旅商人に任せろ! 交渉術は結構学んだからな。こちらの不利が無いようにしっかり交渉する!」


「私が未来を視て可能性を反映させる。このマイク機能付きイヤホンで会話ができるから」


 そういう澪の耳には白いイヤホンが入っていた。エレクテレスのエネルギー循環機構を使ったバッテリー無尽蔵の超高性能イヤホンだ。

悠には黒、亮太にはライトサックスブルーという、水色と青色の間のような色のイヤホンが渡されている。本人の好きな色となっている。


「じゃあ、俺が可能性を提示する。その可能性を澪が選択してくれ」


「了解」


「あれ? 俺いる?」


 最善の選択を歩み続けるのに俺の話術いる? と悲しむ亮太。そんなことにかまわず、二人の門番へ話しかける悠。


「すみません。入国したいのですが、よろしいですか?」


「あ? なんだガキが。この国に住みてえのか? 何か渡してくれたら入れてやるよ」


「ぐへへへへ。なんならその嬢ちゃんを渡してくれてもいいんだぜ? なあ兄ちゃん?」


 下卑た笑いをする門番二人に対して、営業スマイルのまま固まる悠。後ろの亮太は混乱し、澪は引いていた。片手をエリエルに手をかけて。

しかし、悠は問題を起こすまいと笑顔で話しかけ―――ることは無く、真顔で言った。


「この国に入れろって言ってんだよ。てめえら下っ端に構ってる暇はねえ。いいからさっさと門を開け。なんか条件があるんだったら言え」


「んなっ……!? このガキ……黙ってれば調子に乗りやがって!」


「ああ? 黙ってねえだろうが。それに、先に喧嘩を売ってきたのはてめえらだ。文句あるか?」


 そういい、目で脅す悠。一瞬、門番たちが恐怖を抱いたが、自分たちに反抗するものを排除しようと自身の武器(ファルス)を取り出す。どちらも直剣のようだ。

一方悠は、「終末世界で門を預かる立場だ。それなりに強いのだろう。もし戦うならば無傷は難しいな……。ま、戦うことは無いが」と考えていた。なぜなら、これから戦わないと分かっているからだ。

 悠の〈絶対空間認知〉は文字通り()()。指定した空間を完全な情報で認識する。つまり、その門の向こうにいる人を認知している。


ピッピッピッピッ、プシューッ!


「「んなっ!?」」


「どうしたのかね、君たち。彼が何かしたのか?」


「え、えっと……」

「あの……」


「……ふむ。君たちは明日から無職になる。その覚悟はできたかな?」


「「えっ!?」」


「最初に君たちに質問したが、あれは嘘だ。話は全て聞いていた。まさか、アーザレイルの門番に君たちのような者がいるとはな……なんとも嘆かわしい」


「ちょっと、待ってください! 最初に喧嘩を吹っ掛けてきたのはあっちで……!」

「そ、そうっす! あっちが、てめえら下っ端に構ってる暇はねえって言うから……!」


「ふむ、聞いていなかったのか? 私は、()()()()聞いていると言ったのだ。『なんだガキが。何か渡してくれたら入れてやるよ』という言葉も、『なんならその嬢ちゃんを渡してくれてもいいんだぜ?』という言葉も聞こえている。諦めたまえ」


「くっ……!」

「くっそぉ! せっかくここまでうまいこと演技してやってきたってのに……」


 圧倒的な強者感。絶対的な権力を有す、アーザレイルの()()()の一人。

その軍服を着る中年男性は、とてつもない威圧感を出していた。

渡辺(わたなべ) 武蔵(むさし)。国家戦力管轄課のトップ。この国の戦力は彼に一任されている。


「よく来てくれた。新たなる国家の王。私たちは君たちを歓迎する」


「? 俺が来ることを知っていたと? ってか、王……」


「ああ、そこのお嬢さんから連絡を貰ったからね。突然、国家情報管轄課にメッセージが送られてきたから何事かと思ったのだが、まさか貿易をしたいとの連絡とは思いもしなかった」


「……ん。ごめんなさい」


「いや、いいんだ。それより、国家経済管轄課のトップ、金霧に会いに行こうか。私が案内するが、これから会議なんだ。急ごう」


「あっ、はい」


 忙しい渡辺さんに付いて行きアーザレイル内部へ。

当然だが、リレイスとは違い、内部がしっかりしている。民家があるだけで十分だ。

 そして、一番興味深いのはあそこ。この国の中央にある塔だ。うちでいうベースだろうか? いわば城だな。あそこに王と五大臣がいるのか。


 そのまま色々見ながら歩いていると、こちらもそこら辺の市民にじろじろ見られる。悪かったな、見たことない顔で! この国の住人じゃなくて!


 そして、もう少し歩くと、小さめのビルに着いた。素材は全てメステリウムだろうな。


「着いた。この扉の奥に彼女がいる。彼女に交渉し、信頼を勝ち取れば他の五大臣に提案してもらえるかもしれない。そこでも通れば王が最終決定をするだろう。頑張りたまえ」


「はい。ありがとうございます」


「……君たちは高校二年生と言ったね? そんな子たちが建国をするとは……この世界も今はそんなレベルなのか。いや、悪く言うつもりはない。すまないな。……五分後に会議があるんだ。失礼する」


「ああ、はい……」


 ……まあ、そう思われても仕方がない。まだ高校二年生。一般的には子供だったのだ。

しかし、今の世ではそんなものは関係ない。行動を起こした者が生き残る世界だ。子供も大人も無い。


 っと、これからは商談に集中しないと。

これは絶対に成功させなければならない。どれだけ身を滅ぼそうとも。


……あれ、そういえば、武器(ファルス)は回収されなかったけど、いいのか? 代表取締役との対面、武器を持っていいはずがない。まあ、気にしても変わんねえしな。


……ふう~

Are you ready?


「ん、私は眼を酷使する」


「俺もところどころサポートするから、任せとけ!」


「さあ、行こう」


コンコン


「どうぞぉ。入ってええよ~」


「「失礼します」」

「しっ、失礼します」


「あぁ、今日来るって言っってはった、リレイスのお人やんな? うちは、国家経済管轄課の代表取締役、金霧(かなぎり) 千優(ちひろ)と申します。以後、よろしゅうなぁ」


 そう言い、彼女は名刺を渡してきた。以外にも律儀だ。

赤に黒色の刺繍が入った着物を身に纏う彼女は、いわゆる京都のお姉さんのようだった。いや、実際に京都に行ったことないから知らねえけど。


「いや~、今日だけ予定が空いてたんよ。アポ取れてよかったなぁ」


「はい。お時間いただきありがとうございます。今回は、我が国で造り出した『ポーション』をアーザレイルで扱っている魚介類と交換できないかの交渉しに来ました」


「ポーション? と言われますと……ああ、あの国でも扱ってましたなぁ。粗悪品ですけど……」


「はい? 違う国でもポーションを扱っているのですか?」


「ええ、扱っていはりましたよ? まあ、十二本飲んでようやく太刀傷が治るレベルというので、商談は破棄させていただきましたけどねぇ」


 その瞬間、俺がイヤホンを通じて澪に可能性を提示する。


1の可能性とその未来

悠『そうなんですか? うちで扱うポーションは、たった一本飲むだけで傷が消えますし、副作用が無いことは実証済みです。どうでしょう?』

『うーん、回復薬は確かに必要です……けれど、そこまで争いがあるわけじゃありませんしなぁ。時々ある堕者(ロスト)達の襲撃の際に怪我人が出るくらいですし』

『そうですか……』


2,『なるほど。では、我が国のポーションをハイポーションと呼びますかね』

『ハイポーション? それは、どういうことですかねぇ?』

『普通のポーションがそれほどの回復量なのでしょう? 私たちのポーションは経った一本。いや、一口で傷が癒えますので、ハイポーションでは? と思っただけです』

『ほう……どないなもんか、見せていただけます?』


 よし、2だな。相手のより効果が大きいことを暗に知らせ、興味を持たせる方法。

この間約0.1秒。


「なるほど、では―――」



…………



「これが現物です。……亮太」


「おっと、〈ディメンション〉」


 亮太がつぶやくと、目の前に黒い空間が現れた。

コイツの〈ディメンション〉はいわばどこでも四次元空間。その中に手を突っ込み、ポーションを取り出す。ちなみに、別に手を突っ込んだり、四次元空間を作らなくても、取り出したいものをイメージすると出て来るらしい。


「……なるほど。四次元空間を持ち運べる……これは、利用価値がありそうですなぁ……」


「? 何か?」


「いいえ、何もぉ? どうぞ、プレゼンを続けなさんな」


「……とりあえず……亮太、実演してくれ」


「? ご自分で試されないんですね? まさか、怪我をするのが怖いとか?」


「俺の超素能力の一つに状態異常無効があるんです。なので、副作用があっても分からないでしょう? ならば、彼に試させるのが得策のはず。相手に応えてもらうならば、こちらも誠意をもってプレゼンをします」


「……なるほどなぁ……挑発にも応じへん。ええなぁ、この子」


 亮太が俺の前に胸を突き出してきたので、ディヴァルにて斬りつける。

亮太の胸に、浅いが大きな太刀傷が付いた。それにより、部屋に血が飛び散ってしまったが、そうならないように、澪が未来を視て空中でふき取るという神業を披露した。


 そして、亮太がポーションを飲む。すると、全身が緑に発光し、傷は癒えていた。

金霧さんは、目を細め、面白そうに見ていた。


「自分の仲間を何の躊躇いもなく斬りつけるんですなぁ。もしかしたら死んでたかもしれないというのに」


「これが、仲間を信じるってことですから。俺は、悠の手加減も信じたし、稲盛……このポーションの開発者の力も信じてたんで、絶対大丈夫だと思ってましたから。それに、もし死ぬとなっても、真白さんがその未来を回避してくれると信じてましたし。あと、金霧さんも」


「信じる……いい言葉やなぁ。()()()()()()()()()


「……どういうことです?」


「ええか? 商談というのは、自分の利益だけを考えるもんでもないけどな? 自分の利益を考えへんと、相手に喰われてしまう。そのへんの兼ね合いをどうするかを決めるのが、商談ってもんや。やからこそ、相手を完全に信じたらあかんで? 相手の提示する資料、契約書、情報、人……全て疑ってみなあかん。これも一種の戦いやからな」


「はい……分かりました。ありがとうございます」


「ええんよええんよ。それで、うちとしてはこれをいくらか買い取って、まずは試してみたいんやけど、いくらで売ってくれるん?」


「「「えっ!」」」


「ポーションと魚介類の交換やったら、価値が合わへんやろ? やったら、ケルドで統一した方が早いからなぁ」


「なるほど……(やべえ。値段とか決めてねえ)」


「……(ん、このまま話を進めれば、買い取ってくれる最大金額は、一個当たり千ケルド。で、持ってきたのは約千本。だいたい百万稼げる。どうする?)」


「……(あっ、俺が最大金額二千ケルドにしようか? そんぐらいのスキルは学んだぜ?)」


「……(分かった。信じるからな、亮太)」


 イヤホンにて会話し、決めた俺達。亮太に託すと。

確かにこいつ、世界を旅した旅商人だ。いろんなスキルを磨いてたんだよな。

任せるぞ。


「そうですねぇ……予定で言えば、一本一万ケルドで売る予定だったんですけどぉ……」


「(ほぉ……)それやったら大量に買い取ることはできませんなぁ……それほど重宝するわけでもないし……」


「ですよねぇ……でも、俺達来る途中で見たんですよね」


「何を?」


「ここに向かう堕者(ロスト)の群れですよ。結構な量がいましたから、大規模な戦闘になるんじゃないかなって思うんですよね」


「それは大変やなぁ。どこらへんで見つけたん?」


「えっ? ここに来る途中の街のほ―――」


「そうですね。堕者(ロスト)たちの群れは、山崎との県境辺りで見た気がします。正確には分からないんですけど」


「そうなんか……この国の情報管轄課は周辺約三キロの範囲を常に認知しとるから、見つからんのはおかしいよなぁと思ってたんよ」


「でっ、ですよねぇ~!」


 亮太が見た堕者(ロスト)の群れというのは嘘だ。なぜなら俺たちは堕者(ロスト)のいない道を通ってきたから、遭遇するはずがないのだ。

そして、あのまま「街の方で見た」と亮太が言ったら、即座にばれていただろう。そういう未来を見せられた。澪の予知ほんとにチートだわ。

そして、金霧千優。本当に油断ならない女性だ。


「メステリウム製の壁やから、突破されんのとちゃう? なら、安全に対処できるやろ?」


「そっ、それは……」


「群れの中には変異個体もいました。角が青色に光っている奴です。あいつならば、意外と簡単に突破できるのでは? と思います」


「せやなぁ。あいつらは他のとは一線を画す。あんたらも接敵したら気を付けるんやで」


「はい。で、それ(戦闘)に対しての備えとしても、うちのポーションを売りに来たのです」


「まあ、確かになぁ。短いスパンで群れが来た時が怖いんよなぁ。こちらの戦闘要員がいなくなった時に来るのが。んー、でも、いくら何でも一万はなぁ……高すぎるわ。(まっ、面白い会話できたし、誘いに乗ってあげるのも、悪くないやろ)()()()()()()()()()()()()


「! そうですね、だったら、初回お試しとして、二千ケルドでご購入していただくのはどうでしょうか?」


「(ふぅ~ん。この子、高二にしては……いや、そんなこといったらあかんな。流石、元旅商人って褒めなな。)ええで。お試しやけど、二千ケルドで買い取らせてもらうわ! いくらあるん?」


「! 今回は約千本程持ってきています。いくつお買い上げになりますか?」


「まずは百買い取らせてもらいますわ。効果が確かだったり、有用性が確認出来たら、もっと買い取らせていただきます。どうやろか?」


「いいですね! それじゃあ、商談成立ということで」


「せやな、この後、あっちの方に白い建物が見えるやろ? あそこに、納品しに行き。金はきちんと払わせてもらいますから」


「了解です! ありがとうございます!」


「……小坂田君、って言ったかいな? あんた、返報性の法則を使おうとしたやろ? 相手にばれんように使わんと。それまでの雑談はそのために使うんやで? もっと自然にせな。あと、持ってくまでの流れがくどい。もう少し早めに終結に持っていき。うちが誘いに乗らんかったら、この商談失敗しとるわ」


「……はい……」


「でも、営業としての才能はある。あとはもう少しアドリブと、下調べを頑張りぃな。あんたは大成できるさかいなぁ」


「はい! ありがとうございます!」


「それでは、失礼します。本日は誠にありがとうございました」


「気ぃ付けて帰りな~」


 そして、澪、亮太が部屋から去り、俺も出ようとしたその瞬間。


ガキン!


「「悠!?」」


「……問題ない。先に行っていてくれ」


 抜き放ったディヴァルにて背後からの攻撃を受け止める。感触的に二人だ。つまり、金霧さんは参加していないと。

これが、代表取締役に会うのに武器(ファルス)を回収されなかった理由だ。まあ、この世界で武器を持たないのも逆に不信だけどな。


「……さて、金霧さん。俺は指定した空間を完全に認知することができるんです。なので、忍ばせておいた二人にも気が付いていました」


「ほほう……あんた、おもしろい超素能力持ってんねんなぁ……おっ、二人とも、もうええで」


「「……」」


 俺に襲い掛かってきた二人は透明化を解除し、無言で去っていった。

いや、透明化というか、カメレオンみたいな感じか?


「いやぁ、すまんなぁ。うちの五大臣とか王は、力ないものを信用することは無いんや。やから、少し試させてもらったが……結果は上々! なんなら、想定以上の結果やったわ!」


「いえ、別に殺気を感じていなかったので、悪意はないっぽいなとは思いました。にしても、急に襲われるってあれですね。なんていうか……いきなり有名人になった感じですね」


「あんた、この国ではそこそこ有名人やで?」


「エッ!?」


「新興の国っちゅーもんはほかの国に関わる前に潰れる。主に襲撃でな。だからこそ、既存の国に頼ることなく、ここまで国を成長させられたってことは、すごいことなんやで?」


「……俺の友達のおかげです。みんな身を粉にして働いてくれたおかげで、ここまで来れましたし。でも、ここで終わるわけにはいかないので、アーザレイルとの取引を始めたいと思いました」


「いいなぁ、あんた。面白い子や。じゃあ、こうせえへん?」


 そのとき、金霧さんの胸から黒い波動が放たれた。

その波動は、ドウッ! という音を鳴らしながら広がり、その内部に飲み込まれてしまった。


「私の能力の一つ。〈ネゴシエリア〉や。この中なら他者に干渉されずに、時の止まった空間で話すことができる。秘密の話をするにはうってつけや! というわけで、イヤホンは切っておいてな。この会話は秘密なんや。まあ、本人が言ったら意味が無いけどな~」


仕方ねえな。流石に誤魔化せないか、この人は。

プツッ


「……〈ネゴシエリア〉……ネゴシエーションエリア……いわば、次元の狭間か……人体ができるレベルを超えている……」


「超素能力……あんたが思っている以上に奥が深いもんやで? 未だ解明は出来てへんし、なにより、明らかにおかしいやろ?」


「そうですね。体の中心から波動を出してその中の空間が異次元ってのは、人間の力が百パーセントでててもできませんもんね。明らかに異質です」


「それでも、この力に頼るしかこの世界では生きてられへん。たとえこれに何か副作用があっても、飲まずにはいられへんのや」


 そう言い、金霧さんは見せつけるように血成を取り出した。

素材不明。味最悪。でも、飲んでからはとてつもない力を得る。

たしかに、これは謎だ。澪に聞くしかないな。


「で、用件なんやけど……個人的に連絡繋がへん? あんたとは何か()()()()になれそうでなぁ……」


「ってのは建前で、実際は他国の王と友人になっておけば何か利用価値があると思ったんでしょう? まあ、俺的には王ってのは合いませんけど……建国した本人です。責任くらいは負いましょう」


「……あんた、ホントに高校二年生だったんか? やばい薬飲んで体縮んだりしてへん? ほら、見た目は子供でも頭脳は大人みたいな」


「そんなどこかの名探偵じゃないですよ。それじゃあ、俺は失礼しますので、これ解除してください」


「おっと、すまんなぁ。じゃあ、ほなな」


 しれっと電話番号を交換し、連絡を取れるようにしたところで俺は白い建物に向かった。

そこで亮太と澪と合流。そのまま納品し、金を受け取り、少し買い物してから帰った。


「何気にいい結果じゃないか?」


「ん、後はポーションがどう判断されるかどうか。有用と判断されたらこのまま取引を続けてくれるし……」


「まあ、続けてくれなくなったら違うとこに商談をするだけだ」


 さてと、じゃあ、帰るか!


 その時、悠だけは気が付いていた。

背後をつける一つの集団に。





悠の〈絶対空間認知〉はチートです。

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